櫻井ジャーナルが珍しく国内政治をタイトルに持ってきました。
しかし中身は殆どが著者の専門の海外の事例に関するものでそれに彼の学識を重ね合わせているので、著者のレベルで理解するのは簡単なことではありません。
安倍倍首相は先般あれだけTPPにこだわりました。ファアシズムの路線を進めながらも、多分彼自身そうとは自覚していなかった筈のTPPこそがファシズムの象徴であるというのは皮肉なことです。
安倍倍首相は先般あれだけTPPにこだわりました。ファアシズムの路線を進めながらも、多分彼自身そうとは自覚していなかった筈のTPPこそがファシズムの象徴であるというのは皮肉なことです。
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安倍政権が推進する新自由主義は国民の資産を腐敗勢力に略奪させる仕組みで、ファシズムそのもの
櫻井ジャーナル 2017.03.06
新自由主義という考え方を導入した国では、腐敗した政治家や官僚と手を組んだ一部の人間が国民の財産を不正、あるいは不公正な手段で手に入れて巨万の富を築いてきた。国有地が格安の値段で学校法人に売却されても不思議ではない。
ドナルド・トランプは離脱を宣言したが、安倍晋三政権を含む日本の支配層が今でも執着しているTPP(環太平洋連携協定)は私的権力に国を上回る権力を与えようとするものであり、そうした「新秩序」を前提にして、日本の「エリート」たちは動いているように見える。
本ブログでは何度も指摘しているように、アメリカの第32代大統領のフランクリン・ルーズベルトは1938年4月29日、ファシズムについて次のように定義した:
「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」
ファシズムの創始者とも言えるベニト・ムッソリーニが1933年11月に書いた「資本主義と企業国家」によると、巨大資本の支配するシステムが「企業主義」で、それは資本主義や社会主義を上回るものだとしている。これが彼の考えたファシズムである。
つまり、TPPはファシズムにほかならない。勿論、TTIP(環大西洋貿易投資協定)やTiSA(新サービス貿易協定)でも同じことが言える。「富める者が富めば貧しい者にも富がしたたり落ちる」という「トリクルダウン理論」なるものがあるようだが、これは人びとをファシズムへ導く虚言だ。ため込まれた富を強制的にはき出させる何らかの仕組みが作られない限り、そうしたことは起こらない。
かつて、宗教がそうした仕組みの一端を担っていたことがある。例えば、カトリックでは貧困層を助けることが神の意志に合致すると考え、仏教の場合は「喜捨」、イスラムでは「ザカート」や「サダカ」などの教えがある。
また、キリスト教の聖典である新約聖書のマタイによる福音書やマルコによる福音書では、「金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」と書かれていて、富を蓄積すること自体が良くないとされている。かつて、カトリックではイスラムと同じように、金利を取ることも禁止されていた。
こうした倫理規範を破壊したのはプロテスタントの主張だとする指摘がある。マックス・ウェーバーによると、プロテスタンティズムの「禁欲」は「心理的効果として財の獲得を伝統主義的倫理の障害から解き放」ち、「利潤の追求を合法化したばかりでなく、それをまさしく神の意志に添うものと考えて、そうした伝統主義の桎梏を破砕してしまった」(マックス・ウェーバー著、大塚久雄訳『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波書店、1989年)というのだ。
ジャン・カルバンらが唱える「予定説」によると、「神は人類のうち永遠の生命に予定された人びと」を選んだが、「これはすべて神の自由な恩恵と愛によるものであって、決して信仰あるいは善き行為」などのためではない(ウェストミンスター信仰告白)。つまり、人間にとって善行は無意味であり、自分が「選ばれた人間」だと信じる人びとは何をしても許されるということになる。強欲を認める教義だ。
富と情報が流れていく先に権力が生じることは歴史が証明している。「トリクルダウン理論」は権力を集中させ、独裁体制を強化しようと目論んでいた連中が流した戯言にすぎないということ。
不正を難しくするためには資金の流れを明確にする必要があるのだが、日本では逆の政策がとられてきた。つまり、政治家、官僚、大企業の経営者たちは不正を容易にする仕組みを作ってきたのだ。
昔から証券界では相場が下がると「財投出動」を期待する声が高まった。「財政投融資計画」の資金、つまり郵便貯金、国民年金、厚生年金、大蔵省(現在の財務省)の資金運用部に預託される資金、簡易保険の積立金、金融機関から調達した資金などだ。この仕組みは2001年に変えられたというが、透明度が高まったとは思えない。事実上、日本の国家予算は「特定秘密」だ。安倍晋三政権が年金を怪しげなものに投入しようとしていることは最近、問題になった。そうした国民資産の略奪が話題になる中、国民資産を略奪する仕組みを確固たるものにするために共謀罪を安倍政権は導入しようとしている。
アメリカでは1960年代に支配階級の利益に反する主張をしていた人びとが次々と暗殺された。1963年11月のジョン・F・ケネディ第35代大統領、65年6月のマルコムX、68年4月のマーティン・ルーサー・キング牧師、68年6月のロバート・ケネディなどだ。
キング牧師が殺された直後にアメリカでは暴動が起こり、それに恐怖した支配層は暴動鎮圧を目的として2旅団(4800名)を編成、憲法の規定を無視して令状なしの盗聴、信書の開封、さまざまな監視、予防拘束などをFBIやCIAなどに許す計画を立てた。1970年に作成されたヒューストン計画だ。
この計画を知ったジョン・ミッチェル司法長官はリチャード・ニクソン大統領を説得して公布の4日前、廃案にしてしまった。(Len Colodny & Tom Schachtman, “The Forty Years Wars,” HarperCollins, 2009)また、ケント州立大学やジャクソン州立大学で学生が銃撃されたことを受け、ニクソン政権は暴動鎮圧旅団を1971年に解散させてしまう。
しかし、ニクソン大統領がウォーターゲート事件で1974年8月に辞任、ジミー・カーター政権下の78年には「文明の衝突」で有名なサミュエル・ハンチントンがズビグネフ・ブレジンスキーと一緒にヒューストン計画を生き返らせている。そして創設されたのがFEMA(連邦緊急事態管理庁)だ。(Peter Dale Scott, “The American Deep State,”Rowman & Littlefield, 2015)
ロナルド・レーガンが大統領になるとFEMAを発展させる形でCOGプロジェクトが始まり、1988年に出された大統領令12656でCOGの対象は核戦争から「国家安全保障上の緊急事態」に変更された。そして2001年9月11日、その「国家安全保障上の緊急事態」が発生したとされ、「愛国者法」が成立してアメリカ憲法は麻痺させられる。日本はその後を追いかけている。