2017年3月22日水曜日

22- 籠池証人喚問の行方は・・・ 日刊ゲンダイ

  日刊ゲンダイが「籠池証人喚問の行方は・・・本紙独占“安倍寄付”証言の全容 <上>・<下>」を特集しました。
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籠池証人喚問の行方は・・・本紙独占“安倍寄付”証言の全容 <上>
日刊ゲンダイ 2017年3月17日
■菅野氏が本紙に語った籠池「100万円」証言の核心部分とその真偽
「内閣が2つくらい飛ぶ」――。宣言通りの“巨大爆弾”が炸裂した。きのう(16日)、森友学園の籠池泰典理事長の立ち会いのもと、参院予算委員会の議員団が大阪府豊中市にある「瑞穂の國記念小學院」の用地を視察。そこで籠池理事長が「安倍首相から、昭恵夫人を通じて100万円もらった」と明言したのだ。
 籠池理事長は集まったメディアの前で「すべては国会で話す」とも宣言。これを受け、急転直下、23日の「証人喚問」が決まった。あれほど国会招致を拒絶していた自公が、参考人どころか「証人」として呼ぶことを提案したのである。そこにどんな思惑があるのか。そして喚問では何が飛び出すのか。“共鳴”していたはずの同志の逆襲に、安倍政権は絶体絶命だ。
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 笑ってしまうのは、「首相から100万円寄付」という籠池発言を受けた安倍官邸の慌てっぷりだ。菅官房長官は、「総理に確認したところ、総理は自分では寄付はしていない。昭恵夫人、事務所など、第三者を通じても寄付はしていない」とすかさず完全否定してみせたが、その後、ビミョーに軌道修正して「夫人個人で行ったかどうかを現在、確認している」と含みを残した。逃げを打ったつもりだろうが、悪あがきになるだけじゃないか。
 
 本当に安倍首相は100万円を出したのか―─。「日本会議の研究」の著者・菅野完氏は15日夜、籠池理事長から現金授受の詳細をハッキリ聞いている。その受け渡しシーンはとにかくナマナマしい。
「あの夜は4時間ほど籠池氏にインタビューし、寄付の話はその中で飛び出しました。昭恵夫人は15年9月5日に森友学園の塚本幼稚園で講演しています。籠池氏によると、講演後、『これ、主人からです』と昭恵夫人から紙包みを渡されたそうです。中を確認すると現金100万円が入っていた。
『小学校の建設費用に充てて欲しい』と言われたといいます。籠池氏は『領収書を出します』と昭恵夫人に申し出たそうですが、やんわりと断られ、結局、籠池氏の妻が森友学園の名義で森友学園の口座に振り込んだと聞きました。念のため、籠池氏に森友学園の預金通帳を見せてもらうと、確かに、講演があった2日後の9月7日に100万円の入金記録が確認できた。それをもってすなわち現金授受の動かぬ証拠にはなりませんが、自分から自分に寄付するなんて不自然だし、籠池氏の話はディテールがしっかりしている。私は信憑性が高いと思っています」(菅野完氏)
 断っておくが、安倍が右翼小学校に寄付したとしても、そのこと自体が違法性に問われるわけではない。
 安倍はこれまでに国会で「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員もやめる」「籠池氏と個人的な関係は全くない」と言い切った。それなのに“ズブズブの関係”だった疑いが浮上していることが問題なのだ。しかも、100万円の寄付だけでなく、安倍と籠池夫妻の“個人的な関係”を裏付ける決定的な証拠がこれから次々に出てくるという。
「安倍首相は国会で虚偽答弁を繰り返した稲田防衛相を擁護しました。それ自体が国会軽視で問題なのですが、首相本人の虚偽答弁が明らかになれば、内閣総辞職をして責任を取らなくてはいけません」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
 第2、第3の籠池爆弾が炸裂するのは時間の問題。安倍官邸がトボけていられるのも今のうちだ。 
 
■参考人招致も拒否から一転、証人喚問の裏に何があったのか
「国会の場でお話ししたい。それがすべてです」
 16日夕方、野党議員と自宅で面談した籠池理事長は、報道陣の前でこう言って、国会の参考人招致に応じる姿勢を示した。
 それからわずか数時間、急転直下で籠池理事長の証人喚問が決まった。23日に衆参両院の予算委員会で行われる予定だ。
 これまで自民党は「民間人の招致は慎重にしなければいけない」とか言って、野党が求める籠池理事長の参考人招致を拒否し続けてきた。どんな爆弾発言が飛び出すか分からないからだ。それが一転、招致に応じたウラには何があるのか。しかも、参考人招致ではなく、いきなり偽証罪にも問われる証人喚問に格上げである。
「これだけの騒ぎになってしまった以上、いつまでも籠池氏の国会招致を拒否していると、自民党に疑いの目が向けられる。安倍政権が疑惑を隠蔽しているように見られて、世論の反発を招くだけです。この問題に区切りをつけるためにも、籠池氏を国会に呼ぶ必要が出てきた。ただし、籠池氏が何を言い出すか分からないのは事実です。いい加減なことを言えないよう、証人喚問にハードルを上げたのでしょう」(政治評論家・有馬晴海氏)
 
 学園に“コンニャク”を寄付していたと暴露され、籠池理事長との個人的な関係を否定してきた安倍首相の国会答弁の信用性が揺らいだことも大きな原因だ。
「カネの話で名前を出されて、総理は“戦闘モード”になっている。向こうが国会に呼べと言うなら来てもらおうじゃないか、国会の場で白黒つけると闘志をたぎらせている」(官邸関係者)
 招致を決めた自民党の竹下国対委員長も「首相に対する侮辱ですから。しっかりたださなければならない」と語気を強めていたが、首相を侮辱したから証人喚問なんて、一体どこの独裁国家か。証人喚問は、真相を解明するために行うのであって、安倍を侮辱した人物をつるし上げる場ではない
 
 
籠池証人喚問の行方は…本紙独占“安倍寄付”証言の全容<下>
日刊ゲンダイ 2017年3月17日
■知りすぎた男、籠池理事長が“消される”懸念
 籠池理事長の証人喚問に安倍首相はイケイケのようだが、政権内には慎重意見も根強い。やはり、何が飛び出すか分からないリスクがあるし、自分の名前が出されるんじゃないかとビクビクしている議員も少なくないのだ。
 証人喚問までの1週間は3連休を挟み、19日からは欧州外遊で安倍が不在になる。その間にも、政権サイドの暗闘が繰り広げられるだろう。
 安倍政権に不利な証言をしないよう、口裏合わせの説得工作に乗り出すのか、あるいは口封じに走る可能性もある。パクるか、消すか、だ。
 
 実際に大阪府は籠池理事長の刑事告発を検討している。小学校の建築費をめぐって、23億円、15億円、7億5000万円と金額の異なる3つの契約書がそれぞれ国交省、関西エアポート、大阪府に提出されていた件で、森友学園が虚偽申請をした疑いがあるとされている。身柄を拘束するのが目的だから、容疑は何でも構わない。
「籠池氏を面白おかしく取り上げれば数字が稼げるから、すっかりテレビメディアのオモチャにされていますが、これも怖い。デタラメばかりのオッサン、おかしな家族というイメージが先行すれば、彼が何を話しても信用されないし、もし逮捕されても、見せ物ショーになってしまう。問題の核心が忘れられてしまいます」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
 
 きのう、報道陣の前に共産党や社民党などの野党と並び立った籠池理事長の姿を見て、自民党のあるベテラン秘書は「左翼と組んだと思われたら、頭に血がのぼった“愛国右翼”が天誅を下すかもしれんね」と物騒なことを言って心配していた。
 安倍はきのう夜、公邸で参院国対メンバーと会食した際も、籠池理事長のことを「変な人だよね」と言い、冷たく突き放していたという。こんな非情な男をかばい立てする必要はない。自分の身を守るためにも、籠池理事長は知っていることを洗いざらい話すべきだ。こうなったら、“死なば森友”である。 
 
■証人喚問するなら財務省も松井知事も呼ばなきゃダメだ
 籠池理事長の証人喚問だけでは事実は解明されない。そもそも、森友学園をめぐる疑惑の発端は国有地の格安払い下げだ。この怪しい仕組みには財務省、国交省、大阪府が絡んでいる。籠池理事長ひとりの聴取だけで全体像が浮かび上がるわけがないし、ヘタをしたら、右翼思想に凝り固まった大阪弁のおかしなオッチャンの暴走で片づけられてしまうだろう。
 野党は籠池理事長のほかに、官僚5人の参考人招致を求めている。
 なぜこの5人もセットで証人喚問しないのか。払い下げ当時の責任者だった財務省の迫田英典理財局長(現国税庁長官)、武内良樹近畿財務局長(現国際局長)
 それに、森友学園サイドが不可解な値下げ交渉を引き出したとされる近畿財務局での打ち合わせに参加した財務省国有財産管理官2人と、国交省大阪航空局の空港部補償課跡地調整係長。大阪府の橋下、松井の歴代両知事の喚問も必須だ。
 学園が当初進めていた小学校用地の定期借地契約で、賃料ダウンに応じた当時の冨永哲夫近畿財務局長(現国交省政策統括官)も説明する必要がある。
 政治学者の五十嵐仁氏はこう言う。
「森友疑惑に登場するすべての関係者を国会に呼ばなければダメです。野党が求める招致はもちろん、籠池理事長から陳情を受けて私学小学校の設置基準緩和の号令をかけた大阪府の橋下前知事、それを実行した松井知事。『認可適当』をスピード審査した私学審議会メンバー、それを所管する私学課長。“安倍晋三小学校”の名誉校長を引き受け、寄付金を手渡したとされる安倍首相夫人の昭恵氏。安倍首相は口を極めて関与を否定していますが、安倍夫妻の存在感が官僚の忖度を促した可能性は完全に否定できていません。それに学園の代理人を務め、教育方針を絶賛していた稲田防衛相もそうです。参考人招致も証人喚問も国政調査権の発動であって、有罪か無罪かを争う法廷ではない。関与を否定するのであれば、国会で身の潔白を証明すればいいのです」
 世間は一連の疑惑に疑問を抱いている。朝日新聞の世論調査では、国有地の格安払い下げについて「妥当ではない」が81%に達し、安倍内閣の「違法性はない」との説明に「納得できない」が71%を占めた。毎日新聞では昭恵氏の名誉校長就任について「辞退したが問題は残る」が58%に上った。
 松井知事は「僕を呼べばいい」と言っているのだから、すぐにセッティングすればいい。関係者総ざらいの徹底追及をしなければ国民は納得できない。 
 
■この証人喚問では終わらない安倍「日本会議」内閣の絶体絶命
 安倍官邸は籠池理事長の証人喚問で今度こそ疑惑に幕引きしようと焦っているが、むしろ政権幕引きの引き金になる。「共産党と朝日新聞が組んで事態が勃発した」とまで罵った籠池ファミリーが、共産を含む野党4党に背中を押されるように、自ら国会招致に名乗りを上げた。真相解明のため、野党は徹底追及する。籠池理事長がハラを決め、安倍夫妻との関係やコトの経緯を洗いざらいブチまければオダブツ必至である。
 
 安倍首相と籠池理事長を結びつけたのは、ともに信奉するカルト的右翼組織「日本会議」の存在だ。集団的自衛権の行使容認、憲法改正、愛国心教育、自虐史観の排除、戦後レジームからの脱却――。安倍が力を入れるこうした政策は日本会議が提言してきたものだ。だから、安倍は当初、「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしいという話を聞いている」と国会答弁し、学園での講演会も検討していた。そして、安倍内閣の大半が日本会議議連のメンバーだ。
 学園の幼稚園で行われている教育勅語の暗唱を絶賛した稲田防衛相。講演に行き、「思想的にもワシに合うなと思った」と言った鴻池元防災担当相は、麻生財務相の派閥に属す。その麻生はまさに森友問題の“メーン舞台”である財務省のトップだ。
 他にも、右翼団体に連なる閣僚たちへ、まだまだ森友問題は波及していくだろう。
「これほど国政を私物化している政権はないでしょう。森友疑惑で名前が上がる政治家はおしなべて日本会議とのつながりを指摘されている。とりわけ問題なのが、稲田防衛相です。南スーダンPKOの日報廃棄問題で何枚もイエローカードを食らい、森友疑惑でもメチャクチャな答弁を繰り返しています。安全保障を担う防衛大臣が自身の問題で身動きが取れないのでは、お話になりません。もはやレッドカードです」(五十嵐仁氏=前出)
 第1次安倍政権は辞任ドミノで幕を下ろした。一寸先は闇。政権の命運はアッという間に尽きる。