森喜朗氏が2000年4月5日、脳梗塞で緊急入院した小渕恵三首相の後を継ぐ形で首相に就任したとき、当時の自民党有力議員5人(森喜朗、青木幹雄、村上正邦、野中広務、亀井静香)が密室で談合して決めたという疑惑を持たれました。
2001年2月10日、ハワイ沖で日本の高校生の練習船「えひめ丸」が、米海軍の原子力潜水艦と衝突して沈没、日本人9名が死亡するという「えひめ丸事故」が発生した際、森氏はゴルフ場にいて、第3報が入るまで1時間半の間プレーを続けていました。そのことが危機管理意識上問題とされ、メディアから叩かれ国会でも追及されました。
ゴルフをしながら第3報を待っていたことがそんなにいけないことなのかという気がしますが、森氏の日頃の失言癖が災いした可能性があります。首相時代、失言が多すぎることを心配した家族からいろいろ注意されたという話が、本人の口から伝わっています。
そのせいかどうか2001年4月26日、森内閣は短命で終わりました。
まあ首相がどんな失言をしようともそれは内政問題なので、海外が厳しく糾弾することはありませんでしたが、いまは東京五輪大会組織委員会の会長なのでそうはいきません。
森会長は3日のJOC臨時評議員会で、女性理事を増やすという方針に対して「女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困る」「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」と発言したことが、海外のメディアを含めて問題視されています。
東京五輪大会組織委員会会長にあるまじき発言で、JOCの理事は25人でそのうち女性の理事は5人しかいないので、女性理事を増やすという方針を掲げたのは当然のことです。
LITERAの記事には、19年にJOCの理事会を非公表とする提案がされたとき、反対した4名は小谷実可子氏、高橋尚子氏、山崎浩子氏、山口香氏と、全員が女性の理事だったという記述があります。男性理事が何故反対しなかったのか不明ですが、そんな雰囲気であれば女性が次々と発言するのは当然であって、別に競争意識が強いからというようなことではありません。ここでも森氏の感覚はズレまくっています。
LITERAが「森喜朗会長がJOC会議で“女性差別”丸出し発言し国際問題化必至! ~ 」とする記事を出しました。
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森喜朗会長がJOC会議で“女性差別”丸出し発言し国際問題化必至! 山口香、高橋尚子ら女性理事が理事会密室化に反対したことへの腹いせか
LITERA 2021.02.03
東京五輪大会組織委員会の森喜朗会長が、とんでもない女性差別発言をおこなった。本日3日におこなわれた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、女性理事を増やすというJOCの方針に対して「女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困る」などと発言したのだ。
朝日新聞デジタルの報道によると、森会長は「これはテレビがあるからやりにくいんだが」と前置きしながら、「女性理事を選ぶというのは、日本は文科省がうるさくいうんですよね。だけど、女性がたくさん入っている理事会は、理事会の会議は時間がかかります」と発言。こうつづけたという。
「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」
「結局、あんまりいうと、新聞に書かれますけど、悪口言った、とかなりますけど、女性を必ずしも数を増やしていく場合は、発言の時間をある程度、規制をしていかないとなかなか終わらないで困るといって。そんなこともあります」
理事会で意見をだすことは理事として当然のことだが、それを「女は競争意識が強い」と批判すること自体、何を言っているのかという話だが、そもそもこの国では公的機関であれ企業であれ意思決定の場に女性はほとんど登用されておらず、先進国のなかでも最低レベルの状況。だいたい会議で長々と話す男性もいくらでもいるし、もし男性が会議で発言しないという実態があるのだとしたら、むしろそうした男性がオープンな議論を軽視し、裏や密室で談合のような形で物事を決める悪習に囚われているということだろう。にもかかわらず、「発言の時間をある程度、規制をしていかないと困る」とは、意思決定の場から女性を排除しようとする、まぎれもない女性差別発言だ。
当然、この発言が報じられると、Twitter上では批判が巻き起こった。
〈日本の男尊女卑の宿痾を煮詰めたような酷い性差別発言ですね。言葉を失います〉
〈ただでさえも日本はジェンダーギャップ指数が世界153か国中121位、要職における女性の比率が少なすぎる。そうした中で女性の発言を封じるようなことを言うのはまさに女性差別に拍車をかけるだけ。そんな人物が会長を務めるようなら東京五輪は中止でいい〉
〈この発言ひとつで更迭でしょ。普通〉
〈彼の女性蔑視発言は世界的に見ても日本の恥〉
〈「わきまえた(良い)女性」と「わきまえない(悪い)女性」を家父長的に勝手に線引きし、後者を処罰する。ミソジニー(⇒女性蔑視)の教科書の例文なのか?〉
いや、事はネットで批判されているというレベルの話ではない。オリンピック憲章(2019年版)では、性別や性的指向に基づく差別を受けないとする差別禁止事項を定めている。それが、よりにもよって開催国の組織委の代表が、JOCの会議という公の場で差別を平然と言い放ったのである。このままでは、東京五輪が国際社会から総スカンという事態になりかねない。実際、すでに米ニューヨーク・タイムズも森会長の発言を報じている。
JOC理事会の非公開・密室化を小谷実可子、高橋尚子、山崎浩子、山口香の女性理事4人だけが反対
しかも、この発言にはもうひとつ看過できないことがある。それはこの森会長の発言が、実際にJOCの女性理事たちの口を封じるための“攻撃”だった可能性があることだ。
現在、JOCの理事は25名おり、そのうち女性はたったの5名なのだが、2019年にJOCの理事会を非公表とすることを元柔道日本代表の山下泰裕会長が提案した際、反対した4名は小谷実可子氏、高橋尚子氏、山崎浩子氏、山口香氏と、全員が女性の理事だった。このメンバーについて、毎日新聞(2019年8月26日付)は〈普段の公開の理事会でも積極的に発言する顔ぶれだった〉と伝えている。
また、理事の山口氏は、最近も〈最近の世論調査では、国民の大半が五輪の中止・再延期を要望している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出や変異型への懸念もあり、「残念だけど、難しい」というのが冷静で、現実的な感覚なのだろう〉と率直な見解を示し、「絶対にやる」と言い張る政府やIOCの姿勢に対しても〈国民を置いてきぼりにした前のめりの姿勢〉〈政治とか経済とか、別の理由や思惑があるのだろうと冷めた目で見られていると思う〉〈世界で200万人超の死者が出ているという現実を前に、「五輪は人類がコロナに打ち勝った証し」という言葉がむなしく聞こえる。「勝たねばならぬ」の精神がここにも見え隠れする〉(朝日新聞1月26日付)と、じつに真っ当な指摘をおこなっていた。
ようするに、森会長は「理事会は公開すべき」と当然の意見を述べる女性理事たちを忌々しく思い、積極的に発言するという理事としての責務を果たしてきた女性理事たちを「女は競争意識が強い」などと攻撃・排除したかったのではないか。
それでなくても、森会長は2日にも「一番大きな問題は世論がどういうふうに五輪を考えているか」と、国民からあがる「五輪よりコロナ対策を」という世論までをも問題として挙げ、「我々は必ずやる。やるかやらないかではなく、どうやってやるのか、新しい五輪を考えよう」などと発言していた。
このような国民無視の「なにがなんでもやる」という森会長の発言に対しては、愛知県犬山市から聖火ランナーに任命されているロンドンブーツ1号2号の田村淳が「森会長のインタビュー記事などを見ててですね、オリンピックはコロナがどんな形であっても開催するという、ちょっと理解不能な発言をされていらっしゃいました」「人の気持ちを削ぐというか、僕はどうしても同意しかねる」「沿道に人を集める必要がないのであれば、タレントは身を引くべきだと感じました」とし、聖火ランナーを辞退すると公表している。
森会長が代表のトンネル財団「嘉納治五郎財団」がこっそり活動終了 数々の五輪疑惑をもみ消しか
だが、森会長には、こうした「五輪至上主義」というべき独善的な態度だけではなく、五輪を「私物化」しているという問題もある。五輪招致の買収関与の疑惑だ。
昨年3月、ロイター通信は組織委の理事である高橋治之・電通顧問が招致委員会から約8億9000万円相当の資金を受け取り、IOC委員らにロビー活動をおこなっていたと報じたが、その際、森会長が代表理事・会長を務める「一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」にも招致委から約1億4500万円が支払われていたと報道。つまり、この嘉納治五郎財団を介して買収工作がおこなわれた可能性があるのだ。
この問題については、昨年11月にトーマス・バッハ会長の来日時におこなわれた記者会見で、ロイターの記者が直接、森会長に「これは何のために使ったのか」とぶつけたのだが、「私は実際の経理や金の出し入れというのは直接担当しておらず、おっしゃったようなことがどこまでが正しいのか承知していない」などと返答。このロイターのスクープや会見でのやりとりをメディアは無視したため大きな問題となっていないが、森会長は招致買収疑惑の当事者なのである。
しかも、この疑惑の「嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」が、昨年12月末で活動を終了させていたことを1月26日にロイターが報道。東京都の担当者も「(同財団の)活動が終了することについては説明を受けていないし、知らなかった」と答えているように密かに活動終了していたわけだが、これはロイター記者に直接追及され、疑惑の深堀りを恐れ慌てて畳んだのではないか。
いや、森会長の疑惑はこれだけでは終わらない。それは、東京五輪招致、新国立競技場建設にともなう「神宮外苑地区の再開発」への暗躍だ。詳しくは既報を読んでいただきたいが(https://lite-ra.com/2016/10/post-2601.html)、五輪招致の背後では、神宮外苑地区の再開発をめぐって、森会長の親友とされ明治神宮と太いパイプを持つとされていた人物の関与が囁かれるなど、森会長が東京五輪開催による再開発に絡んだ建設利権を狙っているのではないかといわれてきた。森会長は2016年五輪招致の際から「国立競技場や岸記念体育館の建て替えが、政治家の私が(日本体育協会の)会長になった意味。東京に五輪が来れば、全部できる」と当時の石原慎太郎都知事に話し、東京への五輪招致を焚きつけたと報じられている。
新型コロナで国内のみならず世界がおかれている状況も無視して、「どんな苦難も乗り越えられる」(日刊スポーツ1月1日付インタビュー)などと精神論を振りかざし、「我々は必ずやる」と言い張る森会長だが、それも結局は東京五輪が開催され成功すれば無視されるであろう招致買収などの疑惑が、中止となれば追及がおこなわれる可能性もあるからだ。
その上、今回の女性差別発言──。この暴言は絶対に容認できるものではないし、実際、国際社会も黙っていないだろう。即刻、森氏は組織委会長を辞任すべきであり、同時に東京五輪開催についても中止を判断すべきだ。 (編集部)