厚労省が2日に発表したところによると、10月の現金給与総額は8カ月連続で増加したものの、円安物価高と消費税増税で実質賃金指数は2・8%減少と、16カ月連続でマイナスとなりました。
また財務省が1日発表したところによると、企業の内部留保(利益剰余金)は増加の一途をたどり、7~9月期で323兆7千億円と過去最高になりました。
「アベノミクス」で大企業の業績が急回復する一方で、従業員の給与がなかなか伸びません。
これについて労働団体などから「内部留保の一部を賃金引き上げの原資に回すべきだ」との指摘が出ています。
これについて労働団体などから「内部留保の一部を賃金引き上げの原資に回すべきだ」との指摘が出ています。
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実質賃金 16カ月連続減 円安、消費増税が影響
東京新聞 2014年12月2日
厚生労働省が二日発表した十月の毎月勤労統計調査(速報)によると、基本給と残業代、ボーナスを合計した「現金給与総額」は前年同月比0・5%増の二十六万七千九百三十五円となり、八カ月連続で増加した。
一方、物価上昇を加味した実質賃金指数は円安による輸入物価の上昇や消費税増税などの影響で2・8%減と、十六カ月連続でマイナスだった。
現金給与総額のうち、基本給を指す「所定内給与」は0・4%増の二十四万二千三百七十円。春闘での賃上げを受けて五カ月連続で増加した。残業代を示す「所定外給与」は0・4%増の一万九千六百七十三円、ボーナスに相当する「特別に支払われた給与」も6・0%増の五千八百九十二円で、いずれもプラスだった。
現金給与総額を就業形態別に見ると、正社員などの一般労働者が0・6%増だったのに対し、パートタイム労働者は0・3%減だった。
企業の内部留保 最高 従業員へ還元薄く
東京新聞 2014年12月2日
財務省が一日発表した七~九月期の法人企業統計で、企業が株主配当や税金などを払った後に社内にためた内部留保(利益剰余金)が、三百二十三兆七千億円と過去最高になっていたことが分かった。安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」で企業業績が急回復する一方、従業員の給与がなかなか伸びない状況に、労働団体などから「内部留保の一部を賃金引き上げの原資に回すべきだ」との指摘が出ている。
財務省によると、安倍政権が発足した二〇一二年十二月末の内部留保は二百七十四兆四千億円で、二年足らずの間に四十九兆円増えた。
アベノミクスは金融緩和や円安誘導などで大企業を潤わせ、賃上げや設備投資を通じて家計や中小企業を底上げするシナリオを描いていたが、今のところ企業の蓄えに回っている。
内部留保増加の理由について、日本福祉大の大木一訓名誉教授(労働経済学)は「企業の合併・買収(M&A)に備えて資本を増強したり、本業以外の金融投資で利潤を追求したりする傾向が近年強まっている」と指摘する。
一方、消費税率引き上げや円安による輸入物価の値上がりなどで実質所得が目減りし、個人消費は伸びていない。
労働運動総合研究所(東京)の試算では、内部留保の約三割を分配すれば、国内の全労働者の年間給与を三十万円増やすことも可能。藤田宏事務局次長は「大企業の内部留保は企業運営に既に十分な水準に達している。今後積み増す分の一部でも従業員に還元すべきだ」と話している。