2021年2月26日金曜日

Go To再開に舵切る半狂乱政権(植草氏)/Go To再開はあり得ない(上氏)

 一部の地域で緊急事態宣言の早期終了が目指される中で、全国で停止中の観光支援事業「Go To トラベル」をめぐり、再開する場合には1人1泊2万円の補助上限を減額する案などが政府内で浮上していると報じられました。

 目下の状況は、単に接触回数の総量が減じた反映として新型コロナの新規感染者数減じただけで、その下げ止まりのレベルはまだ非常に高いので、接触回数が増えれば直ちに新規感染者は増勢に転じます。
 国は経済活動再開を狙っていますが、そのためのPCR検査拡充などの措置は何も取っていません。それでは経済活動を行いながら新規コロナを抑制することなど出来よう筈がありません。どこまで愚かなのでしょうか。
 植草一秀氏が「感染拡大推進に舵切り替える半狂乱政権」とするブログ記事を出しました。
 日刊ゲンダイも「上昌広氏『Go To再開はあり得ない』断言 夏・冬に感染拡大」とする記事を出したので併せて紹介します。
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感染拡大推進に舵切り替える半狂乱政権
                植草一秀の「知られざる真実」 2021年2月24日
菅内閣の基本原則は「後手後手、小出し、右往左往」である。
コロナ対策の後手後手対応は安倍内閣から引き継いだもの。
昨年1月にコロナ感染が重大視された時点から、対応は後手後手に終始した。
昨年1月23日に中国・武漢市が封鎖された。その翌日に、安倍首相は在中国日本大使館HPを通じて、中国国民に対して春節の休みを利用しての日本訪問を呼びかけた。
3月24日に東京五輪の延期が正式決定されるまで、安倍内閣は東京五輪の昨年7月開催を目指していた。国民の命より五輪を優先したのだ。これが「後手後手対応」の主因だった。

コロナ対策では不完全対応を続けて今日に至る。
コロナ収束に成功した国は、感染初期に感染拡大の封殺策を採用した。感染拡大封殺を実現するには強い措置が必要だ。全数に対する検査も必要になる。
強い措置は経済活動に打撃を与えるが、長い目で見れば、断固とした対応で感染拡大を封殺してしまうことが得策である。
台湾やニュージーランド、オーストラリアがこの手法で成功を収めた。

日本の対応は「小出し」の連続。
PCR検査は1回2000円で可能なのだから、1億回実施しても2000億円。10億回の予算を確保しても2兆円だ。
Go Toに27兆円もの血税を投入する余裕があるなら、そのまえに検査を拡充するべきだ。
検査で陽性者を特定し、この陽性者が感染を拡大させないように対応することが重要なのだ。
最悪の政策がGo Toだ。Go Toは人の移動を拡大させる。人々の会食機会を激増させる。
感染拡大の原因にならないわけがない。
政府はGo Toで確認された感染者数が少ないと説明するが、すべての陽性者にGo To利用の有無を尋ねていない。
政府はGo Toトラベル利用者が延べ人数で8000万人超だと説明しているが、このなかでコロナ陽性者数が300人以下であるわけがない。
また、延べ人数で8000万人超と説明すると、圧倒的多数の国民がGo Toトラベルを利用したように見えるが、多数回利用している人が多数存在する。
重複分を除外した計数を発表しなければ実態が分からない。

人の移動と感染拡大には明瞭な因果関係がある。
人の移動指数変化と新規陽性者数変化に3週間のタイムラグがある。
この要因とグローバルな感染拡大波動が合わさり、日本の感染拡大波動が形成される。
昨年春の流行では、人の移動がピークを付けたのが3月20日。
「ロックダウン」の可能性が示されて、人々の行動が急激に変化した。
人の移動がボトムを記録したのが5月5日。
3週間後の5月25日に緊急事態宣言が解除されたが、このときには既に人の移動が増加し始めていた。
7月、8月に感染が拡大し、新規陽性者数は8月7日にピークを記録した。このなかで安倍内閣はGo Toトラブル事業を本格推進した。
11月に入って、感染拡大が鮮明になった。
しかし、菅義偉首相は12月28日までGo Toを全国規模で停止しなかった。その結果として感染爆発が生じた。
日本国民は状況の悪化を認識して、11月3連休の11月21日以降、行動抑制を強めた。
その結果として、新規陽性者数は1月8日をピークに減少に転じた。
世界の感染拡大波動と同一の波動が形成されている。
人の移動は12月31日にボトムを記録したが、その水準は昨年5月5日の水準よりはかなり高い。
また、2月中旬以降、人の移動は目に見えて再拡大に転じている。
これから4月にかけて人の移動が拡大する時期にさしかかる。
誤ったメッセージが示されれば、4月から5月にかけて感染第4波が発生するリスクが生じる。
菅内閣がGo To再開を検討し始めたと報じられている。究極の「右往左往政策」だ。
Go To再開検討があり得ないことを確認しなければならない。

「UIチャンネル」第380回放送、鳩山元首相との対談がアップされております。
https://bit.ly/37cW7Bs ぜひご高覧賜りたい。
            (以下は有料ブログのため非公開)


上昌広氏「Go To再開はあり得ない」断言 夏・冬に感染拡大
                          日刊ゲンダイ 2021/02/23
 新型コロナウイルスのワクチン接種がようやく始まったばかりで、PCR検査態勢の拡充もままならない。新規陽性者は減りつつあるものの、政府や東京都が「下げ止まり傾向にある」「予断を許さない状況」などと注意喚起をしている中、やや気が早いのではないか。
 新型コロナの感染拡大に伴い全国で停止中の観光支援事業「Go To トラベル」をめぐり、再開する場合には1人1泊2万円の補助上限を減額する案が政府内で浮上している、と報じられたことだ。
 トラベル事業は旅行代金の35%を割り引き、15%分は買い物などに使える地域共通クーポンとして利用者に配る。補助額の上限は1人1泊2万円だが、政府内では上限を1万円に見直し、さらに段階的に引き下げる案や、5000円に大幅減額しつつ期間を秋から年末まで延長する案が出ているという。
 オーストラリアや台湾のように、新型コロナが封じ込められている状況であれば、「Go To トラベル」を再開しても構わないだろうが、日本医師会の中川俊男会長は昨年、「Go To トラベル」が新型コロナが全国に感染拡大する「きっかけになったことは間違いない」と断じていた。今、慌てて始める必要があるのか。そもそも「減額」云々の問題ではないのだ。少しばかり落ち着いてきたからとはいえ、見切り発車で「Go To トラベル」を再開すれば昨夏の二の舞になりかねない。
 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏がこう言う。
新型コロナウイルスの特徴は夏と冬に流行するということ。昨年の世界の感染状況を見ても明らかです。仮に今、『Go To』を始めるとすると、流行する時期にわざわざ感染拡大を増やすことになる。変異株も出始めている中、きちんとした議論をせずに再開するというのはあり得ない話でしょう」
 感染拡大のスピードが緩やかになった今こそ、自宅療養を強いられる感染者が増えないよう医療施設や設備を拡充したり、効率的なワクチン接種の在り方について計画を整えたりするべきだろう。何よりも、多額の税金を投じるのであれば、旅行や飲食業などに限定せず、国民一律支給の「定額給付金」などで支援する方が世論の理解も得られるはずだ。