安倍首相は7月1日に集団的自衛権行使容認の閣議決定を行った際に、公開の記者会見で国民に対して「自衛隊が地球の裏側まで行くというようなことは絶対にありません」と断言しました。
ところが22日の産経新聞に「集団的自衛権 安保法制に地理的制約なし 政府方針 ホルムズ掃海を視野」という記事が載りました。
閣議決定は首相の断言とは裏腹に、「地球上のどこで発生した紛争であっても日本が集団的自衛権を行使できる」という内容になっているということです。
一国の首相が国民相手の演説で良くこれだけの大ウソがつけたたものと絶句します。
明日の自由を守る若手弁護士の会のブログと産経新聞の記事を紹介します。
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今さら人に聞けない集団的自衛権<地理的限定ってほんと?>
明日の自由を守る若手弁護士の会 2014年12月22日
集団的自衛権を認めるといっても、あくまでも「限定的」ですっ!
という説明がさんざんなされていて、
自衛隊が出動するのはいかにも日本近海だけかのようなイメージを持っている方も少なくないかもしれません。
今日(12月22日)、こんなニュースが流れました。
「集団的自衛権 安保法制に地理的制約なし 政府方針 ホルムズ掃海を視野」
「限定的に」といっても、日本近海に限られるわけでは全然ない(=地球の裏側もありうる)、というわけですね。
実は、7月1日の閣議決定では、「集団的自衛権といっても日本の近くでだけねー」なんて、一切書かれていません。
書かれていないだけではありません。
「脅威が世界のどの地域において発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になっている」
という一文があり、地球上のどこで発生した紛争であっても日本が集団的自衛権を行使できるという内容になっています。
閣議決定は、むしろ「地理的限定なんてないよ」という内容になっているんです。
今年の春頃、自民党の高村副総裁は、
「日本近海でアメリカの軍艦が攻撃を受けているのに日本が助けなかったら、アメリカは日本有事の際に日本を助けることに意義を見出さないだろう」
と言って、集団的自衛権の限定容認を主張していました。
それから1年もたたないうちに地理的限定なしの法改正が進んでいるわけです。
どんなに「限定的」と言っていても、いったん認めたら際限なく広がっていくことのあらわれにしか見えませんね。
集団的自衛権 安保法制に地理的制約なし 政府方針
ホルムズ掃海を視野
産経新聞 2014年12月22日
政府は21日、来年4月の統一地方選後に国会提出を目指す安全保障関連法案に関し、集団的自衛権を行使できる範囲について「日本の周辺地域」のような地理的制約を行わない方針を固めた。安倍晋三首相は中東・ホルムズ海峡の機雷封鎖に対する掃海活動に集団的自衛権を適用する意向を示しており、安保関連法案も地理的制約を取らない形で策定していく。
安保関連法案では、7月に閣議決定された武力行使の3要件を踏襲。ホルムズ海峡での機雷封鎖が「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」と認められる場合には集団的自衛権の行使を認め、自衛隊が掃海活動を行えることになる。周辺海域が「戦闘現場」になっている場合は、新しい武力行使の3要件に照らしても集団的自衛権は行使できない。
また、集団的自衛権によるホルムズ海峡での掃海活動について、政府関係者は「論理的にはそういうことがありうる」とするものの、首相は「経済的パニックが起きる危険性」など特殊なケースを想定しており、慎重に判断する考えだ。掃海活動の海域が「戦闘現場」に当たらなくても、停戦合意がなければ武力行使に当たることから、実際の掃海活動は停戦発効後の国際協力活動として行われる可能性が高いとみられる。
10月に日米両政府が発表した日米防衛協力の指針(ガイドライン)の中間報告では、これまで事実上の地理的制約と理解されることもあった概念「周辺事態」を削除している。
一方、ホルムズ海峡などシーレーン(海上交通路)上での自衛隊の掃海活動をめぐっては、首相が「受動的、限定的なものは3要件に当てはまる可能性がある」と主張。公明党の山口那津男代表は衆院選期間中に「戦火がわが国に及ぶ蓋然性や国民が被る犠牲が深刻重大だとは簡単に言いにくい」と述べていた。