9日も、地方紙に秘密保護法案に反対する社説が並びました。そのタイトルの一部を示すと下記のとおりです。
それぞれ秘密保護法案を、「危険な悪法」、「不公正を隠蔽する悪法」、「暗い過去に通じる危険性」、「将来に禍根を残すもの」などと評して成立に反対しています。
また秘密保護法案に対する有識者の危機感・警戒感などを伝えています。
(社説)
(一般記事)
秘密保護法案、衆院委で審議入り 県内有識者らも危機感 岐阜新聞
特定秘密保護法案、「秘密」 拡大解釈に警戒 脱原発の市民ら 信濃毎日新聞
秘密保護法案に反対声明 県内の大学教授、弁護士、医師ら/群馬 東京新聞
秘密保護法案 厳罰は必要か 15年で5件 最高でも懲役10月 東京新聞
熊本日日新聞も他紙と同様、特定秘密の範囲があいまいで外部チェックが働かないので官僚による情報支配が一層強まること、「著しく不当な方法」の取材活動でなければ処罰しないというがその「不当」の範囲は不明確であること、議員の国政調査権よりも行政のトップの意向が優先され三権分立がゆがめられることなどの問題点をあげ、行政機関の情報管理システムを厳密にすれば済むこと、で立法は不要であると述べています。
以下に紹介します。
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秘密保護法案 根幹にかかわる疑問がある
熊本日日新聞 2013年11月09日
機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案の審議が衆院で始まった。政府・与党は今国会成立を目指すが、取材・報道の自由や国民の「知る権利」を侵害する恐れがある法案だけに、決して審議を急ぐべきではない。
行政機関の長が外交、防衛、スパイ防止、テロ防止の4分野で指定する特定秘密をめぐり、漏えいに対する罰則が強化される。しかし、特定秘密の範囲があいまいな上に、何が秘密なのか外部からのチェックが働かないため、特定秘密を量産し半永久的に抱え込むなど、官僚による情報支配が一層強まるとの指摘がある。違法な国家活動など都合の悪い情報を秘密に指定し、ひそかに廃棄することも可能になる。
審議入りした7日の本会議で、安倍晋三首相は「秘密保全の法整備は喫緊の課題だ」と答弁したが、法案には野党が反対しているほか、日本新聞協会や市民団体、有識者らが次々に反対声明を出している。
本会議の質疑では、自民党議員からも「国民の知る権利や取材行為に抑制効果をもたらすとの懸念は消えていない」との声が出た。安倍首相は「憲法の表現の自由に結び付いたものとして、国民の知る権利は十分尊重されるべきものだ」「捜査機関も取材の自由に十分に配慮した法の運用が行われると認識している」などと答弁したが、具体的にどのように担保するのか明確ではない。
法案には「著しく不当な方法」の取材活動でなければ処罰しないとの文言があるが、「不当」の範囲は不明確だ。重い処罰に取材源である公務員らが萎縮し、メディアも二の足を踏むようなら、知る権利は後退を余儀なくされる。
また、法案には秘密を扱えるかどうか、公務員らへの適性評価の実施が盛り込まれている。調査項目は個人のプライバシーに深く関わり、憲法が保障する思想・信条の自由を侵害する恐れがあるほか、行政機関が恣意[しい]的に判断できる余地がある。
さらにこの法案は、三権分立の観点からも問題をはらむ。国会は国権の最高機関で行政を監督する立場にあるが、国会議員は特定秘密の内容を基本的に知らされることがない。衆参両院の委員会などが国政調査権に基づき、非公開の秘密会での審議を前提に要求すれば特定秘密が提供されるが、行政機関のトップが「わが国の安全保障に著しい支障を及ぼす恐れがない」と判断した場合に限られる。
行政の裁量が大きく、国政調査権や日常の議員活動を縛りかねない。出席議員が秘密を漏らせば、最高5年の懲役が科される。野党は言うに及ばず、与党議員から反発の声が出てもおかしくない内容だ。
日弁連秘密保全法制対策本部副本部長の井上正信弁護士は「本来は行政機関の情報管理システムを厳密にして、物理的に漏えいしにくくすればいいだけの話。このような法律はそもそも必要がなく、弊害の方が大きい」と批判する。法案には、基本的人権や三権分立など国民の生活や国の制度の根幹にかかわる部分で疑問があり、国会での徹底した論戦を望む。特に与党には、数の力に頼った国会運営をしないよう求めたい。
行政機関の長が外交、防衛、スパイ防止、テロ防止の4分野で指定する特定秘密をめぐり、漏えいに対する罰則が強化される。しかし、特定秘密の範囲があいまいな上に、何が秘密なのか外部からのチェックが働かないため、特定秘密を量産し半永久的に抱え込むなど、官僚による情報支配が一層強まるとの指摘がある。違法な国家活動など都合の悪い情報を秘密に指定し、ひそかに廃棄することも可能になる。
審議入りした7日の本会議で、安倍晋三首相は「秘密保全の法整備は喫緊の課題だ」と答弁したが、法案には野党が反対しているほか、日本新聞協会や市民団体、有識者らが次々に反対声明を出している。
本会議の質疑では、自民党議員からも「国民の知る権利や取材行為に抑制効果をもたらすとの懸念は消えていない」との声が出た。安倍首相は「憲法の表現の自由に結び付いたものとして、国民の知る権利は十分尊重されるべきものだ」「捜査機関も取材の自由に十分に配慮した法の運用が行われると認識している」などと答弁したが、具体的にどのように担保するのか明確ではない。
法案には「著しく不当な方法」の取材活動でなければ処罰しないとの文言があるが、「不当」の範囲は不明確だ。重い処罰に取材源である公務員らが萎縮し、メディアも二の足を踏むようなら、知る権利は後退を余儀なくされる。
また、法案には秘密を扱えるかどうか、公務員らへの適性評価の実施が盛り込まれている。調査項目は個人のプライバシーに深く関わり、憲法が保障する思想・信条の自由を侵害する恐れがあるほか、行政機関が恣意[しい]的に判断できる余地がある。
さらにこの法案は、三権分立の観点からも問題をはらむ。国会は国権の最高機関で行政を監督する立場にあるが、国会議員は特定秘密の内容を基本的に知らされることがない。衆参両院の委員会などが国政調査権に基づき、非公開の秘密会での審議を前提に要求すれば特定秘密が提供されるが、行政機関のトップが「わが国の安全保障に著しい支障を及ぼす恐れがない」と判断した場合に限られる。
行政の裁量が大きく、国政調査権や日常の議員活動を縛りかねない。出席議員が秘密を漏らせば、最高5年の懲役が科される。野党は言うに及ばず、与党議員から反発の声が出てもおかしくない内容だ。
日弁連秘密保全法制対策本部副本部長の井上正信弁護士は「本来は行政機関の情報管理システムを厳密にして、物理的に漏えいしにくくすればいいだけの話。このような法律はそもそも必要がなく、弊害の方が大きい」と批判する。法案には、基本的人権や三権分立など国民の生活や国の制度の根幹にかかわる部分で疑問があり、国会での徹底した論戦を望む。特に与党には、数の力に頼った国会運営をしないよう求めたい。