大阪・岸和田市で、30代の男性が中卒で運転免許がないことなどが影響して仕事が見つからなかったため、生活保護を繰り返し申請したのに対して、市が、年齢が若く健康なので働くことができるはずだとして、一貫してそれを認めなかったことを違法と訴えたことが、大阪地裁で認められました。
判決は、「仕事は十分あるはずだという先入観などをもとに、十分に事情を調べる義務を怠った」とするもので、市に生活保護費の支給と60万円余りの賠償を命じました。
担当弁護士は「職があるかないかなど平均的に見てどうかではなく、申請者個人の資質や生活の困窮の程度などをきちんと見なさいということで、生活保護の本来あるべき姿を示していて、すばらしい判決」と語っています。
日本ではなぜかこうした画期的な判決も、上級審に行くと政権寄りの判決に変えられます。これは日本の裁判では検察起訴の99.9%が有罪になるという、世界的に例のない実態にあることと同根の理由によるといわれています。
裁判官が功利性に基づいて判決を下すなどということは、あってはならないことですが、それはともかくとして、岸和田市は謙虚に判決を受け入れてこの判決を確定させて欲しいものです。
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生活保護費支給と賠償命じる判決
NHK NEWS WEB 2013年10月31日
大阪・岸和田市が、仕事が見つからず生活に困り生活保護の申請を繰り返した当時30代の男性に、働くことができるはずだとして生活保護を認めなかったことについて、大阪地方裁判所は、「仕事は十分あるはずだという先入観などを基に、真摯(しんし)な求職活動をしたか十分に調べる義務を怠った」と指摘し、岸和田市に生活保護費の支給と60万円余りの賠償を命じました。
大阪・岸和田市に住む当時30代の男性は、5年前、いわゆる派遣切りにあって失業したあと、中卒という学歴や運転免許がないことなども影響して仕事が見つからず、生活に困って生活保護を繰り返し申請しました。
しかし、年齢が若く健康で、働くことができるはずだとして認められなかったため、違法だと訴えていました。
判決で、大阪地方裁判所の田中健治裁判長は、「当時、男性は働く能力も意思もあったが、仕事の場を得られる状況になかった。ケースワーカーには、男性が年齢が若く、仕事は十分あるはずだという先入観などがあり、真摯な求職活動をしたか十分に調べる義務を怠った」として、岸和田市に、当時認められなかった分の生活保護費の支給と68万円余りの賠償を命じました。
原告の男性は、「私たちのような人が普通に生活保護制度を活用できる判決が出たのではないかと思います。制度を活用しながら、自立を支える運用をしてほしい」と話していました。
また、男性の代理人の下迫田浩司弁護士は、「職があるかないかなど、平均的に見てどうかではなく、申請者個人の資質や生活の困窮の程度などをきちんと見なさいということです。生活保護の本来あるべき姿を示していて、すばらしい判決だと思います」と話していました。
一方、岸和田市は、「判決内容を精査し、関係機関とも協議したうえで、対応を検討します」としています。