2014年4月27日日曜日

米議会がオバマ大統領にTPA(≒交渉全権)を与えないわけ

 3月3日のTPP交渉は頓挫する可能性が・・・」(1 でも紹介しましたが、オバマ大統領は依然としてTPA(貿易促進権限2を議会から与えられていません。
    ※2  アメリカ合衆国議会への事前通告等の条件を課す代わりに、議会は、大統
       領と外国政府との通商合意の個別内容の修正を求めずに一括承認するか
       不承認とするもの
 
 これが与えられていないと、仮にTPP交渉で合意してもその内容について議会から個々に修正を要求される余地があるので、確定的な交渉ができません。
 
 これは勿論TPP交渉締結を阻害する要因として歓迎すべきものです。
 
 オバマ氏の来日に伴ってTPP交渉がクローズアップしたことに関連して、「TPP 日本は米国のカモ」などのツィートを発表している内田聖子氏(アジア太平洋資料センター事務局長)が、「米議会はなぜ大統領にTPAを与えないのか」について、米議会の事情を詳しく説明しているので紹介します。
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米議会はなぜ大統領にTPAを与えないのか
内田聖子ツィート2014年4月24日より
 TPP交渉難航による日米共同宣言の先送り、どのメディアもあほな報道ばかり。
 「まとめる」ことが無批判に目標とされ、誰も「聖域が守られず、公約を守れないなら脱退を」との見解を示さない。
 逆に「日本も譲歩しなければまとまらない」との論調。
まさにオバマ来日という「ショック・ドクトリン」。
 
報道ステーションにて。
 「TPPで米国はさらに強硬になり、『TPPで日本が譲歩しなければ、日米共同宣言に尖閣についての言及がなくなるぞ』」と米国が脅しをかけている、とのこと。
 報道ステーションでやっとTPA問題を触れた。
もっとはっきり「オバマは貿易交渉権をもっていない。米国議会にかけられている権限取得法案も可決の見通しがまったくない。そんな大統領と交渉しても意味ないよ」という話をしてほしいもんだ。
 関税ゼロでまとめない限り持ち帰れないわけだから。
 オバマ大統領来日に伴い、各メディアではワシントン支局などの記者がコメントしているのだが、米国内(特に議会)でのTPP交渉とTPA(貿易促進権限)問題の動きついて語らない。
 知らないはずないんだけどな~。
ということでこれから連ツイします。
 
 【米議会はなぜ大統領にTPAを与えないのか】
 米国大統領は国際協定交渉の権限を持つが、貿易協定に関しては議会の承認が必要である。
 例えばブッシュ大統領が2007年に署名した米韓FTA を議会は承認せず、4年後に韓国が米議会の求める牛肉、自動車等の再交渉に同意するまで承認しなかった。
1973年、ニクソン大統領は大統領に貿易権限を委任する「追い越し車線(fast track)」とよばれるしくみを作り出した。
これにより本来議会の管轄である貿易と無関係の食品の安全、特許等に関する法律もその範囲内で扱われるようになった。
TPAが作られた時代は、貿易協定といえば主として関税に関するものだった。
しかしTPAがWTOやNAFTAなどサービス分野や非関税障壁を含む貿易交渉に利用されるようになると議会は大統領に貿易促進権限を与えることに否定的になっていった。
1998年171 名の民主党議員、71名の共和党議員が当時のクリントン大統領へのTPA付与を拒否。
ブッシュ大統領もTPA付与のために2年間もかかって議会を説得した。
この20年間で議会がTPAを認めたのはブッシュ大統領時代の5年間のみ。
 
さてオバマ大統領。
 2013末201人の下院民主党議員のうち151人がこれまでのようなTPA(貿易促進権限)を支持しないと表明
 30人の下院の共和党議員が同様の主旨でオバマ大統領に書簡を送った
 米議会の中には、特許、著作権、食品安全、政府調達、財政、医療、エネルギー、環境、労働者の権利等々、議会や立法府の政策を拘束してしまうTPPのような貿易協定の交渉権限を大統領に与えることは危険だという認識が広がっている。
しかし早期妥結したいオバマ政権の意向で2014年1月、貿易促進権限法は米議会に提出された。
ところが提出から1か月でほとんど全ての下院民主党議員が反対表明
 権限法案反対の民主党・共和党議員を合わせると法案成立に必要な218票は残らない。
 米議会の有力者たち、ティーパーティのグループも、オバマ大統領に貿易権限を与えるTPA法案に反対の立場を明らかにしている。
もちろん市民社会の側も反対キャンペーンを盛んに展開してきた。
 米議会がオバマ大統領への貿易権限付与に否定的なのは、オバマ政権が徹底して議会を軽視し、情報も出さないという状態が続いたからだ。
 
 例えば貿易担当官僚は議会からの質問回答を拒絶。
 151名もの下院議員による書簡も何ヶ月も放置されていた。
もちろん議会の要望の中には、より「アグレッシブな」内容をTPPに盛り込めという声もある。
 例えば民主共和議員の圧倒的多数がTPPに通貨操作禁止規制の条項を要求しているが、USTRがこれを無視しているためTPP反対と言明している。
とにかく、リベラルな立場であれ保護主義的な立場であれ、はたまた新自由主義的な市場主義派であれ、オバマ政権・USTRが議会の意向を無視しているという1点で、米議会は大統領に貿易促進権限(TPA)を与える気はない、ということだ。
なので、日本政府はオバマ大統領に対して、「あなたは貿易促進権限(TPA)を取得してから交渉に来てください。そうでないと一度決めたことを持ち帰って米国議会が反対したりすれば、また一からやり直しになるじゃないですか」といえばいいのです。
 「日米共同声明の発表は最終調整中と官房長官――菅官房長官は、日米首脳会談に伴う共同声明の発表について「現在、最終調整中だ」と述べた。」。
 異例中の異例の出来事。
 結局、TPP関税交渉はまとまらなかった。
どう考えてもTPP交渉は日米両国にとって「無理」であることの証明だ。
 
 「TPP妥結へ「大胆措置」=「尖閣に安保適用」明記―日米共同声明、1日遅れで発表」 http://ow.ly/w8Ryz  発表がされた。
 【重要】先ほど出た日米共同声明の全文です(一度間違えて送信してしまいました。
こちらが全文です)  http://ow.ly/d/26NX 
 
 TPP交渉がまとまらなかったために日米共同宣言が今朝までだされないという事態。
 今回意味ある内容が出されることはないと思っていたが、ここまでの「失態」になるとは。
 参加国は冷ややかに、シビアに日米両国のドタバタ劇をみている。
ドタバタで無内容の日米共同声明に一瞬安堵する気分もないわけではない。
しかしこれから来る最悪のシナリオの可能性がそれを打ち消す。
それは日米どちらかが「狂気の」判断をしてしまうこと。
 日本の側であれば関税撤廃(に限りなく近い)に妥協をするということだ。
むしろ最重要警戒はこれから。
 少し前、堀潤さん (@8bit_HORIJUN) とオバマ大統領来日と日米共同声明、TPP交渉の行方など電話でお話し。
マスメディアが伝えない米国議会内のTPA反対、大統領アジア歴訪中に展開される米国の反TPPキャンペーン・・・などなど話は尽きなかった。
 番組の参考になれば幸いです。