2014年12月2日火曜日

政治と報道 首相の特異感覚による不法な選挙干渉

 自民党による「選挙時期における報道の公平中立公正の確保」の要請は、安倍首相TBS「ニュース23」出演時に街頭インタビューで殆どの人が「景気が良くなったとは思わない」、「アベノミクスの恩恵は感じない」と答えたのを見て、テレビ局がそういう人を選んでしゃべらせているとばかりに「気色ばんだ」(インターネットでは「逆切れ」とか「激怒」などとも書かれています)ことに由来することは明らかです。
 そして首相のフトコロ刀といわれている萩生田副幹事長が早速既報のように各テレビ局に対して、「(事実上の)権力を持って報道の自由を束縛する」文書を手渡したわけです。
 
 しかしアベノミクスは国民のごく一部、せいぜい2%かそこらの富裕層や大企業に大儲けという恩恵がもたらされるだけで、一般の国民には円安による物価高しかもたらさないのですから、「景気も良くならない」し、まして「アベノミクスの良さ」などとは無縁です。
 したがって街頭インタビューで殆どの人が「景気が良くなったとは思わない」アベノミクスの恩恵は感じない」と答えたのは極めて当然のことであって、それをテレビ局が操作した結果だと逆切れするという方が異常です。乃至は論理的思考能力の欠如です。
 
 この安倍首相の異常さや頑迷さは国会の答弁などでも頻出していて、愛媛新聞は国民の過半数の人が反対している事案についても、国会で「一方的に持論を繰り返して批判に耳を貸さず、疑問に正面から答えようとしない姿勢が目立った」と報じています
 そんな人に主導されてこの衆院選挙において、メディアへの異例・異常な選挙干渉が行われたことは大変に問題です。
 
  愛媛新聞の社説を紹介します。
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(社説)政治と報道 批判に耳貸さぬ姿勢 危惧する 
愛媛新聞 2014年12月01日
 自民党が衆院解散の前日、「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」と題した文書を在京テレビ各局に送付。期間中の政治報道の「公平」性を繰り返し求め、出演者の発言回数や時間、テーマ選定などの内容にも「配慮」するよう要望したという。 
 
 むろん要望はさまざま野党からもあり、要望があろうとなかろうと、公正な報道に努めるのはメディアの当然の責務。一方で、批判も含めて政権与党に関する報道が多くなるのも当然で、野党や少数派の意見など多様な声、視点を広く紹介する責務もある。だが、自民党の求める「公平」が、政権や与党にとって不利な内容や批判的な見解、異論などの排除を意味するのであれば、その政治姿勢には懸念を禁じ得ない。 
 「報道の自由は尊重するという点は(従来と)何ら変わりない」(自民党広報本部)のなら、わざわざ今、文書を送る必要はない。時の政権与党の「お願い」は、やはり圧力と受け止められても仕方があるまい。報道の自由や議論への介入は到底容認できず、編集権の独立の侵害や、萎縮も招きかねない。言論への不寛容を、強く危惧する。 
 
 今回の文書には、街角インタビューや資料映像さえ「一方的な意見に偏らないよう」との要望もあった。送付の2日前、安倍晋三首相が出演したTBSの報道番組との連関が、おのずと想起される。 
 首相は、VTRで一般人が「景気が良くなったとは思わない」「(経済政策の)恩恵は感じない」と答えたのを見て「(テレビ局の)皆さん、(放映する人を)選んでおられると思いますよ」「ミクロで見ていけばいろんな方がおられますが、中小企業の方々でテレビでもうかってますと答えるのは勇気が要る」「おかしいじゃないですか」と気色ばんだ。個人の実感を否定し、情報操作を疑う姿勢には驚き、失望するほかはない。 
 
 安倍政権ではこれまでも、特定秘密保護法や集団的自衛権行使容認の閣議決定など、国民の意見が二分され、反対や不安の声が大きい政治課題について、一方的に持論を繰り返して批判に耳を貸さず、疑問に正面から答えようとしない姿勢が目立った。 
 言うまでもなく、政治の対話や国民への説明は「勝ち負け」ではない。多数派イコール正義、とも限らない。たとえ考えが違っても相手の意見を尊重し、少数派の声に耳を傾け、妥協点を見いだしていくプロセスこそが民主主義の要諦である。そのことを、忘れないでもらいたい。 
 あす衆院選公示。与野党ともに、一方的に政策を訴える日々が始まる。議論を深める力や「聞く耳」の有無にも注目し、主張を吟味したい。