国民の「知る権利」を侵し、曖昧な法の条文規定に違反すれば厳しく処罰される惧れのある特定秘密保護法が、1年間の猶予期間を経て10日に施行されました。
この法案が提出された昨年度、一部政府寄りのメディアを除いた報道機関や識者によって法の問題点=危険性 は指摘され尽くしました。しかし政府はそんなことには全く構わずに昨年12月6日に強引に成立させました。
法の運用基準は今年の10月に定められましたが、これも官僚が立案したままの形で成立したもので、国民の意思は殆ど反映されませんでした。
9日及び10日、多くの団体が秘密保護法施行に反対を表明しました。
東京新聞がその概要を伝えていますので紹介します。
東京新聞がその概要を伝えていますので紹介します。
日弁連会長とヒューマンライツナウの反対声明を併せて紹介します。
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知る権利守らねば 「廃止目指す」声明相次ぐ
東京新聞 2014年12月11日
国民の「知る権利」を侵す恐れのある特定秘密保護法が十日に施行されたが、法に反対してきた団体などからは「引き続き廃止を求めていく」との声が相次いでいる。社会の幅広い分野から上がる声は、やんでいない。
人権団体「日本国民救援会」は十日、施行に抗議し「廃止をめざし引き続きたたかう」とする声明を出した。鈴木猛事務局長は「声を上げ続けなければ、政府は勝手に国民が納得したととらえ、やりたい放題になる」と指摘。「廃止法案の提出、可決も諦めずに働き掛けていく」と話した。
「日本の民主主義の“終わりの始まり”にしてはいけない」。国際環境NGO「グリーンピース・ジャパン」は、法廃止を求める声明でこう訴えた。広報担当の関本幸(ゆき)さんは「秘密の範囲を広げさせてはいけない。情報公開制度を使って、情報を開示させていくことが大事だ」と話す。
日本新聞労働組合連合は「突然の衆議院解散による選挙戦のどさくさに紛れた施行だ」と批判。「反対運動を風化させず、国民の知る権利を守る活動を続ける」と宣言した。
日本雑誌協会と日本書籍出版協会も、特定秘密の漏えいや取得に対し、最大で懲役十年という重い刑罰が科されることにより、取材行為が妨げられることを懸念。「法律が暴走しないよう、運用と政府の動きを監視し続ける」と訴えた。
改めて秘密保護法の廃止を求める会長声明
(日弁連会長声明)
本日、特定秘密の保護に関する法律が施行された。
当連合会は、本法律に対して、国民の知る権利を侵害し国民主権を形骸化するものであるとして、法案段階から再三にわたって反対の意見を表明してきた。その理由は、国が扱う情報は、本来国民の財産として国民に公表・公開されるべきものであるにもかかわらず、本法律は、行政機関が秘密指定できる情報の範囲が広範かつ曖昧であり、第三者のチェックができず、チェックしようとする国民、国会議員、報道関係者等を重罰規定によって牽制する結果、主権者国民が正しい意思決定を行うために必要な情報にアクセスできなくなるからである。
2014年7月26日に国際人権(自由権)規約委員会が日本政府に対して出した本法律に関する勧告意見においても、同様の懸念が表明されているところであり、その施行令や「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」等を考慮しても、これらの懸念は、何ら払しょくされていない。しかも、2013年12月の本法律制定過程においても、主権者に対する十分な説明は存在せず、国民的な議論が尽くされたとは到底言えないのであり、民主主義国家における主権者の信任を得たものとはおよそ評価できない。
したがって、まずは本法律を廃止し、制度の必要性や内容について、改めて一から国民的な議論を行うべきである。
当連合会は、政府に対し、改めて本法律の廃止を強く求め、引き続き本法律の廃止のための活動を行っていく所存である。
加えて、国民主権の確立のために不可欠な情報公開制度・公文書管理制度の改正、ツワネ原則に則した、国民の知る権利及びプライバシーの保護の規定を明文化する立法の実現に尽力するとともに、本法律が施行された後も濫用されないよう監視し続けることを表明する。
2014年(平成26年)12月10日
日本弁護士連合会
会長 村 越 進
特定秘密保護法の施行に抗議し、廃止を求める声明
ヒューマンライツ・ナウ 2014年12月 9日
1 2013年12月6日、第185回臨時国会において、日本国内外の大きな反対にも関わらず、特定秘密保護法が可決成立した。
そして、2014年12月10日、同法が施行される。
東京を拠点に活動する国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、同法が自由権規約19条やツワネ原則といった国際人権基準から逸脱して、表現の自由、知る権利等の人権を侵害するものであることから、懸念を表明してきた。同法が施行されることにより、表現の自由を含む日本の人権・民主主義を深刻に損なう危険性が高いことに改めて強い懸念を表明し、施行に強く抗議する。
2 当団体は、秘密保護法が、秘密の範囲が広範で限定がなく、国民の知る権利を侵害する危険性があること、憲法違反・重大な権力犯罪や人権侵害等が機密指定される危険性があること、秘密指定の濫用をチェックする第三者的機関の欠如、内部告発者に対する保護がないこと、「教唆・共謀・煽動」そのものを処罰する規定により、報道の自由が損なわれ、市民社会による行政監視・モニタリング活動そのものが侵害され、委縮させられる危険性があること、国政調査権、司法のコントロールという立憲主義の基本を掘り崩す危険性などを指摘し、これに反対してきた。
同様の懸念は広く国内外から寄せられ、約9万件も寄せられたパブリックコメントで8割以上の国民が反対・慎重な意見を述べ、世論調査でも8割以上が慎重な審議を求め、研究者、文化人、ジャーナリスト、市民団体等がこぞって反対を表明した。さらに、国連人権トップである国連人権高等弁務官、国連「表現の自由」に関する特別報告者、同「健康の権利」に対する特別報告者からも深刻な懸念が表明された。
日本政府は、こうした内外の懸念に一切耳を貸さず、法律を強行成立させたものである。同法は、成立プロセスにおいて重大な問題があるうえ、憲法および日本が批准する国際人権条約に違反する疑いが濃厚である。
3 強行採決後も、同法に対する国内外の批判が止むことは無かった。
2014年7月24日、国連自由権規約委員会は日本に対する総括所見を発表、秘密保護法について、秘密の定義が広く曖昧であること、秘密指定の要件が抽象的・一般的であること、ジャーナリストや市民に対しても重罰が定められていることについて懸念を表明し、秘密の限定、公益通報者の不処罰など、表現の自由・知る権利を保障するための全ての必要な措置を講ずるよう日本政府に勧告した。ところが、日本政府はこうした国際機関の勧告を一顧だにしていない。
本年10月14日に同法の施行令及び運用基準が閣議決定されたが、その内容は自由権規約委員会が指摘した懸念や、やパブリックコメントで示された国民からの要望に応えたものではない。
同施行令は、秘密指定できる行政機関を外務、防衛両省や警察庁など19機関とし、運用基準では、秘密と指定できる事項を55項目に細分化した。しかし、秘密指定のカテゴリーは未だ広範かつ曖昧であり、指定は各省庁の裁量・解釈に委ねられており、国民の「知る権利」を著しく制約する危険性が高い。
内閣官房に設置される「内閣保全監視委員会」、内閣府に設置される「独立公文書管理監」の権限は限定的で、濫用に歯止めをかける独立した第三者機関とは到底認められない。
さらに、運用基準には、漏えい罪や取得罪、それらの教唆・扇動等の罰則規定の謙抑的な運用について具体的な言及が全くなく、公益通報者に対する保護も著しく不十分である。
ジャーナリスト・市民社会による権力・行政監視活動が刑罰の威迫により萎縮させられる重大な危険は全く払しょくされていない。
4 ヒューマンライツ・ナウは、秘密保護法の施行に抗議するとともに、同法の実施を直ちに停止し、速やかにこれを廃止することを求める。
同時に、同法の発動やその威嚇によって、国民の権利が不当に侵害されることがあってはならない。政府機関・捜査当局には、同法に基づき、国民の知る権利、表現・報道の自由、市民社会による政府へのモニタリング・監視活動を抑圧、弾圧することがないよう、強く求める。
以 上