特定秘密保護法案は26日、衆院特別委員会で強行採決されたのに引き続いて続いて、同日夜、衆院でも賛成多数で可決し衆院を通過しました。
特別委員会の強行採決時には民主党、共産党、生活の党は反対し、早期採決を認めない日本維新の会は退席しました。
安倍首相は、第一次安倍内閣のときにも20回もの強行採決を繰り返しました。そのときには任期途中の衆院選で「美しい日本」を掲げながら、「生活が第一」を掲げた民主党に大敗し、体調不良もあって早々に首相をやめましたが、今度は不幸にして3年間国政選挙はありません。
今後も奢り高ぶった気持ちで強行採決が繰り返されるのであれば、早晩国民の支持を失うことは間違いありませんが・・・
電子版各紙は26日の動きを次のように伝えています。(見出しのみ掲載)
秘密保護法案:メディア関係者、集会で反対訴え 毎日新聞
秘密保護法案:反対の世田谷区議2人、「みんな」 離党届 毎日新聞
秘密保護法に各地で抗議の声 中国新聞
特定秘密法案めぐり300人がデモ行進 神戸・三宮 神戸新聞
キャスターら秘密法案批判 「民主主義脅かす」 東京新聞
浅田ペン会長怒りを込めて抗議 秘密法案で声明発表 東京新聞
Japan secrecy law stirs fear of limits on freedoms ワシントンポスト
(日本の秘密保護法は自由抑制の恐怖をかき立てる)
福島の公聴会で意見陳述した馬場有町長は「何のための公聴会だったのか、拙速に過ぎる」、荒木貢弁護士は「県民の気持ちを踏みにじった。慎重に検討してほしい」と語気を強めました。(毎日新聞)
特定秘密保護法案に反対するジャーナリストやニュースキャスターたちが26日、東京都内で緊急集会を開き法案の衆院通過に憤りをあらわにしました。(毎日新聞)(普段は殆ど政府寄りの発言に終始するキャスターたちも、この法案には本気で反対しています。)
みんなの党所属の世田谷区議2人は「法案に対し、議論の積み上げを経ずに党の意思決定がなされている」と党を批判して離党しました。(毎日新聞)
中国地方では市民団体などが一斉に抗議の声を上げ、広島市や福山市でも市民の
抗議行動が繰り広げられました。(中国新聞)
ワシントンポストも、「日本の秘密保護法は自由抑制の恐怖をかき立てる(意訳)」の見出しをつけて、衆院で可決を喜ぶ首相らの写真を載せて報じました。
また、日本ペンクラブ会長と日弁連会長は、それぞれ抗議の声明を出しました。
以下に、東京新聞の記事と2つの声明を紹介します。
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秘密法案が衆院通過 与党、今国会成立方針
東京新聞 2013年11月26日
機密を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法案は26日夜、衆院本会議で自民、公明両党やみんなの党の賛成多数により可決された。与党が同日中の採決を提案し、衆院議院運営委員会で採決日程が決まった。与党は今国会成立を図り、27日の参院本会議で審議入りする方針。慎重審議を求める野党の反発は必至だ。法案については、漏えいが禁じられる「特定秘密」が乱造されて情報統制が強まり、国民の「知る権利」が損なわれる危険性が指摘されている。
今国会の会期末は12月6日で、参院審議は窮屈な日程となる。(共同)
(日本ペンクラブ声明)
「特定秘密保護法案の衆議院特別委員会強行採決に抗議する声明」
本日、政府与党と一部野党は衆議院特別委員会において特定秘密保護法案を強引に採決した。
私たち日本ペンクラブはこれに対し、深い失望を覚えるとともに、大いなる怒りを込めて抗議する。
政府行政の恣意によって広範な「特定秘密」を指定することを可能にするこの法案が、市民の知る権利を侵害し、行政情報の透明化の流れに逆行することを、私たちはくり返し指摘してきた。為政者にとって不都合な情報を隠蔽し、ジャーナリズムや作家、研究者、表現者と市民による秘密への接近を厳罰をもって規制することは、この社会の内部にも、近隣諸国とのあいだにも疑心暗鬼と敵対感情を生じさせ、不穏な未来をもたらすだろう。
私たちはこの間、衆議院の審議を注意深く見守ってきたが、この法案の成立をめざす政府与党と一部野党議員らのつたなく、杜撰な対応に唖然とするしかなかった。かつてこのような秘密保護法制を持ったこの国の悲惨な歴史と、いまも同種の法制を持つ国々の現状に関する無知は目を覆うばかりであった。
今後、衆議院本会議の進行次第では、この特定秘密保護法案は参議院の審議に付されることになるが、私たち日本ペンクラブは、「良識の府」たる参議院の議員諸氏によって本法案の不当性が明らかにされ、廃案とされることを強く求めるものである。
2013年11月26日
一般社団法人日本ペンクラブ
会長 浅田次郎
(日弁連会長声明)
特定秘密保護法案の衆議院での採決強行に対する会長声明
本日、特定秘密保護法案の採決が強行され、衆議院を通過した。
同法案が国民の知る権利を侵害する危険性を有しており、廃案にされるべきことは当連合会及び国民各層から意見表明がなされてきたところである。さらに、11月21日には、国連人権理事会のフランク・ラ・ルー特別報告者からも、ジャーナリストや内部告発者を脅かす危険性があるとして、同法案への懸念が表明された。4党による修正案においてもその危険性は何ら減じられていない。
また、4党による修正案については提出されたばかりであり、ほとんど実質的な審議らしきものはまだなされていない。
11月25日に福島県で開かれた公聴会では、出席者全員が法案の内容に反対ないし懸念を示したのであるから、政府としてはそれらの懸念を払拭するためにも慎重審議を行うべきであった。
しかし、衆議院では、法案の骨格ともいうべき重罰主義及びプライバシー侵害性の高い適性評価制度について、根本的見直しに向けた議論がなされていない。「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)との整合性についても検討されておらず、十分な審議が行われないまま、採決が強行された。極めて拙速と言わなくてはならず、法案のもたらしかねない重大な影響に鑑みると到底是認できない。
国民主権を形骸化しかねない法案について、民意を軽視した形で採決を強行したことは、二重の意味で国民主権の基本原則に反すると言わなくてはならない。
当連合会は、同法案の拙速な採決について強く抗議するとともに、良識の府である参議院において十分な審議を尽くすよう要請するものである。
2013年(平成25年)11月26日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
会長 山岸 憲司