2017年3月2日木曜日

共謀罪法案 「テロ目的」の記載なし 原案判明

 政府が今国会への提出を狙う「共謀罪」法案の原案の内容が、228日までにわかりました。
 正式な名称は「実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画の罪 です
 政府は今回の法整備の目的を2020年の東京五輪・パラリンピックなどに向けたテロ対策強化としていましたが、同法案にはロリズムの定義もなく、当初の「テロ」を冠した呼称は、世論対策に過ぎなかったと見られます
 「準備行為」に着手が逮捕の条件という説明もありましたが条文からはそうは読み取れず、一般市民や労組員が対象になることはないという政府の説明も、全く根拠がありません。
 明らかなことは、国民の日常的な会話や通信を監視するため盗聴や内偵など人権侵害性の高い捜査手段が拡大され、警察権が大きく強化されることです
 実行着手前に自首した者の刑の減免を設けたのも、密告を奨励することにとどまらず、周囲をそそのかした挙句に自首することで、意図的にあるグループに打撃を与えることを容易にするものです。
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共謀罪法案「テロ目的」の記載なし 原案判明
 国民監視へ警察権強化
しんぶん赤旗 2017年3月1日
 原案では、「共謀罪」の対象犯罪を277に絞り込んでいますが、犯罪実行の計画・合意だけで処罰するもので、内心処罰へと国の刑罰権を拡大・大転換する本質に全く変わりありません。
 国民の日常的な会話や通信を監視するため、盗聴や内偵など人権侵害性の高い捜査手段が拡大され、警察権が大きく強化されます。
 政府は「一般人は対象にならず、従来の共謀罪とは全く別物」などと繰り返してきましたが、重大な危険が改めて明らかになりました。
 
 原案は「組織的犯罪集団」の行為を対象としていますが、衆院の予算委員会での質疑でも明らかにされたように、「組織的犯罪集団」の明確な定義はありません。市民団体や労働組合、政党などの一般団体が「組織的犯罪集団」に性質を一変させることもあると政府は繰り返し答弁しています。
 また原案は、犯罪の計画に関わった者の「いずれか」が「資金又は物品の手配、関係場所の下見その他」の「犯罪を実行するための準備行為」を行ったときに処罰するとしています。「準備行為」をしていない者も一網打尽にできる仕組みで、合意だけで処罰する「共謀罪」そのもの。「準備行為」は処罰の条件で、計画・合意だけで犯罪は成立すると読み取れます
 実行着手前に自首した者の刑の減免を設け、密告を奨励しており、乱用されれば市民の自由に対する脅威になります。
 
共謀罪 原案のポイント
 ●実際に起きていない犯罪について2人以上で「話し合い、計画」しただけで犯罪
 ●目的は国連の国際組織犯罪条約の締結のため
 ●犯罪を実行するための「組織的犯罪集団」が対象」
 ●現場の下見や資金の調達などの「準備行為」で処罰
 ●実行に着手する前に自首した場合は刑を減免
 
 
テロ準備罪に「テロ」表記なし
「共謀罪」創設の改正案を全文入手
東京新聞  17228
 政府が創設を検討している「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の全容が二十七日、関係者への取材で明らかになった。政府はテロ対策を強調し呼称を「テロ等準備罪」に変更したが、法案には「テロ」の文言が全くないことが判明。捜査機関の裁量によって解釈が拡大され、内心の処罰につながる恐れや一般市民も対象になる余地も残しており、共謀罪の本質的な懸念は変わっていない。 (山田祐一郎)
 
 本紙が入手した法案全文によると、処罰されるのは「実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画」で、「計画罪」と呼ぶべきものとなっている。政府が与党に説明するために作成した資料では、対象とする二百七十七の犯罪を「テロの実行」「薬物」など五つに分類していたが、本紙が入手した法案全文には「テロ」の文言はなく、分類もされていなかった。特定秘密保護法で規定されているようなテロリズムの定義もなかった。
 法案は、共同の目的が犯罪の実行にある「組織的犯罪集団」の活動として、その実行組織によって行われる犯罪を二人以上で計画した者を処罰対象としている。計画に参加した者の誰かが資金や物品の手配、関係場所の下見、「その他」の実行準備行為をしたときに処罰すると規定。また「(犯罪)実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、または免除する」との規定もある。
 
 政府はこれまでの国会答弁で「合意に加えて、準備行為がなければ逮捕令状は出ないように立法する」などと説明してきた。しかし、条文は「実行準備行為をしたときに」処罰するという規定になっており、合意したメンバーの誰かが準備行為をしなければ逮捕できないとは読み取れない
 準備行為がなければ起訴はできないが、計画や合意の疑いがある段階で逮捕や家宅捜索ができる可能性が残ることになる。合意の段階で捜査できるのは、本質的には内心の処罰につながる共謀罪と変わらない。
 
 「組織的犯罪集団」は政府統一見解では、普通の団体が性質を変えた場合にも認定される可能性がある。団体の性質が変わったかどうかを判断するのは主に捜査機関。その裁量次第で市民団体や労働組合などが処罰対象となる余地がある。
 
 <内心の処罰> 複数の人が犯罪を行うことを合意しただけで、実際の犯罪行為がなくても処罰につながることが、今法案の大きな問題点とされている。現代刑法は、犯罪行為を実行(既遂)、あるいは、結果は生じていないが犯罪行為に着手(未遂)した場合に処罰することが大原則。日弁連は、未遂の前の段階まで罪に問うと刑法の体系を根底から変えてしまうと批判している。過去に共謀罪が国会審議された際には「内心の処罰は表現の自由を脅かす」「捜査機関が乱用する恐れがある」との批判が大きく、廃案の一因となった。