2017年3月11日土曜日

11- 稲田防衛相の教育勅語称賛 大臣の資質が問われる

 教育勅語(=教育に関する天皇の言葉)は、はるか昔の1890年(明治23年)に、国民道徳の基本を示し,教育の根本理念を明らかにするものとして発布されたもので、終戦まで各小学校などで式典ごとに校長によって奉読されてきました。
 戦後新憲法が施行された時点で勅語は事実上廃止されましたが、1948年に、衆院では「教育勅語等排除に関する決議」、参院では「教育勅語等の失効確認に関する決議」が行われて、その廃止が正式に確認されました。
 
 教育勅語には、孝行友愛夫婦の和朋友の信謙遜博愛修業習学知能啓発徳器成就公益世務遵法義勇12の徳目が謳われているとして、日本会議など一部の人は高く評価していますが、それは教育勅語のごく一部を取り出したものであって、もともとの文脈は、「天皇家の皇祖皇宗が国を開いた」ことに始まり、「臣民は皇室に忠孝を尽くすべきで、もしも国に一旦緩急があれば、義勇心を持って皇国のために戦って永遠に続く天皇家の盛運のために力を尽くさなければならない」となっていて、全ては絶対主義的天皇制を前提としているものです。
 
 稲田防衛相は8日の参議院予算委で、社民党の福島瑞穂議員の質問に対して、「教育勅語の精神である親孝行など、核の部分は取り戻すべきだと考えており、道義国家を目指すべきだという考えに変わりはない」と繰り返しましたが、教育勅語が新憲法の理念に全く反するものであることは言うまでもなく、「それを現代に生かしたい」などというのはあまりにも浅はかで、時代錯誤も甚だしいものです。そしてわざわざ徳目の原典をそこに求めているところに明らかな作為が感じられます。
 
 それについて共産党の志位委員長は記者会見で、「現在にも通用する徳目が書かれていると言って、教育勅語を肯定する議論があるが、教育勅語の本質を全く知らない無理解から生まれているものだ。全部の徳目の結論は、いったん事が起これば、天皇のために命を投げ出すという究極の命題につながっている」と指摘しました。
 稲田氏、安倍氏ら日本会議系の人たちは、その点をこそ「拳拳服膺」すべきです。
※ 教育勅語に出てくる言葉   
 しんぶん赤旗の記事を2本紹介します。
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稲田防衛相の教育勅語称賛 会見で志位氏、大臣の資質問われる
本質は「天皇のため命投げ出せ」
しんぶん赤旗  2017年3月10日
 日本共産党の志位和夫委員長は9日、国会内で記者会見し、稲田朋美防衛相が、教育勅語について「その精神を取り戻すべきだ」などと称賛したことについて問われ、戦後まもなく衆院では排除決議、参院では失効決議を上げた事実を無視するもので「防衛相としての資質が問われる問題として、ただしていかないといけない」と述べました。
 
 志位氏は、教育勅語の一部の「徳目」を切り取り、現代にも通じるものとして肯定する議論は「教育勅語の本質を全く知らないものだ」と指摘しました。
 志位氏は、教育勅語の一連の「徳目」は、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」(重大事態があれば天皇のために命を投げ出せ)という命題につながり、若者を戦争に駆り立てたと強調。「衆参両院で決議が上がった際にも、“教育勅語にもよいところがある”とする“部分的真理論”が議論になったが、提案者によってそれは否定された。教育勅語を称賛するなど、日本国憲法のもとでは絶対に許されない」と述べました。
 そのうえで、志位氏は「部分的にも真理があるなどといった認識は、絶対に日本国憲法の下で許されないもので、衆参両院の失効決議を全く無視するものだ。そうしたことを、防衛大臣が口にするのは、大臣としての資質が問われる問題だ」と述べ、稲田大臣を追及していく考えを示しました。
 
 
教育勅語、国民主権と相いれず 参院委で吉良氏 政府の認識問う
しんぶん赤旗  2017年3月10日
 戦前の軍国主義教育の支柱となった教育勅語を教え込む森友学園の教育や勅語を肯定する稲田朋美防衛相の発言が問題になる中、日本共産党の吉良よし子議員は9日参院文教科学委員会で、政府の認識を問いました。
 
 吉良氏は、教育勅語をめぐっては、1948年に衆院で「排除」、参院でも「失効確認」の決議をあげたと指摘。「いまの学校等でも、教育勅語を指導原理とした教育はあってはならない」とただしました。
 松野博一文科相は「法制上の効力は喪失している」とし、「教育勅語を国の教育の唯一の根本とするような指導は不適切だ」と答弁しました。
 
 吉良氏は、46年10月にも教育勅語を「今後は読まないことにする」とした文部次官通牒(つうちょう)が出されたと紹介。勅語が掲げる「徳目」は「重大事態があれば天皇のために命を投げ出せ」という結論につながり、子どもたちを戦場に送る役割を果たしたと語りました。
 吉良氏は、勅語が天皇を主語とし国民を「臣民(君主に支配される人民)」と呼ぶなど、国民主権とは相いれないと指摘。「戦前の痛苦の反省から生まれた憲法のもとで、教育勅語が失効したのは当然だ」と述べ、現憲法のもとで基本的人権を尊重した教育を守り進めることが重要だと強調しました。