2013年11月16日土曜日

秘密保護法案、与党は来週衆院通過を狙う

 衆院厚生労働委員会は15日昼、社会保障制度見直しの手順を定めたプログラム法案を強行採決し、与党の賛成多数で可決しました。
 法案は、介護では、要支援者向けサービスの一部を国から市町村に移行。一定の所得がある人の利用者負担を一律1割から2割に引き上げ、医療では、一定の所得がある人の月ごとの医療費の自己負担額や70~74歳の高齢者の医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げるなどするものです。
 自民党がこのように急いだのは、特定秘密保護法案の衆院通過の道ならしと見られています。
 
 与党は15日、特定秘密保護法案の来週中の衆院通過を目指し、日本維新の会やみんなの党との修正協議を本格化させましたが、法案の骨格部分を修正しないままで野党と妥協点を探りたい意向なので、かならずしもスムーズには行きそうもありません。
 
 共産党の志井委員長は「法案の骨格には指一本も触れていない修正協議は無意味で、野党なら成立阻止に力を合わせるべきだ」と批判しました。
 
 一方、15日の衆院特別委員会内閣府の岡田広副大臣は特定秘密の提供を受けた国会議員が報道機関に対し、国会の外での講演会や飲食しながらの取材などで秘密を漏らしたした場合、最長で懲役5年の罰則が科せられるとの見解を示しました。
 
 16日の朝日新聞は、政府自身が粗雑な法案であることを認めていることにあきれ、廃案にするしかないとする社説を掲げました。
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秘密法案、与党は来週通過狙う 首相の事前同意拒否、修正続行
東京新聞 2013年11月15日
 自民、公明両党は15日、特定秘密保護法案の来週中の衆院通過を目指し、日本維新の会やみんなの党との修正協議を本格化させた。ただみんなの党が求める秘密指定への首相の事前同意は「現実的ではない」と拒否。日本維新の会は秘密指定の期間を「原則30年間以内」と提示した与党の見直し案に「同意はあり得ない」と回答。与党は秘密指定の状況を国会に報告する修正を提案し、修正協議は続行、それぞれ18日に再協議する。
 政府、与党は法案の骨格部分を修正しないままで野党と妥協点を探りたい意向で、週明けにヤマ場を迎えそうだ。(共同)
 
 
森担当相に当事者能力なし=志位共産委員長
時事通信 2013年11月15日
 共産党の志位和夫委員長は15日の記者会見で、特定秘密保護法案の審議で答弁のぶれが目立つ森雅子内閣府特命担当相について「法案の事務局である内閣情報調査室の指揮監督権を持たないから事務方の答弁と常に食い違う。当事者能力がない」と批判した。 
 日本維新の会、みんな両党が与党と法案修正協議に入ったことに関しては「特定秘密を行政の長が指定するといった法案の骨格には指一本も触れていない。野党なら成立阻止に力を合わせるべきだ」と不満を示した。
 
 
報道機関に漏洩、国会議員は懲役5年 岡田副大臣が見解
朝日新聞 2013年11月15日
  特定秘密保護法案で、内閣府の岡田広副大臣は15日午前の衆院国家安全保障特別委員会で、特定秘密の提供を受けた国会議員が報道機関に対し、国会の外での講演会やぶら下がり取材、飲食しながらの取材などで秘密を漏洩(ろうえい)した場合、最長で懲役5年の罰則が科せられるとの見解を示した。公務員だけでなく国会議員も取材に萎縮する可能性がある。
 自民党の今津寛氏がこうした事例を挙げて「(同法案)22条2項の(最長)5年の懲役、500万円以下の罰金。この認識でいいか」と質問し、岡田氏が「ご指摘の通り」と答弁した。同法案では、閣僚ら「行政機関の長」が国会の委員会や調査会に対し、「公開しない」秘密会とすることを条件に、特定秘密を提供できると定めている。
 ただ、国会内の本会議や委員会で発言した場合、憲法の定める議員の「免責特権」により罰則は科されないとみられる。森雅子・同法案担当相は同特別委で「憲法の免責特権は大変重い」と答弁した。
 

社説 特定秘密保護法案―成立ありきの粗雑審議
朝日新聞 2013年11月16日
 特定秘密保護法案の審議が衆院の特別委員会で続いている。自民、公明の与党は、来週中に衆院を通過させる構えだ。
 審議を聞くにつけ、この問題だらけの法案を、こんな粗雑な審議ですませるつもりなのかという疑念が募るばかりだ。
 あぜんとするしかない答弁があった。
 
 法案担当閣僚の森雅子氏が与党議員の質問に、「さらなる改善を今後も、法案成立後も尽くしていく努力もしたい」と答えたのだ。これでは法案に欠陥があるのを自覚しながら、まずは成立ありきの本音を認めたのと同じではないか。
 菅官房長官は記者会見で、「法案成立後、運用の段階で不断の見直しを行っていくのは、ある意味で当然のこと」と森氏をかばった。
 だが、国民の権利を制限し、民主主義のありように大きな影響を与えかねない重要法案である。そんな一般論で片づけるのはあまりに強引だ。
 
 森氏の答弁には、ほかにもぶれが目立つ。
 秘密漏洩(ろうえい)で報道機関が強制捜査の対象になるかと問われ、森氏は「ガサ入れ(家宅捜索)が入るということはない」といったんは明言。ところが谷垣法相は「具体的事例に即して検察が判断すべきものだ」と答えた。
 また、この法案作成にからむ政府文書がほぼ全面墨塗りで開示されたことに対し、野党議員が全面開示を求めると、森氏は「開示できると思う」。これには内閣官房の官僚がすぐさま「検討する」と言い直す。
 どちらが政府の見解なのか、わからない。いずれにせよ、その場しのぎの答弁と言われてもしかたあるまい。
 
 来週中の採決をにらみ、与党は日本維新の会などとの間で修正協議に入っている。
 与党は、秘密指定の期間を「原則30年」とする程度の譲歩には応じる構えだ。とはいえ、外部からの検証メカニズムがないまま、実質的に官僚の裁量で幅広い情報を秘密に指定できるという法案の骨格を動かすつもりはなさそうだ。
 修正したとしても、残り数日間の審議で採決しようというのでは、乱暴きわまりない。
 
 与党は野党の要求を聞き入れた、野党は与党に法案の欠陥を認めさせた。こんなことを示す国会戦術のための微修正なら、まったく意味はない。
 それではすまない重たい問題をはらんだ法案だ。この短い臨時国会で議論が尽くせるわけがない。ここはやはり、廃案にするしかない。