2021年2月12日金曜日

政府が関わる会議では都合のいい結論が出されるという茶番

 政府の諮問委員会などは政府(省庁)が委員を選定するので、政府の意向に沿う決定がなされるようなメンバー構成になります。いわゆる出来レースなのですが、そこで承認されれば政府は「国民の意見を聞いた」あるいは「専門家の意見を聞いた」と公言できるわけです。

 かつて有識者会議や諮問員会のメンバーを経験した三枝成彰氏が、「そこには本当の意味での自由な議論はなく、すべて結論ありきだった」と明かしました。政府は少なくとも数十年来それでやってきたわけです。
 三枝成彰氏のコラム「政府が関わる会議には都合のいい結論が…そんなのは茶番だ」を紹介します。

 そうはいってもテーマによっては会議が紛糾し、政府提案に反対が多いこともあります。しかし官僚はその場合でも自分たちの考えている方向に結論を出す手立てを考えています。
 子供だましのデタラメというしかありませんが、座長を抑えていればそれが出来るという見本がつい最近、感染症法改定案の審議でありました。脇田座長は国立感染症研究所の所長で公務員なのでそういうことが出来たのでした。
 しんぶん赤旗の記事を併せて紹介します。
 関連記事
  (1月31日)菅政権がコロナ専門部会の議事録を隠蔽 刑事罰に「専門も賛成」と大うそ
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
三枝成彰の中高年革命
政府が関わる会議には都合のいい結論が…そんなのは茶番だ
                          日刊ゲンダイ 2021/02/06
 菅総理が緊急事態宣言の解除の1カ月延長を決めた。政府は今回の延長について、諮問委員会を開いて検討を行い、決定したという。
 もっとも政府が関わる会議は、すべて事前に国にとって都合のいい結論が用意されていると思ったほうがいい「広く国民一般の意見を聞いた」という既成事実が欲しいだけなのだ。会議が開かれる前に、役人はすでにその後の対応に向けて動き出している。
 あくまで私の想像だが、今回の会議も、形だけのものだったのだろう。そこには本当の意味での自由な議論などない。すべては結論ありきの茶番ではないか。
 先日、議事録がすっぱ抜かれたコロナ感染症法の改正をめぐる厚労省の専門部会を見ても、そのことは明らかだ。入院を拒否した感染者への罰則を設けるのに賛成した委員は18人中わずか3人。残る8人が反対、慎重論が3人だったにもかかわらず、部会長(国立感染症研究所の脇田隆字氏)による「提案された方針でよしとする」という結論で打ち切られたという。
 だいたい有識者会議の議長は、政府と同じ意見を持つ人が選ばれるものだ。だから実際はただの司会進行役にすぎず、すべては出来レースなのである。政府はただ、「この問題に関して各界の有識者の意見を聞いた」という事実を記録に残したいだけで、結論は会議が行われる前にすでに決めている
 つまり緊急事態宣言解除の延長は、会議の前に、政府や与野党のトップ、そして内閣府の高級官僚たちの腹のなかでは決まっていたということだ。委員会の議論にしても、政府が定めた“台本”にしたがって行われたとしか思えない。
 かつて私も、政府が設けた有識者会議や諮問委員会のメンバーに選ばれたことがあった。そういう会議には進行台本がある。議長には事前にそれが渡され、「当日はこの流れでお願いします」とクギを刺される
 きっと来年にでも、政府は「コロナ増税」を考えているだろう。そこでも結論ありきの茶番会議が開かれ、事前に用意した答えが発表されるに違いない。
 3・11の被災地支援のための復興特別所得税(2・1%)が、沖縄の道路建設など本来の目的以外に使われていたという事実をみな忘れてはいないか? 近い将来にも同じことが起こる可能性が高い。昨年の10万円給付も財源は税金だ。政府はきっとその穴埋めに増税をするだろう。
 最近の株の値上がりも、低い金利によって金持ちが売り買いを重ねているから起きていることで、世界にはお金が余っている。だが、本当に困っている人たちにお金は回ってこない。
 コロナで困窮している人にお金を配るのは賛成だ。だが、返済の義務のある貸し付けはいけない。感染の影響で苦しむ人にさらなる借金を背負わせ、搾り取った税金をコロナからの復興のためではなく、道路の整備や防衛費に使われてはたまらない。

三枝成彰 作曲家
1942年、兵庫県生まれ。東京芸大大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「狂おしき真夏の一日」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、映画「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「優駿ORACIÓN」など。2020年、文化功労者顕彰を受ける。


「罰則ありき」台本あった コロナ対応改定案 感染症部会
                         しんぶん赤旗 2021年2月3日
 新型コロナウイルス対応で、罰則を盛り込んだ感染症法改定案を議論した厚生科学審議会感染症部会で、委員の賛否のどちらが多数でも「早期の提出を指す」ことで議をまとめるシナリオが存在していたことが分かりました。立憲民主党の後藤祐一議員が1日の衆院内閣厚生労働委員会の連合審査で追及し、厚生労働省が認めました。
 厚労省の正林督章健康局長は、1月15日の同部会で委員の意見を聴取したあと国立感染症研究所所長の脇田隆字座長が取りまとめをする際の発言として、「賛成が多い場合」と「反対意見・修正意見が多い場合」の2案を用意していたことを認めました。賛成多数の場合は「部会としては、(略)概ね賛成できる」「早期の常会提出を目指して進めていただきたい」とし、反対・修正意見が多数でも「部会の意晃を反映できる部分と出来ない部分が  ある可能な部分にづいては対応早期の常会提出を目指していただき」などとしていたと答弁しました。
 後藤氏は「賛成だろう反対だろうが法案をそのまま通してくださいというシナリオだ」と批判しました。
 議事録によると、脇田座長は「早期の提出を目指して進めていただきたい」「意見を反映できるものとできないものが出てくる」などと議論をまとめています。田村憲久厚労相は改定案について、会で「おおむね了承をいただいた」としていまが、初めから結論ありきだった疑いが改めて浮き彫りになりました。