政府は1日の閣議で、武器や関連技術の海外提供を原則禁止してきた武器輸出三原則を47年ぶりに全面的に見直し、輸出容認に転じる新たな三原則を決定しました。
新三原則は
(1) 国連安全保障理事会の決議に違反する国や、紛争当事国には輸出しない
(2) 輸出を認める場合を限定し、厳格審査する
(3) 輸出は目的外使用や第三国移転について適正管理が確保される場合に限る
というものです。
これまでは1967年に佐藤栄作首相が、
(1)共産圏
(2)国連決議で禁止された国
(3)国際紛争の助長の恐れのある国
への武器輸出を禁止し、さらに76年に三木武夫首相が「三原則の対象地域以外も「『武器』の輸出を慎む」として『原則禁止』にしてきましたが、今度は「共産圏」や紛争の「恐れのある国」への輸出禁止はなくなり、一定の審査を通れば輸出が可ということで、政権の裁量でいくらでも拡大できるようになります。
半世紀にわたり守られてきた憲法の平和主義の理念は、こうして一内閣の決定で簡単に放擲されました。
これは2月に三菱重工業や川崎重工業など防衛関連産業約60社でつくる経団連の防衛生産委員会がまとめた、「武器輸出三原則を大幅に緩和すべきだ」とする提言に政府が応じたもので、国内防衛産業の生産・技術基盤を維持、拡大する意図を持っています。
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これは2月に三菱重工業や川崎重工業など防衛関連産業約60社でつくる経団連の防衛生産委員会がまとめた、「武器輸出三原則を大幅に緩和すべきだ」とする提言に政府が応じたもので、国内防衛産業の生産・技術基盤を維持、拡大する意図を持っています。
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武器輸出 実質解禁 平和国家が紛争助長も
東京新聞 2014年4月2日
政府は一日の閣議で、武器や関連技術の海外提供を原則禁止してきた武器輸出三原則を四十七年ぶりに全面的に見直し、輸出容認に転換する「防衛装備移転三原則」を決定した。武器輸出の拡大につながる抜本的な政策転換で、憲法の平和主義の理念が大きく変質する。日本でつくられたり、日本の技術を用いた武器弾薬が海外で殺傷や破壊のために使われ、紛争を助長する恐れもある。
小野寺五典防衛相は一日の記者会見で、新たな三原則の閣議決定を受け「従来の三原則に抵触する可能性を抜きに、さまざまな検討ができる環境になった」と武器輸出の実質解禁を宣言した。
新原則は(1)国連安全保障理事会の決議に違反する国や、紛争当事国には輸出しない(2)輸出を認める場合を限定し、厳格審査する(3)輸出は目的外使用や第三国移転について適正管理が確保される場合に限る-と定めた。足かせが多いように見えるが、政府統一見解で輸出を原則禁じ、例外として限定的に許可してきた従来の三原則からの大転換。一定の審査を通れば輸出が可能な仕組みになり、重要な案件は国家安全保障会議(日本版NSC)が非公開会合で可否を最終判断する。認めた場合には適宜、公表するという。
防衛省によると、新原則で禁輸対象となる「国連安全保障理事会の決議に基づく義務に違反する」のは十二カ国。従来の原則から紛争の「恐れのある国」との表現を削除した「紛争当事国」は現時点で該当国はない。輸出の審査基準も「わが国の安全保障に資する場合」などと曖昧で、政権側の都合で拡大解釈される懸念が強い。
武器輸出の解禁は、安倍晋三首相が強い意欲を示す集団的自衛権の行使容認に向けて、同盟国の米国や友好国と共同開発や技術協力で軍事的な連携を強める狙いもある。小野寺氏は「共同開発に積極参画できる」と言う。
首相は二〇〇六年に発足した第一次政権時から、将来的な改憲を意識。約一年の在任中、防衛庁の省昇格や国民投票法の制定など、安全保障体制を強化する政策を実行した。
五年ぶりに政権復帰すると、米国などと機密情報を密接に交換するための日本版NSCをつくり、情報漏えいへの罰則を強化する特定秘密保護法も制定した。武器輸出解禁で安倍政権の安全保障体制強化の取り組みがまた一歩進み、次の目標は集団的自衛権の行使容認に移った。
<従来の武器輸出三原則> 佐藤栄作首相が1967年、(1)共産圏(2)国連決議で禁止された国(3)国際紛争の助長の恐れのある国-への武器輸出の禁止を国会で表明。76年には、三木武夫首相が三原則の対象地域以外も「『武器』の輸出を慎む」として原則禁止にした。原則禁止のため、武器輸出は個別の事例ごとに、政府が官房長官談話などで例外的に認めてきた。
(社説)武器輸出新原則 厳格な歯止めが必要だ
東京新聞 2014年4月2日
安倍内閣の安全保障政策はどこまで前のめりなのか。原則禁じてきた武器輸出を一転、拡大する新しい原則を閣議決定した。国際紛争を助長してはならない。厳格な歯止めと透明性の確保が必要だ。
政府はこれまで武器や関連技術の輸出を基本的に禁止してきた。「武器輸出三原則」である。対米武器技術供与など一部は例外として認めてきたが、武器輸出を慎む国是は、戦争放棄の憲法九条、核兵器を「持たず、造らず、持ち込ませず」の非核三原則とともに、平和国家という戦後日本の「国のかたち」の根幹を成してきた。
それを根本から変えるのが、武器輸出管理政策の新たな指針となる「防衛装備移転三原則」だ。
新原則は(1)紛争当事国や国連安全保障理事会決議に違反する場合は輸出(移転)しない(2)輸出は平和貢献や日本の安全保障に資する場合に限定。透明性を確保し、厳格審査する(3)目的外使用や第三国移転について適正に管理できる輸出先に限定する-の三本柱。
政府は、時代にそぐわなくなった旧原則を整理したもので、「基本的な考え方は変わらない」(小野寺五典防衛相)と説明する。
そこに落とし穴がある。
まず紛争当事国の扱いだ。旧原則は武器輸出をしない対象に「国際紛争当事国またはその恐れのある国」を挙げていたのに対し、新原則は「紛争当事国」を、国連安保理決議に基づく平和回復措置の対象国に限定している。
現在、そのような国は存在しない。実際に軍事衝突が起きていても、朝鮮戦争時の北朝鮮や湾岸戦争時のイラクのように国連の平和回復措置がとられていなければ、日本から武器輸出は可能になる。
厳格審査と言うが、一方に肩入れし、国際紛争を助長することにならないか。歯止めが必要だ。
透明性の問題も残る。武器輸出の許可状況について、政府は年次報告書を作成、公表することで情報公開を図るとしている。武器輸出を新たに認めるたびに官房長官が談話を発表していた従来の方式と比べ、詳細が分かりにくくなる可能性は否定できない。
新原則の目的の一つは武器輸出の拡大や、武器の国際共同開発への参加で、国内防衛産業の生産・技術基盤を維持、拡大することにある。政府開発援助(ODA)を軍事面に活用することも検討されているという。平和国家に泥を塗り、「死の商人」などと不名誉な称号が与えられるようなことは、ゆめゆめあってはならない。