2014年4月19日土曜日

一部自治体等が護憲・脱原発活動に非協力

 安倍政権の改憲志向が影響し、一部の自治体や鉄道会社で護憲活動などへの協力を中止する動きが出ています。とんだ飛び火といえます。
 
 高知市の土佐電鉄は2006年以降、市民団体がカンパを募って路面電車に「守ろう平和憲法」、「9条は世界の宝」などと書いた車両を走らせて来ましたが、昨年「意見広告ではないか」というクレームがあったからとして、今年からそうした車両は走らせないと市民団体に通知して来ました。
 
 栃木県那須塩原市は、新潟県巻町での脱原発運動の実話をドラマ化した「渡されたバトン さよなら原発」上映会への後援を、「公共性がない」という理由で断りました。
 
 千葉市は1月に開かれた「平和を願う市民のつどい」護憲派伊藤真弁護士講演ほか)への後援申請を「政治的な中立性が保てない」ことを理由にりました。
 
 神戸市は、毎年開いてきた憲法記念日(5月3日)の憲法集会への後援申請を、今年は「憲法に関する集会そのものが、政治的中立性を損なう可能性がある」として、「不承諾」にしました。
 
 長野県千曲市は、小森陽一東大教授を迎えた3月30日の憲法講演会に対して、「講演内容に政治的主張を含むと認められるため」行政の中立性が保てない恐れがある」として、後援を断りました。
 
 こうした一連の護憲活動への後援の拒否は、安倍政権の改憲志向への迎合によるものと思われますし、公務員に課せられた「憲法尊重擁護義務」への背反です。
 もしもこの傾向が今後更に拡大するようであれば大変問題です。
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「平和憲法電車」中止ひどい 高知 土佐電鉄に市民批判 
 06年からカンパで運行
しんぶん赤旗 2014年4月18日
 高知県の市民団体などがカンパを募り、土佐電気鉄道(本社・高知市)の路面電車に、「守ろう平和憲法」や「9条は世界の宝」と書いた車両を走らせていましたが、同社は今年から中止することを決めました。市民から批判の声が出ています。
 
 平和憲法ネットワークなどが2006年から(途中2回中断)「平和憲法号」を、高知憲法会議などが昨年から「憲法9条号」をそれぞれ運行。憲法記念日の5月3日前後から終戦記念日の8月中旬まで高知市を中心に25・3キロの区間を走らせていました。80万円ほどの費用は市民カンパで賄ってきました。
 土佐電鉄では、昨年の運行に対し市民から電話やメールで賛同の意見とともに、「意見広告ではないか」との指摘があったとして論議。国会でも憲法論議が高まっている時に「政治的と受け取られかねない」と判断し「走らさない」と団体に通告してきました。
 
 高知憲法会議の徳弘嘉孝事務局長は「全国的に、憲法守れという運動が『政治的』と判断され、各団体が自主規制する動きがある。秘密保護法成立以後、特に顕著で危険だ。こうした動きに負けない運動が必要だ」と話しています。
 
 
脱原発映画 後援断る 那須塩原市「公共性ない」
東京新聞 2014年4月18日  
 市民団体から脱原発関連の映画上映会に名義上の後援を求められた栃木県那須塩原市が、「公共性はない」との理由で断っていたことが分かった。市は以前、この団体が催した憲法などに関する上映会や、原発関連でも内部被ばく対策など別の団体が催した五件は後援した。団体側は「恣意(しい)的な判断だ」と反発している。
 市が後援を断ったのは「渡されたバトン さよなら原発」上映会。住民投票で原発建設計画を撤回させた新潟県巻町(現新潟市)のドラマで、映画制作会社インディーズ(東京都中央区)が社会的なテーマを扱ったシリーズの三作目。
 市民でつくる実行委員会は昨年十一月、市に後援申請したが却下され、今年一月に後援なく開催した。実行委によると、市の取り扱い要領が「目的や内容に公共性があること」を名義後援の条件としており、「公共性があると明確に判断できない」と説明された。
 
 市は二〇〇九年、同じ実行委が催したシリーズ二作目「いのちの山河」の上映会は後援した。この作品は全国に先駆けて高齢者の医療費を無料にした岩手県の村を舞台に、生存権を規定する憲法二五条をテーマにした作品だ。
 市総務課の担当者は、本紙の取材に「原発建設に反対するまでの経緯が中心の映画で公共性はない」と説明。実行委メンバーの印南(いんなみ)敏夫さん(62)は「那須塩原市は福島県に接しており、原発への関心は高い。公共性という言葉を拡大解釈している」と批判する。
 
 インディーズ社の小室皓充(てるみつ)代表は「当社の映画は社会派のテーマが多く、自治体から上映会の後援を拒否されることはあった。今回のケースは自主規制の典型例。同様のケースがほかにもあれば広く知られるべきだ。しかし、必ずしも後援にこだわる必要はない。自分たちの力で発信していく姿勢こそ重要だ」と話している。 (大野暢子
 
千葉市も自主規制 平和集会 後援断る
 東京新聞 2014年4月17日
 憲法や原発をテーマにした市民団体のイベントなどの後援申請を拒否する自治体が相次いでいる問題で、千葉市も四月から、平和に関する行事の後援などの申請要件を厳格化し、実質的に拒否していることが分かった。市ではこれに先立ち、一月の平和集会の後援を拒否していた。 (砂上麻子)
 
 市は、行事の共催や後援に関する基準を四月から変更した。従来は、共催や後援を見送るのは政治的・宗教的中立性を侵したり、営利目的のケースだったが、新たに平和関連行事を念頭に「一般的に論点が分かれているとされる思想、事実等について主観的考えを主張すると認められるとき」や「そのおそれのあるとき」を加えた。
 
 市男女共同参画課によると、平和行事の定義は、戦争の悲惨さや平和の大切さを伝える行事。担当者は「東日本大震災以降、脱原発や憲法をテーマにした行事の後援申請が増えた。政治的中立性という従来の基準はあいまいで、判断に困る場合が出てきた」と説明している。
 市は、一月に中央区の市文化センターで開かれた「平和を願う市民のつどい」の後援申請を断った経緯がある。護憲派の伊藤真弁護士が「自民党の改憲案で何が変わるか」と題して講演する予定だったため、市は昨秋の時点で「政治的な中立性が保てない」と判断。主催した市民団体「平和を願う市民のつどい実行委員会」の申請を受け付けなかった。
 同課の宍倉和美課長はこの後援拒否と今回の新基準の関連を否定し、「行政として政治的に中立な立場を維持するために必要な基準だ」と説明している。
 市民のつどい実行委は「市は気にしすぎだ。過剰反応ではないか」と疑問を投げ掛けている。
 
憲法集会 市が後援断る 神戸や長野・千曲 引き受けてきたのに
「安倍改憲」に呼応か 「尊重擁護義務を放棄」の声
しんぶん赤旗 2014年3月7日
 憲法改悪へ暴走する安倍政権のもとで、市民らが開いている憲法集会を従来は後援を引き受けてきた自治体が断るという事態が相次いでいます。
神戸「情勢鑑み」
 神戸市では、日本国憲法施行を祝う5月3日の憲法記念日に毎年、憲法集会(同集会実行委員会主催)を開いています。
 今回は、「憲法施行67周年、今あらためて憲法を考える」をテーマに神戸女学院大学の内田樹(たつる)名誉教授が講演します。
 同市はこれまで、1998年、2003年に後援してきました。憲法の値打ちを多くの人に知ってもらおうと参加人数を倍以上に計画し昨年暮れ、市に後援を申請。回答がないので再三要請すると、2月4日に久元喜造市長、同5日に雪村新之助市教育長から回答があり、いずれも「不承諾」にされました。
 
 市は「憲法に関しては、『護憲』『改憲』それぞれ政治的な主張があり、憲法に関する集会そのものが、政治的中立性を損なう可能性がある」を理由にしています。市教育委員会は「『憲法』自体が政治的な要素を含むテーマである昨今の社会情勢に鑑み」と安倍政権の暴走を念頭に置いたと回答をしました。
 「憲法記念日に『護憲』『改憲』の政治的主張があるとした回答に驚き、『政治的中立性を脅かす』との主張に2度びっくりしました」と話すのは、神戸学院大学大学院の上脇博之教授です。同集会で「憲法をとりまく情勢」と題して報告する予定です。安倍首相はじめ、閣僚、市長ら公務員には「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と明記した憲法第99条を順守する責任があると指摘します。
 
千曲「中立性が」
 長野県千曲市では、東京大学大学院の小森陽一教授を迎えた30日の講演会(実行委員会主催)を岡田昭雄市長が1月27日に後援を「不承認」にしました。
 理由は「講演内容に政治的主張を含むと認められるため」「講演テーマは国論を二分する問題であり、政治的意見の分かれる典型的なもの…行政の中立性が保てない恐れがある」と神戸市と同様の主張を述べています。
 同市では、07年3月の「九条の会」呼びかけ人の澤地久枝さん、同11月の経済同友会終身幹事の品川正治さん(故人)、08年3月の経済アナリストの森永卓郎さんの各講演会(いずれも千曲市9条の会主催)は、市も市教育委員会も後援していました。
 上脇氏はいいます。「本来、憲法を守るべき自治体首長らが『政治的中立性』を理由に後援をしないのは、憲法尊重擁護義務の履行を放棄することになります。さらに、首相の解釈改憲を先取りするようであるなら、地方自治の放棄です」