マッハ5(音速の5倍)前後で飛来する超音速ミサイルにマッハ1を超える程度の迎撃ミサイルを衝突させるには、飛来するミサイルの軌跡を想定し(衝突位置を決め)そこに向かって「予め」迎撃ミサイルを発射するしかありません。
飛来ミサイルと迎撃ミサイルがそれぞれの想定軌跡からわずかに逸脱しても、あるいは発射時刻乃至飛翔速度が僅かに想定と異なっても衝突はしません。
所詮イージスの迎撃確率はその程度のものなので、そんなものに大金(追加費用を含めると1兆円以上)を投じるのは米国の兵器商売の恰好の「カモ」でしかありません。
しかも米国防総省傘下のミサイル防衛庁が採用するよう防衛省に圧力をかけたロッキード・マーチン社製レーダー「SPY7」は、まだ試作品さえできていない「机上の製品」に過ぎず、何故それに決定したのか当時から疑問視されていました。
共産党の穀田恵二議員が確認したところによると、選定手続きが始まった18年2月から7月末までに防衛省職員と「業界関係者等」との接触回数は何と529回にも及んだということです。ただただ異常というしかありません。
しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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代替イージス“ロッキード社製採用せよ”米ミサイル庁長官 極秘来日
穀田氏暴露 防衛相 接触認める 本紙取材基に
しんぶん赤旗 2021年2月10日
陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策である「イージス・システム搭載艦」に搭載予定のレーダーに関し、米国防総省傘下のミサイル防衛庁が、米軍需企業最大手のロッキード・マーチン社製レーダーを採用するよう防衛省に圧力をかけていたことが明らかになりました。(⇒下掲「論戦ハイライト」)
日本共産党の穀田恵二議員が9日の衆院予算委員会で、本紙取材で得た証言を暴露。岸信夫防衛相はロッキード社製レーダーの選定を決定する1週間前の2018年7月23日に、グリーブス米ミサイル防衛庁長官が来日し、防衛省と接触していたことを認めました。
防衛省は18年2月にレーダー選定の手続きを開始し、6月に米ミサイル防衛庁とロッキード社から「SPY7」、ミサイル防衛庁から「SPY6」(米軍需企業レイセオン製)の提案を受領。7月30日に「SPY7」が選定されましたが、SPY7は試作品さえできておらず、なぜ選定されたのか、当時から疑問視されていました。
穀田氏は、本紙の取材で防衛省元幹部が「レーダー選定の直前に、ミサイル防衛庁長官が来日して防衛省を訪れ、ロッキード社を選ぶよう圧力をかけた。当時の防衛副大臣も認めている」と証言したことをぶつけ、追及。岸防衛相は「(18年)7月23日にグリーブス米ミサイル防衛庁長官が来日し、西田安範整備計画局長(当時)らと面会したのは事実だ」と認めました。一方、SPY7を採用するよう圧力をかけた「事実はない」と否定しました。
さらに、穀田氏は「イージス・アショア」の構成品選定に関わった防衛省職員と「業界関係者等」との接触記録を記した「接触報告一覧表」を示し、選定手続きが始まった18年2月から7月末までの接触回数を質問。岸防衛相は「総数529回の接触を確認している」と答弁しました。
穀田氏は「500を上回るのは驚くべき数字だ」と指摘。同資料は接触した相手の会社名や氏名、接触理由などが黒塗りで隠されているものの、レーダー提案者はミサイル防衛庁とロッキード社のみだと指摘しました。
穀田氏は、元防衛省幹部がSPY7の不透明な選定過程から「第2のロッキード事件になりかねない」と警告していると指摘。接触記録など一切の資料の国会提出を要求。「イージス・システム搭載艦」の計画中止を強く求めました。
論戦ハイライト
イージス・システム搭載艦の導入 米政府・軍需企業圧力で血税1兆円
穀田議員追及で鮮明
しんぶん赤旗 2021年2月10日
コロナ禍のもと国民の命と暮らしが脅かされ、財政が逼迫(ひっぱく)する中、1兆円もの高額兵器「イージス・システム搭載艦」を導入―。菅政権の閣議決定の背景に、米ミサイル防衛庁と、世界最大の軍需企業ロッキード・マーチン社の猛烈な圧力があったことが、9日の衆院予算委員会での日本共産党の穀田恵二議員の質問で浮かび上がりました。
2017年12月、安倍前政権はトランプ米政権の「武器爆買い」要求に応じ、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を閣議決定。しかし、住民の強い反対と防衛省のずさんな計画で配備断念に追い込まれます。ところが菅政権は昨年12月、ロッキード社と契約したSPY7レーダーなど関連システムを解約せず、同システムを搭載するための「イージス・システム搭載艦」導入を決定したのです。
導入費用は陸上イージスの4000億円を大きく上回る5000億円以上。穀田氏は、維持費など追加費用を含めれば「1兆円を超す可能性がある」との元防衛政務官のツイッターをあげ、「天文学的な数字になる」と批判しました。
根拠は示さず
重大なのは、SPY7は試作品さえ完成しておらず、「カタログしかないようなもの」(穀田議員)です。
一方、もう一つのレーダー候補だったレイセオン社製のSPY6はすでに米海軍が採用を決定し、生産段階にありました。それなのに、なぜSPY7が選ばれたのか ―。穀田氏の追及に岸信夫防衛相は、「選定プロセスでより高い評価を得た」と述べたものの、具体的な根拠は一切、示しませんでした。
穀田氏は、自衛隊の元幹部からも「防衛省のレーダー選定はずさんだ」「国民の血税をつぎ込む以上、選定根拠を公表すべきだ」と批判が上がっていると追及しました。
いったい、何があったのか。穀田氏は本紙取材で得た防衛省元幹部の、次のような証言を指摘し、事実関係をただしました。
「(レイセオン社に米海軍次期レーダーの市場を奪われ)巻き返しを図るロッキード社が、米ミサイル防衛庁を通じて、猛烈な圧力を(日本に)かけていた」「レーダー選定の直前に、ミサイル防衛庁長官が来日して防衛省を訪れ、ロッキード社を選ぶよう圧力をかけた。そのことは当時の防衛副大臣も認めている」
529回もの接触
こうしたやりとりがあったのは2018年7月です。岸防衛相はミサイル防衛庁のグリーブス長官が同年7月23日に来日し、防衛省の西田安範整備計画局長(当時)が面会したことを認めました。SPY7が選定されたのは、その1週間後である7月30日です。
さらに、防衛省の関係部局が、レーダー選定期間の18年2月から7月までに6カ月間で、「業界関係者等」と529回も接触したことを明らかにしました。連日、数回におよぶペースです。個人名はすべて黒塗りですが、ほぼすべてがロッキード社や米政府(ミサイル防衛庁)関係者だとみられます。
穀田氏は接触の実態をすべて明らかにするよう求めるとともに、米国を潤すための「イージス・システム搭載艦」の導入計画をただちに中止し、その予算をコロナ対策に回すよう求めました。
「イージス・システム搭載艦」をめぐる経緯
17年12月 安倍政権が陸上イージスの導入を閣議決定
18年 2月 陸上イージスの構成品選定を開始
18年 7月 ロッキード社のレーダーを選定
19年10月 防衛省がロッキード社と構成品購入を契約
20年 6月 陸上イージスの配備計画を撤回
20年12月 菅政権が「イージス・システム搭載艦」導入を閣議決定