2014年12月7日日曜日

日銀が国債買取を止めれば日本経済はメタメタに

 アベノミクスは、日銀が膨大な「円」を発行(異次元金融緩和)してそれで国債を買い、逆にこれまで国債を買っていた市中銀行や生保、年金運用機構は国債の購入をやめて株式投資などに向かい、それに呼応した海外の投機資本と相俟って株価の高騰を招きました。
 しかし日銀による国債の大量購入などという異常なやり方をいつまでも続けていて良いわけがありません。国の借金が際限なく増大するからです。果たしてうまく止められるのでしょうか。それが「異次元から正次元に帰れるのか」という問題です。
※  11月30日  「異次元」から「正次元」に帰れるのか
 
 先の記事では、「正常な次元」にスムーズに帰る方法はなく、「阿鼻叫喚」の地獄が現出するということでした。
  経済アナリストの高橋乗宣氏(元相愛大学学長)は、そのときの状況を次のように予測しています。
 “日銀が国債購入を止めようとすれば、そのタイミングを狙って国内の機関投資家は保有している国債を売り急ぐことになり、海外の投資機関も同じタイミングで売り浴びせてくる。そうなると日本国債の価格は一気に落ち込み、長期金利は跳ね上がり、日本経済はメタメタになる。”
 そのときには株価のバブルなども一瞬のうちにはじけてしまうでしょう。
 もともと株価が上がると見た海外の投機筋が参加した相乗効果でこの株高が演出されたのですから、もう上がらないと見れば一斉に売り逃げに走ります。“株価の大暴落”です。
 要するに株価のバブルはピークに達しさえすれば必ずはじけてしまうものです。
 
 現実に円安は制御不能のレベルに達し、このさき中小企業の倒産は一層増えるし国民の生活もますます苦しくなります。
 いずれにしても、安倍首相がアベノミクスの効果を盲目的に信じているのとは全く逆の状況が既に起きており、上述した悲劇も客観的には刻々と近づいてきています。
 
 日刊ゲンダイの記事「政策転換は暴落招く」を紹介します。
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日本経済一歩先の真相/高橋乗宣 
        政策転換は暴落招く 
日刊ゲンダイ 2014年12月5日
 日本国債の格付けが引き下げられたが、債券市場に影響は出ていないようだ。
 本来なら、財政に対する懸念が強まり、国債は売られて長期金利は上昇する。経済の教科書で示されているメカニズムだ。ところが、現実の債券市場は逆の動きを見せた。米格付け会社「ムーディーズ」が格下げを発表した翌2日の新発10年物国債利回りは、前日より0.015%低い0.415%となっている。日本国債を保有している多くの日本の生保や銀行は、格下げに動揺して売り急いだりしなかったのだろう。また、仮に彼らが売りに出たとしても、異次元緩和を続ける日銀が大量に買い入れるため、波乱は起きない。当たり前のメカニズムが見られない格好になっているのだ。
 
 裏を返せば、それだけ日銀の存在感は大きいということ。日銀が買い支えているおかげで、日本国債は暴落の危険を免れているといえる。これは非常に危ない。
 
 米国が金融緩和の出口に向かっているというのに、黒田日銀は追加緩和策を打ち出した。後戻りができないジャングルの奥深くまで、歩を進める構えである。だが、いつまでも未開の地をさまよえるわけではない。消費増税を先送りし、財政の健全化に赤信号がともる中、1000兆円を超える借金を膨張させ続ければ、日本はギリシャと同じになる。いつかは出口を探して現実社会に戻らなければダメだ。
 
  問題は、そのときに起きる。「日銀の買い支えがあるから」と安心していた国内の機関投資家は、日銀の政策変更と同時にスタンスを変えざるを得ない。保有している国債を売り急ぐことになるだろう。海外の投資家も同じタイミングで売り浴びせてくる恐れが強い。なにせ格付け会社が懸念する債券である。こうなると日本国債の価格は一気に落ち込み、長期金利は跳ね上がってしまう。企業の活動は急速にしぼみ、ただでさえ元気がない設備投資や住宅投資は息絶え絶えとなる。日本経済はメタメタだ。
 
  消費増税後の日本は、GDP成長率が2四半期連続でマイナスを記録した。10―12月期、1―3月期も厳しい状況が続くだろう。だが、プラス成長に転じたら転じたで、日銀に対して緩和打ち止め圧力が強まることになる。どちらにしてもお先真っ暗。未来は混沌としている。