2013年11月17日日曜日

日経新聞も秘密保護法案に反対の社説

 16日の日経新聞社説は、秘密保護法案に対し厳しい口調で反対しています。
 
 「これまでの審議で疑念はむしろ深まった。
徹底した見直しが必要である。秘密に指定できる範囲が曖昧で広すぎる。
秘密の対象は徹底的に絞込み、適否を判断する第三者機関が必要である。
見直しの懸念を解消しないまま成立を目指す姿勢は問題。
三権分立の根幹にかかわる議論も深まっていない。
このままの形で法案を成立させることには賛成できない。
拙速に成立を急げば、将来に禍根を残すだろう」 
という調子です。
日経新聞が政府の法案をここまで手厳しく批判するのは非常に珍しいことではないでしょうか。
それほどまでに不出来で問題の多い法案ということです。
 
また高知新聞も、「審議で深まるのは疑念」とする社説を掲げました。
 これもまた、「国会審議で根幹の問いに対する政府の説明が十分でなくぶれも多い、深まるのは理解ではなく疑念。 政府、与党は野党と修正協議し成立を図る構えだが、法案の危険な本質は何も変わらない」 云々と、手厳しいものです。
 
 以下に紹介します。
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疑念消えぬ秘密保護法案に賛成できない 
日経新聞 2013年11月16日
 特定秘密保護法案の審議が国会で続いている。政府・与党は並行して野党側との修正協議を急ぎ、今国会中に成立させる構えだ。
 安全保障にかかわる機密の漏洩を防ぐ枠組みが必要なことは理解できる。だがこの法案は依然として、国民の知る権利を損ないかねない問題を抱えたままだ。
 これまでの国会審議では、疑念がむしろ深まった印象さえある。このままの形で法案を成立させることには賛成できない。徹底した見直しが必要である。
 法案では防衛、外交、スパイ活動、テロの4分野で、特に秘匿すべきものについて各省の大臣が特定秘密に指定する。公務員がこれを外部に漏らした場合は、最長で懲役10年の刑罰を科す。
 法案が定めた秘密に指定できる範囲は、曖昧で広すぎる。政権や省庁が不都合な情報を隠すなど恣意的に利用するおそれがある。何が秘密なのか分からないまま、秘密が際限なく広がってしまう。
 指定できる対象は徹底して絞り込み、明確にしなければならない。そのうえで指定の適否を判断する第三者機関が必要となる。
 指定の期間は5年だが、何度でも延長できるので、永遠に秘密とされる可能性もある。最後は指定を解いて開示し、後世に検証できる仕組みが欠かせない。どうしても開示できない内容のものは、「護衛艦の性能」「自衛隊の暗号」などと理由を説明すべきだ。
 機密の漏洩でどのような場合が罪になるのかや、刑の重さについても、さらに見直しが必要ではないか。いまのままでは公務員が必要以上に萎縮してしまう。漏洩させた側にも広く刑罰を科す余地が残っているため、報道の自由を侵害し、意見が言いにくい息苦しい社会にしてしまう懸念がある。
 
 国会の審議では防衛相も務めた与党議員が、日々新聞が報じている首相の動静も秘密にあたるのではないかという指摘をした。懸念を裏付けるような発言である。
 法案を担当する森雅子少子化相は、成立後に秘密指定のあり方などを見直す可能性に触れた。不断の見直しといえば聞こえはいいが、懸念を解消しないまま成立を目指す姿勢は問題ではないか。
 法案が成立すると、国政調査権や国会議員の活動を制約するおそれもある。三権分立の根幹にかかわるこうした議論も深まっていない。このまま拙速に成立を急げば、将来に禍根を残すだろう。
 
 
(社説) 【秘密保護法案】 審議で深まるのは疑念  
高知新聞 2013年11月16日  
 深まるのは理解ではなく疑念。衆院での委員会審議が始まって1週間たった特定秘密保護法案のことだ。 
 国家機密の保全には国家公務員法、自衛隊法など既存の法律がある。なぜ今、この法案が必要なのか。 
 根幹の問いに対する政府の説明は十分ではない。担当大臣の答弁にはぶれも出ている。 
 政府、与党は野党と修正協議し、成立を図る構えだが、どこまで修正に応じるかは不透明だ。法案の危険な本質は何も変わっていない。 
 法案の必要性について、安倍首相は「情報漏えいの脅威が高まっている」ことを強調する。 
 ところが国会審議などを通じて浮かび上がったのは、脅威が高まっているとは言い難い現実だ。 
 この15年間で公務員による主要な情報漏えいは5件あったが、法案が定める「特定秘密」に該当するのは1件だったという。国家公務員法などが機能していることを物語っている。 
 情報漏えいの実情からしても、法案が定める「秘密の範囲」は不合理だ。秘密の範囲は防衛、外交、スパイ、テロの4分野とするが、「その他の重要な情報」という用語が多用され、際限なく拡大する恐れがある。 
 その恐れは、秘密指定を閣僚ら行政機関の長が行うとの条項によって増幅される。行政が自分たちの都合に合わせて指定を乱発しても、厳格な歯止めは存在しない。 
 恣意(しい)的な判断を防ぐため、国会審議では指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置問題が取り上げられた。法案担当の森大臣は設置検討を表明したものの、程なく「今後の課題」とトーンダウンした。 
 森大臣は他の問題でも答弁を修正した。法案のあいまいさ、政府内の調整不足を露呈した格好だ。 
 法案はこれから秘密指定の有効期間なども含めた修正協議が行われる。秘密の指定から解除まで、政府に強大な権限を与える法案の根幹まで切り込むことはできるのか。枝葉程度の修正なら国民の「知る権利」に関わる法案の本質は変わらない。 
 国際会議を経て、ことし6月発表された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)は、真っ先に「国民は政府の情報を知る権利がある」ことをうたう。対極にあるのが特定秘密保護法案ではないか。