2014年4月10日木曜日

村上元行革相が首相批判 ナチスと同じ愚

 自民党の村上誠一郎元行政改革担当相が8日発売の月刊誌「世界」のインタビューで、憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使容認を目指す安倍晋三首相の政治姿勢を、厳しく批判しました。
 
 村上氏は、ナチス政権が全権委任法によりワイマール憲法を形骸化させた歴史を引き合いに、安倍首相は「同じ愚を繰り返す危険性がある」と指摘し、以下のように発言しています。
 
 「閣議の決定で解釈を変え、それに基いて自衛隊法を改正するということは、下位の法律によって上位の憲法の解釈を変えるという、絶対にやってはけいけない禁じ手です
 
 「民主的であったワイマール憲法のもとで、ナチス・ドイツが全権委任法を議会で成立させ、実質的にワイマール憲法を葬り去っていった。安倍さんの解釈改憲は、それと同じ愚を繰り返す危険性がある
 
 「憲法の『平和主義基本的人権の尊重、そして主権在民、この三つはアンタッチャブルであり、絶対に変えてはいけない基本原則です
 
 「閣議決定で解釈が変えられるなどという前例が作られてしまえば、・・・・結果として、憲法の基本原則が機能しなくなってしまう。それは立憲主義が崩れることを意味します
 
 「『ワイマールの落日』と同じ轍を踏むようなことは、歴史から学ぶ者として、また政治家として、断じて認められません」「たとえ一人であっても、かつて斎藤隆夫が軍隊の横暴に議会で声をあげたように、自分の信念を貫こうと思っています
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 安倍首相の改憲姿勢、特に集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更については、断固として反対するという確固たる信念と気迫の感じられるインタビューです。
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「三権分立壊し危険」 自民・村上氏が首相批判
 東京新聞 2014年4月9日
 自民党の村上誠一郎元行政改革担当相(衆院愛媛2区、当選9回)は、8日発売の月刊誌「世界」(岩波書店)のインタビュー記事で、安倍晋三首相が目指す集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更について「首相がやろうとしていることは、三権分立や立憲主義の基本を無視し、壊す危険性を持っている。だから反対せざるを得ない」と批判し、反対を明言した。
 
 村上氏は、憲法九条に基づく平和主義を「絶対に変えてはいけない基本原則」とし、「(立憲主義を崩す)前例は絶対につくらせてはいけない」と強調した。
 首相が解釈改憲の理由に挙げる「国際情勢の変化」については「実際にどういうケースなのか教えていただきたいが、誰からも明確な具体例を挙げてもらえない」と指摘した。
 その上で、行使を認める場合の歯止め策も「法律で歯止めをかけるというが、結局、時の政権の判断次第になりかねない」と懸念した。
 集団的自衛権の行使が必要な場合は「憲法改正を議論すればいい。憲法改正は国民の判断に委ねるしかない」と主張した。
 
 
「世界」誌 インタビュー記事での村上氏発言(抜粋)
         (「くろねこの短語」ブログ 2014年4月9日より転載)
 
 「閣議の決定で解釈を変え、それに基いて自衛隊法を改正するということは、下位の法律によって上位の憲法の解釈を変えるという、絶対にやってはけいけない禁じ手です。これは誰がどう言おうと認められない。仮にこのような無理筋のやりかたで自衛隊法などを変えたとしても、違憲訴訟が続発することになるでしょう。
 なぜ私がこの動きに反対しているかというと、学生時代に読んだ『ワイマールの落日』という本のことが記憶にあるからです。加瀬俊一さんという戦時中から外交官だった方が書いた本です。ここに書かれていることは、民主的であったワイマール憲法のもとで、ナチス・ドイツが全権委任法を議会で成立させ、実質的にワイマール憲法を葬り去っていった歴史です。安倍さんの解釈改憲は、それと同じ愚を繰り返す危険性がある。だから私は反対しているんです。
 多くの方は、今回の集団的自衛権の問題を憲法九条だけの関係で考えていますが、私はこの問題は決してそれだけではないと思う。安倍さんは憲法は不磨の大典ではないと言うけれども、平和主義基本的人権の尊重、そして主権在民、この三つはアンタッチャブルであり、絶対に変えてはいけない基本原則です。その平和主義の核心にかかわる問題においてすら、閣議決定で解釈が変えられるなどという前例が作られてしまえば、他の分野にまでこの手法は及んでいきます。結果として、憲法の基本原則が機能しなくなってしまう。それは立憲主義が崩れることを意味します。」
 
 「我々には憲法を尊重し遵守する義務があるんです。政治家が守らなければならないのは、立憲主義であり三権分立です。安倍さんがやろうとしていることは、その三権分立や立憲主義の基本を無視し、それを壊す危険性を持っている。だから反対せざるをえない。これば右とか左とかではなく、民主主義や法律をまっとうに学んだ人間であれば誰でもわかるきわめて当然のことを言っているにすぎないと私は思っています。その当然が当然のこととして通じなくなり、むしろ異端のものとして扱われるようになれば、もはやファシズムの危機です。」
 
 「『ワイマールの落日』と同じ轍を踏むようなことは、歴史から学ぶ者として、また政治家として、断じて認められません。集団的自衛権については、秘密保護法の時のように与党から一人の反対ということにはならないと思います。そう願っていますが、しかし、たとえ一人であっても、かつて斎藤隆夫が軍隊の横暴に議会で声をあげたように、自分の信念を貫こうと思っています。自分が現職の政治家として、ドイツがワイマール憲法を葬り去った一九三〇年代のような局面に立ち向かうことになるとは思いませんでしたがね。」