2017年3月19日日曜日

首相を侮辱したからと籠池氏を「証人」喚問 安倍自民党

 16日、参議院予算委の議員団が瑞穂の國記念小學院開校予定地を現地視察した際に、籠池理事長が「この学園を作り上げるには皆さんのご意思があり、その中には大変恐縮ですが、安倍内閣総理大臣の寄付金も入っていることを伝達します」と話しました。
 そうしたところ自民党の竹下亘国対委員長は同日、記者団に対し「寄付金発言は首相に対する侮辱だ」と怒りを示し、民進党側に籠池理事長の証人喚問に応じる伝えました。それを受けて翌17衆参両院の予算委は籠池氏の証人喚問を正式決定しました。
 
 それまで野党が求めていたのは、籠池氏、前理財局長迫田英典(現国税庁長官)、松井一郎大阪府知事の参考人招致でしたが、なぜか一足飛びに籠池氏単独の証人喚問になりました。
 寄付金の問題を明らかにしたいのであれば安倍昭恵夫人も喚問しなければ埒があかないし、森友事案を解明するのであれば、上記の迫田氏と松井氏を併せて呼ばないとやはり明らかにはなりません。
 しかし自民党は何故か彼らの参考人招致は頑強に拒否しています。それは勿論事実が明らかになると困るからです。そういう彼らが首相了解のもとに突然籠池氏の証人喚問を言い出した魂胆は明らかです。
 証人喚問では虚偽の発言をすれば偽証罪に問われることになるので、籠池氏の口を封じたい自民党としては何とかそこに追い込んでこの問題を終わりにしたいということです。
 しかし8割を超える国民は疑惑を政権に向けているので、そんなことで幕引きしようとするのは甘い考えです。
 
 それにしても平気で「首相を侮辱したから証人喚問にかける」などと言って憚らないのは、一体どういう感覚なのでしょうか。まるで独裁政権を思わせるものです。
 そもそもこの件では、籠池氏が「寄付金を貰った」などとわざわざ虚偽を述べる必要性がないものです。実際に貰ったからこそそれを暴露することで、最近冷淡になった安倍首相に一矢むくいようとしたというのが真相であると思われます。
 それを「首相に対する『侮辱』だ」として、証人喚問の場で何とか偽証罪に持ち込もうという発想は『私刑』に近いものではないでしょうか。
 日刊ゲンダイが「恐ろしい国だ ”首相を侮辱” で証人喚問の横暴と身勝手」とする記事を出しました。
 以下に紹介します。
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恐ろしい国だ 「首相を侮辱」で証人喚問の横暴と身勝手
日刊ゲンダイ 2017年3月18日
 この国は本当に民主国家なのか――。「森友学園」の籠池泰典理事長(64)の証人喚問が、17日正式に決まった。23日に衆参で2時間ずつ話を聞く。
 なぜ国有地が8億円もディスカウントされて「森友学園」に払い下げられたのか、真相を解明するために国会に呼んで経緯を聞くことは結構なことだ。しかし、この決まり方は、どう考えてもマトモじゃない。
 これまで野党が籠池理事長の参考人招致を強く求めても、安倍自民党は「民間人だから」「違法性がないから」などと屁理屈をつけて、かたくなに拒否してきた。ところが、籠池理事長が「安倍首相から100万円の寄付をもらった」――とバクロした途端、「参考人招致」を飛び越え、いきなり偽証罪に問われる「証人喚問」を自分たちから提案したのだから信じられない。
 
「証人喚問はバタバタと決まった。100万円発言が飛び出した後、自民の竹下国対委員長が急遽、公明の大口国対委員長と会っています。100万円発言に慌てたのは間違いない。『籠池理事長とは個人的な関係はない』という安倍首相の国会答弁が崩れてしまうからでしょう。このまま籠池理事長を放置したら何を口にするか分からない、偽証罪に問われる立場に追い込んだ方が口をふさげると考えたに違いありません」(政界関係者)
 常軌を逸しているのは、自民党が証人喚問を提案した理由だ。竹下国対委員長は「総理に対する侮辱だからしっかり受け止めなければならない。籠池氏をたださなければいけない」と堂々と口にしたのだから完全に正気を失っている。安倍首相を侮辱したから証人喚問なんて、この国は一体どこの独裁国なのか。総理に逆らった途端、国会に呼び、つるし上げるなんて北朝鮮と同じである。
 
 弁護士の小口幸人氏がこう言う。
「参考人招致と違って証人喚問は出席を拒否できない。発言を強要する制度です。いきなり民間人を証人喚問するのは乱暴すぎる。しかも、総理を侮辱したから呼ぶとはムチャクチャです。これって戦前の不敬罪と同じですよ。対象が天皇から安倍晋三に変わっただけです。恐ろしいのは、自民党の国対委員長が自分の発言の異様さに気づかず、自民党内からも批判が上がらないことです。自民党は一線を越えはじめています」 
だったら昭恵夫人の国会招致も必要だ
 
 安倍自民党が露骨なのは、野党は「森友問題」の解明のために6人の「参考人招致」を求めているのに、籠池理事長を除く5人については、絶対に応じようとしないことだ。
 本来、参考人招致も証人喚問も、真相解明のために行われるものである。真相を解明するためには、関係者を全員、国会に呼ぶしかない。なのに、籠池理事長の「証人喚問」を提案しておきながら、残り5人については「参考人招致」にも応じないのだから、真相解明が目的ではなく、籠池理事長に対する“懲罰”なのは明らかだ。
 
「森友問題の焦点は、①なぜ財務省は国有地を8億円も安く払い下げたのか ②なぜ大阪府は、財務面でも教育内容も問題だらけの学校法人と認識しながらスピード認可したのかの2点です。疑惑を解明するためには、当時、財務省の理財局長だった迫田英典国税庁長官と、松井一郎大阪府知事の参考人招致は欠かせない。と同時に、籠池理事長は、昭恵夫人を通じて安倍首相から100万円を受け取ったと証言しているのだから、昭恵夫人の招致も不可欠です。籠池理事長と一緒に、3人を国会に呼べば、少しは真相が見えてくるでしょう。ところが、籠池理事長1人しか呼ばない。安倍自民党のやっていることは、証人喚問の私物化ですよ。安倍首相の意向に従って誰を証人喚問するかが決まる。もう、この国は民主国家とは呼べなくなっています」(政治学者・五十嵐仁氏)
 
 1強体制を築いた安倍首相は、どんどん独裁を強めている。二言目には「私が最高責任者だ」と言い放ち、最近は、野党が気に入らない質問をすると「その質問はやめていただきたい」と答弁拒否する始末だ。自民党議員も、安倍首相が演説すると北朝鮮の人民のように一心不乱に拍手を送っている。
 安倍首相に逆らった籠池理事長の「証人喚問」は、国民を愚弄するオレ様政権の正体がむき出しになったものだ。
 
■籠池喚問で幕引きとはならない
 安倍自民党は、籠池理事長を国会に呼ぶことで「森友問題」に幕を引き、籠池理事長も抹殺するつもりだ。
「証人喚問をする自民党の狙いは、籠池理事長から“嘘”を引き出すことです。国民に『やっぱりあの男は嘘つきだ』という印象を植えつけることで、森友問題を終わらせるつもりです。場合によっては偽証罪で告発してもいいし、『告発するぞ』と脅して黙らせてもいいと考えているようです」(霞が関関係者)
 しかし、証人喚問することによって「森友問題」が終息し、籠池理事長が口を閉ざすと思ったら大間違いだ。
 安倍首相にハシゴを外されたと不満を強めている籠池理事長は、“返り血”覚悟でケンカするつもりでいる。途中まで「安倍首相、昭恵夫人からしていただいたことは何もない」とかばっていたが、安倍首相が国会で「しつこい」と籠池理事長を罵倒したのを聞いて、吹っ切れたという。17日も、昭恵夫人から籠池夫人に「幸運を祈ります」という意味深なメールが16日に届いたとバクロしている。「幸運を祈ります」とは、「幸せな人生を送りたいなら分かっていますね」という脅しだろう。
 
 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「安倍自民党が、籠池理事長ひとりを悪者にしようとしても、国民の多くは、国有地が8億円もディスカウントされたのは籠池理事長ひとりの力ではない、と分かっています。籠池理事長も『小学校をつくりあげようとしたのは、皆さんのご意思があってこそ』と口にしている。教育方針に賛同した勢力が小学校新設のために力を貸したのは間違いない。名誉校長を引き受けた昭恵夫人も、そのひとりでしょう。事件の核心は、国民の財産である国有地が不自然な経緯で8億円も安く売られていたことです。安倍首相に近い仲間内で国有地が私物化されていたのではないか、と国民は疑っている。簡単に森友問題を忘れるはずがありません」
 
 安倍首相に逆らった籠池理事長が「証人喚問」され、彼ひとりが悪党にされて一件落着となったら、この国の民主主義は本当に終わってしまう。
 沖縄では米軍基地の新設に反対する市民のリーダーが、不当に長期間、身柄を拘束される恐ろしい事態が起きている。このまま安倍自民党の独裁を許しては絶対にいけない。