藤田医科大学(愛知県)は4日、川崎重工が開発した自動PCRシステムを大学敷地内に導入し、3月初めから本格運用開始の準備を進めています。同システムは、12・2mトレーラーに収納された移動式自動PCR検査システムで、ロボットを利用し1日2500検体の検査が可能です(フル稼働させれば1日4千検体が可能)。
同大学医学部の伊藤弘康教授は、同システムにより、PCR検査に伴う「感染リスクとミス防止という二重の精神的負担」から医療従事者が解放されるほか、「操作者1人、多めに見て2人で動かせて、1日2500件できるのでものすごい省力化」と語ります。いわゆる人為的ミスがなく正確にかつ迅速に結果が出せるのですから、その威力は絶大です。
しんぶん赤旗が報じました。
この件については、実はノーベル医学生理学賞を受賞した京都大の本庶佑教授が1月14日、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」にリモート出演し、その際にメーカー名は伏せましたが、「ある会社が既に1日2500件可能のPCR検査装置を、トレーラー搭載の移動式の検査システムとして完成させている」と明かしました。
そして「1台1億円ほどなので、1000億円で1日250万件が実現できる」として、検査で判明した無症状感染者を借り上げたホテルに滞在させ、食事を提供する隔離態勢を提案しました。そうすればホテルと飲食業界にもプラスになり、効率的に経済が回せるとして、「(この装置の採用を)1年前から繰り返し申し上げているが、いまだに厚労省の考えが変わっていないのは全く理解できない(要旨)」と語気を強めました。
このところ新型コロナの新規感染者数は下がっては来ましたが、全国規模では1200人/日程度、東京都では350人/日程度で下がり止まりを見せていて、まだまだ第2波の収束過程のレベルを大幅に上回っています。
そもそも第2波は収束しないままで第3波に突入したので基準にはならず、第1波の収束時の全国規模では20~30人/日程度、東京都では10人/日程度を基準にする必要があります。少なくともそのレベルに達しなければ直ぐに感染者数はリバウンドします。
政府は経済活動が必要だとしてGo Toなどの再開を焦っているようですが、十分に収束する前にそれをやれば「第3波」の状態が定常的に繰り返されることになります。
本庶佑教授が指摘する通り、「政府は業界支援という形で何兆円もばらまいていますが、その分を検査の徹底に使うほうが断然コスト的にも社会的にも有効」です。
本庶氏は、「日本はいまだに検査数が少ない。中国のように地域ごと全検査・隔離するのが理想だが、現実的に日本では難しい。だから、少なくとも感染したのではと思ったら即座に検査を受けられる体制を作るべき」と述べています。
そうする以外にリバウンドを防止しながら経済を回す方法はありません。政府は何故その決断が出来ないのでしょうか。
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全自動PCR本格運用へ 2人で1日2500回可能
大規模検査 問われる政治の決断
しんぶん赤旗 2021年2月21日
緊急事態宣言下で人と人との接触が制限され新型コロナウイルスの新規感染者が減少しつつあるもと、今度こそ市中の無症状感染者の発見、保護のためPCR検査を思い切って増やす必要があります。自動式PCR検査機の開発・実用化が進み、その技術的可能性が大きく広がっています。唾液の自主採取と合わせ大規模検査を可能とする大きな条件です。問われているのは政治の決断です。(土屋知紀、中祖寅一)
藤田医科大学(愛知県豊明市)は4日、川崎重工が開発した自動PCRシステムを大学敷地内に導入し試験運転を開始。3月初めから本格運用開始の準備を進めています。
同システムは、ロボットを利用した移動式自動PCR検査システムで、1日最大16時間の稼働想定で2500検体の検査が可能。専門家は「1000台あれば1日250万の検査が可能」と指摘します。
同大学医学部・先端臨床検査技術開発研究室の伊藤弘康教授は、同検査システム活用の意義について「医療従事者の負担軽減と大量検査を可能にすること」と指摘。「感染リスクとミス防止という二重の精神的負担」から医師や医療従事者が解放される意義は大きいと強調します。
さらに「大量検査には人の手作業では限界がある。1日2500となると1人ではとても無理。10人くらいは必要になる」とし、「このシステムでは操作者1人は必要だが、多めに見て2人で動かせる。1日2500できるのは省力化がものすごく進む」と語ります。
自動PCRシステムは、港湾用の40フィートコンテナの中に、新型コロナウイルスのPCR検査に必要な機能をすべて盛り込んだもの。唾液検体・咽頭ぬぐい液のどちらにも対応可能で、唾液については遠心分離機能も備えすぐに検査できます。
検体を採取した後、判定を出すまで現状では、通常210分かかるところ最短80分ですみます。コンテナに入っているため移動が可能で、必要な場所に機動的にセットできるのが大きな特徴です。
伊藤教授は「イベント会場の前に運び、開会1時間半前に検査を受け、結果を見てイベント参加することも可能になる。クラスターが発生したところに運び、すぐに検査できる」と述べます。
感染拡大地域に運び、地域の居住者・在勤者に集中的な面的検査を行い、高齢者施設や医療機関の近くで職員、入所者の社会的検査を機動的に行うこともできます。
時短・正確・省力 全自動PCR 広がる可能性
通常のPCR検査では、96検体をまとめて容器に入れ、40~90度に温度を上げ下げし、DNAを増幅させるやり方が主流といいます。これに対し川崎重工はシスメックス社と共同で、8検体ごとに検査できる方式を開発。8検体集まれば検査開始することで待ち時間を短縮し、検体数を少なくすることで温度の上げ下げの時間短縮もはかっています。
「正確だが時間がかかる」ことはPCR検査の「弱点」の一つでしたが、検査・判定に80分という時間短縮で検査の可能性は広がっています。
「ほとんどミスなし」
また「一度に検査する検体数を少なくしたことで、温度むらを少なくして検査精度を増すこともできる」(担当者)としています。
自動PCR検査システムの実証実験を行っている藤田医科大学の伊藤教授は「実際に本物の検体を扱ってみて、思ったより精度はよい。結果から、人がやるのと変わらないと感じている」と証言。他方「2500検体を1人でやるとなると必ずエラーが出る。全自動ロボットの場合、今のところほとんどミスがない」と述べます。
PCR検査を増やすには、検体採取と検査に必要な「マンパワーの確保」が検査拡大への大きな課題となってきました。
唾液検査により検体の自主採取が可能となることで、鼻ぬぐいの場合避けられないウイルス曝露(ばくろ)の危険を回避すると同時に、マンパワーを省力化できます。ここに全自動PCR機が加わり、検査に必要なマンパワーと感染リスクを二重に少なくすることができます。大量検査への大きな可能性が開かれています。
小型の検査機も普及
このほかさまざまなメーカーが小型の全自動PCR検査装置を開発・普及しています。
東京都立川市の立川相互病院でもこのほど全自動検査装置を導入しました。
同病院ではこれまで、患者の新型コロナウイルスの感染状況の確認を検査会社に外注していました。しかし検査結果が出るまで2日ほど必要なので、全自動PCR検査装置の導入を決断。同病院の増子基志(ますこ・もとし)事務長は「全自動装置のおかげで、1時間30分で結果が分かるようになりました。今は3台の稼働で1日18検体の検査が可能です」と話します。
一般病床に入院する時、無症状の人でも感染している可能性があるため、緊急入院の患者に必要時に検査しています。
検査方法は、救急外来の入り口で検体を採取し、1時間30分後に検査結果が判明したら入院するという流れです。
増子さんは「機器のメンテナンスや検体の精度管理は必要ですが、操作は扱いやすい」と話します。
他方、一度に検査できる検体数が限られているため、本来なら短時間で大量に検査できる体制が望ましいと指摘します。そして国に対し「病院内の全ての職員に週1回など定期的に検査できる環境をぜひ実現してほしい」と語っています。