2017年3月10日金曜日

共謀罪は「合意」を処罰するもの 金田法相テロを定義出来ず

 参院予算委での共謀罪についての審議で政府がこれまで「合意に加えて準備行為があって初めて処罰するもの」としてきたのはゴマカシで、「合意」を処罰するものであることを法相が初めて認めました。そして「合意」と「準備行為」に何が該当するかは警察の判断次第であることも明らかになりました。
 
 また衆院予算委では、条文に新たに挿入された「テロ」について、2005年の審議で、宗教や政治団体が「純粋な精神的な利益のみを目的として犯罪を行う場合」(テロ)は国際組織犯罪防止条約が定める組織的犯罪集団に当たらないとしてテロを除外したこととの整合性がないことや、金田法相のテロについての説明は秘密保護法が定義するテロとも整合せず、時の政権によっていくらでも処罰対象を広げられことも明らかになりました。
 
 しんぶん赤旗の二つの記事を紹介します。
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共謀罪 「合意」を処罰 参院委 仁比氏追及に法相認める
しんぶん赤旗 2017年3月9日
 金田勝年法相は8日の参院予算委員会で、政府が「テロ等準備罪」と呼ぶ「共謀罪」法案について「法案が処罰対象とするのは合意だ」との日本共産党の仁比聡平議員の指摘に対し「準備行為を伴う形で合意を処罰することは事実だ」と述べました。「共謀罪」法案が「合意」を処罰するものであることを法相が初めて認めたものです。
 
 同法案を、「合意に加えて準備行為があって初めて処罰するもの」で「従来の共謀罪とは別物だ」としてきた政府の説明はごまかしで、その本質が合意=内心の処罰にあることが大臣答弁によって明確になりました。
 さらに、この日の仁比氏の質問で、「合意」と「準備行為」に何が該当するかは警察の判断次第であることも浮き彫りになりました。
 
 金田法相は「合意」について、コミュニケーションツール(意思疎通の手段)は問わず、メールやライン(無料通信アプリ)でも成立するとの見解を示しています。これについて仁比氏は「ラインの『既読スルー』(開封し読んだメッセージに返信せず、放置すること)でも『合意』に当たるのではないか」とただしました。
 金田法相は「捜査の上で、慎重に慎重を期して対応する」として、判断するのは捜査機関だと認めました
 
 仁比氏は、「準備行為」の例に「下見」が示されていることに関連し、「犯罪の下見と散歩の違いは何か」と追及。金田法相は「目的だ」と答えました。
 仁比氏は、二つの行為は外見に違いがなく、内心で区別するしかないことから、警察が行為の目的を疑うことになると強調。「庭先の桜をのぞき込んだら、警察官から職務質問を受けるというような息苦しい社会になってしまう」と指摘し、「憲法が厳しく要求する罪刑法定主義を根本から覆すものだ。法案の閣議決定・国会提出などありえない」と主張しました。
 
 
金田法相、テロの定義できず 衆院委 藤野議員追及で鮮明
しんぶん赤旗 2017年3月9日
 安倍政権が「テロ等準備罪」と言い換えて提出を狙う「共謀罪」法案の「テロ」の定義をめぐり、8日の衆院法務委員会で、過去の政府答弁とも法律上の定義とも異なる答弁が金田勝年法相から続出しています。
 
 安倍政権は、国際組織犯罪防止条約(TOC)を批准しなければテロに対応できないとし、そのためには国内で共謀罪を整備する必要があると主張しています。ところが、法案原案には「テロ」の文言がなく、批判を受けて慌てて「テロ」の文言を法文に挿入しました。
 日本共産党の藤野保史議員は、宗教や政治団体が「純粋な精神的な利益のみを目的として犯罪を行う場合」(テロ)はTOC条約が定める組織的犯罪集団に当たらないとした2005年の南野知恵子法相(当時)の答弁を紹介。同条約はテロをわざわざ対象から除外したものだとただしました。金田法相も「当時の理解とわたしの理解との間で違いはない」と述べざるを得ませんでした。
 一方で、金田法相は2月17日の藤野氏の質疑では「純粋に精神的な利益」だけを目的にテロが行われることは想定しがたいなどと、テロの範囲を広げるかのように、05年の南野法相の答弁とは異なる見解を示していました。
 
 藤野氏はさらに、秘密保護法がテロについて「政治上その他の主義主張に基づき」行われる活動と定義していることを指摘しました。その上で、民進党の逢坂誠二議員の質問に対して金田法相がテロの定義として「特定の主義主張に基づいて」行われる活動などと「政治上その他の主義主張」を「特定の」と言い換え、秘密保護法と異なる答弁をしていたことも示し、「どれが大臣の見解なのか」と迫りました。
 
 金田法相は「(テロには)現実に想定されるものとそうでないものとがある」などと発言。藤野氏は、時の政権によっていくらでも処罰対象を広げることが可能になると批判しました。