菅首相の長男が勤める放送事業会社による総務省幹部の接待問題で、市民団体「税金私物化を許さない市民の会」が贈賄容疑で長男を、収賄容疑で同省幹部をそれぞれ東京地検に告発することが22日、分かりました、。
若狭勝弁護士によれば、「贈収賄罪が成立する要件の一つに、賄賂の授受があります。現金だけでなく接待などの会食も含まれます。官僚の場合、その額が50万円以上だったら贈収賄事件として立件が可能」ということであり、今回公表された13人の官僚が東北新社側から受けてきた飲食単価や土産代、タクシー代などを合計すると、その総額は60万円を超えます。
正剛氏が部長職にある東北新社とだけ官僚が頻繁に会うなどの特別待遇を受け、子会社であるCS局「囲碁・将棋チャンネル」は、同局だけがハイビジョンでなかったにもかかわらずCSの「業務認定」を受けるなど、総務省の業務を十分に歪めているので、告発されるのは当然です。
ただ自由裁量権を持つ検察は権力にはことのほか弱いので、どうなるか予断を許しませんが ・・・ 。
LITERAの記事を紹介します。
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菅首相の長男による総務省幹部接待は贈収賄だ! 見返りの便宜供与も次々…接待の録音データに収録されていた菅長男の意味深なセリフ
LITERA 2021.2.23
菅義偉首相の長男・菅正剛氏による総務省高級官僚接待問題が、「違法接待」どころか贈収賄の汚職事件の様相を呈してきた。
昨日22日、総務省は国会に報告書を提出したが、それによると、正剛氏や東北新社メディアサービスの木田由紀夫社長ら東北新社側と国家公務員倫理規程に違反する疑いがある会食をおこなっていた官僚は過去5年でなんと13人にもおよび、その回数は延べ39回にものぼることを公表したからだ。
その上、菅官邸で現在、内閣報道官を務めている山田真貴子氏も、総務省総務審議官時代の2019年11月6日に正剛氏らの接待を受け、飲食単価が1人あたり7万4203万円にもおよぶことがわかった。15日の衆院予算委員会では、総務省を通じて山田氏は「菅総理大臣の長男と会食した明確な記憶はない」と答えていたのに、実際には7万円を超える高級接待を受けていたのである。
総務省は、山田内閣広報官を除く総務省職員12人のうち倫理規定に違反する接待を受けていたとする11人について、早くて24日にも懲戒処分などにする方針だというが、当然ながら倫理規程違反による処分だけで済まされるような問題ではない。
指摘されてきたように、東北新社はBS・CS放送関連事業をおこない、総務省が認定する衛星基幹放送事業者であり、紛れもない利害関係者だが、今回公表された13人の官僚が東北新社側から受けてきた飲食単価や土産代、タクシー代などを合計すると、その総額は60万円を超える。この金額はあくまでも東北新社側や当人たちの「自己申告」に過ぎず、さらなる接待の事実が明らかになる可能性もあるが、現在判明している金額だけでも十分、贈収賄罪にあたる可能性がある。
実際、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、今回の報告書が出る以前、つまり接待の回数が4人の官僚の計12回しか明かされていなかった段階から、このように指摘していた。
「贈収賄罪が成立する要件の一つに、賄賂の授受があります。賄賂とは現金だけでなく、接待などの会食も含まれます。官僚の場合、その額が50万円以上だったら贈収賄事件として立件が可能と言われています。総務省が発表した接待の回数に加え、タクシー代も受け取っているので、金額面でクリアしている可能性があります」(毎日新聞21日付)
さらに、贈収賄罪が成立するカギになる「便宜供与」がおこなわれた形跡も濃厚だ。
たとえば、東北新社側と総務省官僚の接待は、2016年11月28日、秋本芳徳・総合通信基盤局総務課長(当時)が正剛氏ら東北新社側と会食していたのに加え、今回公表された報告書で、2016年12月14日にも当時の大臣官房審議官である吉田眞人氏も会食をおこなっていたことが明らかになった。ところが、東北新社はその立て続けにあった接待会食の直後である2017年1月24日、総務省に4K放送の事業者に認定を受けているのだ。
接待の目的はスターチャンネルの更新と新規参入か 菅氏長男の「うちがスロットを」というセリフの意味
さらに、問題なのは昨年12月だ。衛星放送の許認可を管轄する情報流通行政局のトップにのぼりつめた前出の秋本氏や、「次期事務次官」と目されていた総務省ナンバー2の谷脇康彦・総務審議官ら高級官僚4人がこの頃、東北新社側と会食を繰り返していたことがわかっているが、昨年12月という時期は、東北新社の子会社が手掛けるBS放送「スターチャンネル」が5年に1回の認定の更新を受ける直前と見事に重なるのである。
いや、12月はそれだけではない。昨年12月10日、秋本情報流通行政局長を正剛氏と東北新社メディアサービスの木田社長が接待した際の音声を文春デジタルが公開していたが、そこにはこんな会話も収録されていた。
正剛氏「BS、BS。BSの。スター(チャンネル)がスロット(を)返して」
木田氏「あぁ、新規の話? それ言ったってしょうがないよ。通っちゃってるもん」
正剛氏「うちがスロット……」
秋本氏「……じゃないって」
木田氏「俺たちが悪いんじゃなくて小林(史明衆院議員、元総務政務官)が悪いんだよ」
秋本氏「うん。そうだよ」
会話は、その後、BS新規参入の旗振り役である自民党の小林史明衆院議員の問題へと移り、総務省の秋本氏が「どっかで一敗地に塗れないと、全然勘違いのままいっちゃいますよねぇ」などと不満を述べるのだが、問題はやはり正剛氏と東北新社メディアサービスの木田社長が「スロット」をめぐってやりとりしていた部分だろう。
この「スロット」というのはBSの電波の帯域を示すものだが、近年は技術革新に伴い少ない帯域で放送が可能になっており、政府は既存業者の帯域を縮減させる一方で空いた帯域での新規参入を推進。実際、2019年9月には吉本興業の子会社など3事業者がBS放送の基幹放送に新たに認定されており、一方でスターチャンネルは昨年11月30日に帯域を縮減している。
とすれば、このやりとりは正剛氏と木田社長の連携プレーによる、東北新社へのスロット=帯域割り当ての陳情ではないのか。
まず、スターチャンネルがスロット=帯域が返上させられたという話を正剛氏が切り出し、木田社長がそれをたしなめるふりをする。そこで、正剛氏がそれを押し切るような形で、返上したんだから別のチャンネルを新規参入させてほしい、新たに空いた帯域=スロットを割り当ててほしいと要求する──。そんな作戦だったのではないか。
たしかに、新規参入で競争が厳しくなるなか、東北新社側がこうした思惑を持っていても不思議はない。実際、今回の報告書を見ると、吉本の子会社ら3事業者が認定を受けた2019年9月9日の直前である8〜9月初旬には、なんと5回もの接待が集中的に繰り広げられていたことが新たに判明している。
昨日の衆院予算委員会では、弁護士立ち会いでおこなわれたというヒアリングの場で正剛氏が「不適切な働きかけや行政を歪める行為はおこなっていない」と述べていることを総務省の原邦彰官房長が答弁し、武田良太総務相も「行政が歪められた事実は確認されていない」と言い張ったが、接待を受けていた総務省の調査結果で事実が明らかになるわけがない。むしろ、外形的事実は接待を受けて便宜を図ってきたという贈収賄の疑いが濃厚になるばかりだ。
山田真貴子内閣広報官も高額接待を受けた時期に、職務権限を使って東北新社を異例の業務認定
そして、もっとも重要なのは、これだけの接待を総務官僚たちが受け、便宜を図ったのではないかと見られている背景にあるのが、正剛氏が菅首相の長男であるという事実だ。
今回、総務省も違反を認めたかたちとなった国家公務員倫理規定は、大蔵省官僚が大手銀行や証券会社から「ノーパンしゃぶしゃぶ」店などでの会食やゴルフの接待を受けた見返りに便宜を図っていたことが発覚し、多数の逮捕者を出した「大蔵省接待汚職事件」をはじめ、国家公務員の不祥事が相次いだことから制定されたもので、ノーパンしゃぶしゃぶ接待は結果として大蔵省解体の要因となるほどの問題となった。これ以降、利害関係者が相手でなくてもたった一杯のコーヒーさえ奢られることを避けるなど、官僚の接待への警戒はかなり厳しくなっていた。
にもかかわらず、たった5年間のあいだに少なくとも39回にものぼる接待、しかも1回の1人あたりの単価が7万円を超えるような高級接待を、どうして総務省の官僚たちは受けてきたのか。それはどう考えても、総理大臣、あるいは次期総理候補と呼ばれると同時に官僚の人事権を一手に握ってきた菅氏の長男・所属企業が相手だったからだ。
現に、昨日の衆院予算委員会では、接待を受けてきた谷脇氏と吉田氏が、東北新社以外のほかの衛星放送事業者と同じような会食をしたことはないと答弁。東北新社だけが特別扱いを受けてきたのだ。
その上、菅首相は総務大臣時に正剛氏を大臣秘書官として登用しており、その関係を知らぬ者は省内にいない。さらに、菅氏は総務相として「ふるさと納税」制度やNHK改革をゴリ推しし、気に入らぬ官僚を左遷するなど強権性を発揮。その後、第二次安倍政権で官房長官となったあとも総務省に絶大な影響力を誇示・行使してきた。そんな菅首相の長男からの誘いを総務官僚が断ることなどできるわけがないだろう。
実際、正剛氏は東北新社で部長職にあるだけではなく同社の子会社であるCS局「囲碁・将棋チャンネル」を運営する株式会社囲碁将棋チャンネルの取締役も兼任しており、その「囲碁将棋チャンネル」の番組はハイビジョンではない標準テレビジョンであるにもかかわらず2018年に「東経110度CS放送に係る衛星基幹放送の業務認定」を総務省から受けている。この認定を判断する最高責任者の総務省情報流通行政局長の職にあったのは、今回、正剛氏らからの高額接待が明らかになった、あの山田真貴子・現内閣広報官だった。
この特別待遇と言うべき認定については、山田氏が圧力をかけ、無理やり認定をさせた可能性は高い。実際、当時から総務省内でも話題となり、「菅さんの案件だから特別待遇だったんだろう」という見方が流れていたという。
菅首相が使う総務省マフィアは行政を歪めるだけでなくメディアに圧力をかける力を持っている
ようするに、安倍晋三・前首相や昭恵氏が立場を利用して政治を私物化し、官僚が忖度して行政を歪めてきたのとまったく同じように、菅首相も「私物化」によって官僚による忖度を引き出し、行政を歪めてきたのだ。
しかも、問題なのは、菅首相の尖兵となっている総務省マフィアが、行政を歪め、菅首相の利権をアシストするだけでなく、メディアに直接、圧力をかける力をもっていることだ。
その象徴が、今回の報告書によって総務省総務審議官時代に高額接待を受けていたことが判明した山田真貴子内閣広報官だ。山田内閣広報官といえば、安倍政権下の2013年から2015年まで広報担当の首相秘書官を務めたあと総務省に戻っていたが、菅首相が新政権発足にともなって官邸に呼び戻した典型的な“菅の子飼い”官僚。そして、NHKに圧力をかけ、『ニュースウオッチ9』の有馬嘉男キャスターを降板に追い込んだ張本人とも目されている。
子飼い官僚として菅首相の長男に便宜を図ったのと同じように、現在は総務省出身という立場を内閣広報官として活用し、総務省を恐れるNHKに恫喝をかけ、キャスターを降板させるまで追い込む──。つまり、菅首相のもとで飼い慣らされた官僚が放送行政の私物化に動いた疑いだけではなく、メディアへの圧力というかたちでも発揮されていることがあらためて証明されたと言えるだろう。
ともかく、この問題は官僚の懲戒処分だけで終わらせられるような問題ではない。安倍政権下からつづく「私物化」という膿を、いまこそ出し切るべきときだ。(田部祥太)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。