5日の衆院予算委員会では菅首相の長男による総務省幹部への接待問題、東京五輪・パラ組織委員会の森会長の失言問題、さらにはコロナ感染者と濃厚接触した可能性を通知するスマートフォン・アプリの不具合等々の問題が続出しました。
長男の問題は言うまでもなく、長期に渡るアプリの不具合も政権の看板政策「デジタル改革」を傷つけるもので首相は窮地に立たされています。
首相の長男による総務省幹部への接待問題の概要は、6日の記事「長男の総務省幹部「違法接待」 菅首相は「プライバシーの問題」と」で紹介した通りです。
東京新聞は、総務省ナンバー2が2時間40分にわたり会食するというのは、相手が首相の長男だからではないかとして、菅氏が内閣官房長官時代に幹部官僚を威圧し統御してきたこととの関連に言及しました。官僚は「長男の背後に首相の影がちらついて断れなかったのではないか」という指摘です。
それは誰しもが思うことで、とても菅首相の言うように「長男とは別人格だから」というようなことで済まされるものではありません。
首相は自分の過去を見つめ直して、真摯に対応すべきです。
併せて時事通信の記事「問題続出、菅首相守勢 疑惑・失言・失態止まらず」を紹介します。
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<首相長男の接待問題>
「首相の息子だから…」また官僚の忖度か 官邸に人事握られ「首相の影ちらつき断れず」
東京新聞 2021年2月6日
総務省幹部が衛星放送関連会社に勤める菅義偉首相の長男から招かれ飲食店で接待を受けたとされる問題は、第2次安倍政権以降相次いで問題となった政権に対する官僚の忖度との見方が強まっている。首相は、長男とは別人格だとして「私が立ち入るべきではない」と距離を置こうとするが、野党は5日も、首相の息子だから総務省幹部が会食に応じたのではないかと問題視。官邸に人事権を握られた官僚による忖度が問題となった森友・加計学園問題などと同じ構図と見て、批判を強めている。(山口哲人)
◆衛星放送手掛ける会社から接待、手土産、タクシー券
4日発売の週刊文春は、総務省で次官に次ぐポストの谷脇康彦総務審議官ら幹部4人が昨年10~12月、子会社が許認可事業の衛星放送を手掛ける「東北新社」の役員や、社員である首相の長男から都内で接待を受け、帰宅時にはタクシー券や手土産を受け取っていたと報道した。
許認可事業を行う「利害関係者」から接待や金銭、物品の提供を受けることなどを禁じる国家公務員倫理規程に抵触する恐れがある。武田良太総務相は5日の衆院予算委員会で、人事院の倫理審査会による調査を踏まえて「しかるべき処分を行う」と明言した。
立憲民主党の森山浩行氏は、昨年12月は衛星放送の認定の更新時期だったと指摘。その話題が会食で出たかなどとただした。
◆「衛星放送の話が出たかどうかという記憶はない」
参加を認めた秋本芳徳情報流通行政局長は、会食には「誘いを受けた」とした上で、当時は「利害関係者ではないと認識していた」と釈明。衛星放送に関する話題が出たかについては「記憶はない」と語った。
森山氏は「国会議員が呼んでも来てくれるか分からない総務省ナンバー2が2時間40分(にわたり会食する)というのは、相手が首相の長男だからではないか。安倍晋三前首相の時のような権威主義や忖度にならないようにすべきだ」と。同じく立民の逢坂誠二氏は「総務省の皆さんはお気の毒だ」としつつ、首相が総務相当時に長男を秘書官にした点に触れ「首相の影がちらついて(会食を)断れないのでは」と追及した。
◆第1次安倍政権下の総務相だった菅首相
首相は「秘書官にしたのは10数年前。このところ、ほとんど会っていない」と反論。会食により「行政がゆがめられない(ようにする)のは当然」と述べた。
現首相で第1次安倍政権時の総務相という経歴が、不適切な問題を招いたとの見方も否定した。ただ4日の予算委で、東北新社について「(創業者の)社長は同じ秋田出身で、いろいろ応援してもらった」と答えており、今回も「忖度」との見方を消せないでいる。
同志社大の太田肇教授(組織論)は「官僚が首相周辺と接近している点で『モリカケ』と構図が似ている。官僚組織にメスを入れる必要がある」と話した。
問題続出、菅首相守勢 疑惑・失言・失態止まらず
時事通信 2021年02月06日
5日の衆院予算委員会。審議では菅義偉首相の長男による総務省幹部への接待問題、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の失言が引き続き取り上げられた。そこへ重なったのが、新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した可能性を通知するスマートフォン向けアプリの不具合。問題続出に菅義偉首相は守勢に回った。
「デジタル感度のある政権として、許していいミスといけないミスがある」。立憲民主党の泉健太政調会長は質疑で、コロナ対策のアプリ不具合という政権の失態を強い口調で叱責した。
問題のアプリは「COCOA(ココア)」。アンドロイド版では昨年9月下旬以降、感染者と接触しても通知を出さず、事実上機能していない状態だった。厚生労働省は3日になって事実を公表。ずさんな対応が批判の的になった。
この失態が首相にとって手痛いのは、政権の看板政策の一つが「デジタル改革」だからだ。デジタル化推進を掲げながら、足元でスマホアプリの不具合を「放置」したとも受け取れる事態に、首相は「大変申し訳ない。再び起きないようしっかり取り組む」と陳謝するしかなかった。
自身の長男をめぐる問題でも防戦に終始。衛星放送関連会社に勤務する長男が利害関係のある総務省幹部に接待を重ねていたとの報道について、立憲の森山浩行氏が「行政がゆがめられないようにしていただきたい」とくぎを刺すと、「当然だ。批判を素直に受け止める」と低姿勢で答えた。
森会長が謝罪・撤回した「女性蔑視」とも受け取れる発言に質問が及ぶと、首相は「あってはならない発言だ」などと繰り返し、問題意識は共有しているとの姿勢を強調してみせた。
与党幹部が緊急事態宣言中、深夜に東京・銀座のクラブを訪問していたことが発覚してから、わずか10日余り。日替わりのように次々と問題が持ち上がり、コロナ対応をめぐる論戦もかすみがちだ。会期150日の今国会は始まったばかり。自民党の若手議員は「いろいろ続いているのはまずい。しかし、特効薬はない」とため息をついた。