2014年12月3日水曜日

衆院選公示

 2日、衆院選が公示されました。2日付の各紙は一斉に公示に向けた社説を掲げました。
 言われているようにこの選挙には大義がありません。しかし「今回の衆院解散には大義がない」からと選挙に対する関心を失、投票所へ向かなかったら一体誰がほくそ笑むのでしょうか
 「抗議のために白票を投じよう」という主張が一部にあるようですが、政権側はそのことで反省などはしません。結局棄権を呼びかける運動に等しく、政権側が大歓迎するものです。
 
 西日本新聞は「冷静に考え賢明な主権者として大義ある審判で応じよう」と呼びかけています
 
 田中龍作ジャーナルは「『原発』『雇用』『戦争』… アベノミクスだけじゃない」と呼びかけています。
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(社説) 総選挙きょう公示 大義ある審判で応じよう
西日本新聞 2014年12月02日
■2014衆院選■ 
 第47回衆院選がきょう公示される。2年ぶりの総選挙だが、有権者の側に沸き立つような熱気や高揚感はほとんどない。なぜか。
 主権者が「次の首相と政権」を基本政策とともに選び抜く-。そんな衆院選本来の政権選択選挙という体をなしていないからだ。
 では、争点が不在かといえば、断じて違う。いや、むしろ有権者として判断すべき重大な問題や積み残された政治課題は多い。
 「今回の衆院解散には大義がない」からと選挙に対する関心を喪失し、投票所へ向かうのをためらったら、誰がほくそ笑むのか。冷静に考えたい。賢明な主権者として「大義ある審判」で応じよう。
 
 ▼受け皿のない現実
 過去2回の衆院選は政権交代の是非が現実的な最大の争点となり、実際に政権交代が実現した。それは、1990年代以降の政治・選挙制度改革で模索してきた「政権交代が可能な二大政党制」の一つの到達点だったはずだ。
 その様相は今回、一変した。自民党など与党は野党転落などあり得ないと確信している様子だ。野党第1党の民主党は政権奪還という目標すら口にしない。永田町流の損得勘定にたけた与党の皮算用も、政権担当能力を明示できない野党も、有権者からみれば緊張感に欠けると指摘せざるを得ない。
 安倍晋三首相は消費税再増税を延期する決断をしたので「国民に信を問いたい」と語った。ところが、与党だけでなく野党も増税延期には異論を唱えず、首相が想定した「争点」になり得ていない。
 むしろ世論調査で「再増税の先送りに反対」とする約3割の有権者にとって、事実上その選択肢がないことの方が問題だ。痛みや負担を覚悟する有権者の受け皿がない現実は、政党の側の旧態依然ぶりをあぶり出していないか。
 安倍首相の経済政策「アベノミクス」が大きな争点であることは否定しない。しかし、果たしてそれが「最大」かどうかは、有権者の判断に委ねられる。
 2年間の安倍政権を振り返って、最大の成果は政治に安定を取り戻したことだ。首相が1年で毎年のように交代し、「決められない政治」にうんざりした国民にとって、今秋の内閣改造まで一人の閣僚も交代しなかった「安定と継続」は評価の材料となろう。
 
 ▼未来への想像力を
 その一方で、昨夏の参院選で衆参ねじれを解消した後の「決めすぎる政治」を問題にする有権者も少なくないはずだ。
 国民の知る権利を侵害しかねない特定秘密保護法を採決強行の連続で成立させ、戦後の歴代内閣が「憲法解釈上できない」としてきた集団的自衛権の行使を一内閣の閣議決定で容認へ踏み切った判断の是非は、今回の総選挙で徹底的に論じてほしい。
 年明けにも九州電力川内原発が再稼働する情勢を踏まえれば、賛否が二分する原発問題を論議する好機でもある。東京電力福島原発事故の教訓を問い直すべきだ。
 そして、私たちが特に訴えたいのは、来年の戦後70年へ向けてこの国はどこに向かうのか-という歴史的な時間軸に根差した将来のいわば「方向感覚」である。
 周知のように安倍首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を持論としている。戦後体制の象徴は日本国憲法であり、戦争の放棄を明記した第9条であろう。
 人間に例えれば古希となる国の70年に及ぶ歩みを単純に是か非かで論じるわけには当然いかない。
 しかし、憲法が支えてきた戦後民主主義の何を守り、どこを変えるか-という議論は避けて通れないはずだ。今回の直接的な争点となり得るかどうかは別として、有権者の判断材料とするのは可能であり、また自由でもある。
 政党側が提示する「争点」にとどまらず、有権者側が考える「争点」も含め、熟慮すべきテーマには事欠かない。
 膨らみ続ける財政赤字と持続可能な社会保障制度、近隣外交の立て直しと安全保障の在り方、さらには地球規模のエネルギーや環境問題などに思いをめぐらせれば、今は選挙権を持たない将来世代のことをどう考えるか-という確かな想像力の問題でもあろう。
 今回の総選挙で私たちが投じる一票の意味はやはり重い。 
 
 
【衆院選】 「原発」「雇用」「戦争」… アベノミクスだけじゃない
田中龍作ジャーナル 2014年12月1日
 安倍政権の是非を問う衆院選挙があす、公示される。
 安倍首相自身が「アベノミクスを問う選挙」と言い、マスコミは追従して囃し立てる。やはり「アベノミクス選挙」なのか・・・有権者は引きずられがちだ。
 そうじゃない。安倍政権にノーを突きつけなければならないテーマは あまた ある。
 「特定秘密保護法」「原発再稼働」「集団的自衛権」・・・日頃から悪政に立ち向かっている市民運動家たちが、きょう、国会内で記者会見を開き「アベノミクスだけが選挙の争点じゃない」とアピールした。
 口火を切ったのは「秘密保護法廃止へ!実行委員会」の海渡雄一弁護士だ―
 「秘密保護法は集団的自衛権の行使容認、憲法改悪と一体となった戦争をやりやすくするための政策の一環である」。
 海渡弁護士はそのうえで「意外と早く審判の日が訪れた。秘密保護法に賛成した政党には絶対に投票しないように」と呼びかけた。
 「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」の高田健さんは、改憲への警戒感を示した―
 「安倍政権は解釈改憲を進めながら、長期政権を樹立して明文改憲をするつもりだ・・・(中略)私たちは総がかり行動で止めてゆく」。
道行く人を対象にしたシール投票では「景気(アベノミクス)」より「集団的自衛権」や「原発再稼働」が選挙の争点、とする回答の方が多かった。=1日、参院議員会館 写真:筆者=
道行く人を対象にしたシール投票では「景気(アベノミクス)」より「集団的自衛権」や「原発再稼働」が選挙の争点、とする回答の方が多かった。=1日、参院議員会館 写真:筆者=
 「国際環境団体NGO FoE Japan」の満田夏花さんは、原発再稼働に疑義を呈した―
 「2012年夏のパブコメでは87%が原発ゼロを、78%が即原発ゼロを選択した…(中略)安倍首相は手続きを踏むことなく『原発がベースロード電源である』と転換し、原発ゼロを望む国民の声を無視した」。
 「首都圏青年ユニオン」の神部紅委員長は、安倍政権の労働法制緩和を批判した―
 「雇用政策を企業目線で進めるのか、庶民目線=労働者たちの目線で進めて行くのか、が問われる選挙。アベノミクスの実態を明らかにしながら問い直したい」。
 最後に司会役で「STOP TPP ! 官邸前アクション」呼びかけ人の内田聖子さんがしめくくった―
 「私たちはシングルイシューで運動を続けてきた。それら(原発、TPP、集団的自衛権など)は根っこでつながっている。それらをすべて殺(や)ったのが安倍政権だ」。
 「投票率を上げることが選挙結果を左右する。20代、30代に投票に行くよう呼びかけたい」。
 今度の選挙は「安倍長期政権」を信任するのか否かが問われる。自民党が勝てば、庶民が当たり前に生きる権利さえ根こそぎ奪われてしまうだろう。