2021年2月24日水曜日

首相長男の「パパ活」 首相はなぜ身内には“自助”を求めないのか?

 文春オンラインに「首相長男の『パパ活』 首相はなぜ身内には“自助”を求めないのか?」という記事が載りました。

 プチ鹿島氏による軽やかなタッチのもので、今注目されている首相の長男正剛氏は、見事にパパを活用している「本物の『パパ活」であるとしています。確かに「パパ活」の極致に達していると言えます。
 また記事ではそこまで言っていませんが、51歳で自己破産した菅氏の弟の菅秀介氏その後JR東日本の子会社に幹部として入社しやがて取締役に収まっているのは、「兄活」の最高の成功例とでも呼べるものです。
 肉親に甘いこと自体を直ちに非難は出来ませんが、それもケースバイケースで、首相の座にあって国民に「自助」を説く人間には全く整合しないという問題があります。
 もしも「常識」と「恥の感覚」を持っているならば、二度と偉そうに「自助」を説いたりは出来ない筈なのですが、どうなりますか
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菅義偉首相長男の「パパ活」から見える問題点 なぜ身内には“自助”を求めないのか?
                     プチ鹿島 文春オンライン 2021/02/23
 菅政権にスターが誕生した。菅長男である。
 思い起こせば安倍政権には昭恵夫人という「スター」がいた。いつも皆の想像をやすやすと超えてくる言動。政権が見せたくない部分すら開示してしまい、結果的に問題提起。
 それに比べて菅政権は地味だった。菅首相自身がなかなか顔を見せてくれないし語りかけてくれない。しかし菅長男の登場で一気に華やかになった。

高級官僚の違法接待、続く続報
 スターとは何か? 定義はいろいろあるだろうがここでは「目が離せない人」とする。
 父親の菅首相は鉄壁のガースーなどと言われていた。しかし首相になってからの答弁能力に「菅さんてこんなに喋れない人だったんだ」と少なくない人が今さら驚いた(私含む)。それまでの情報コントロールの巧みさだったのだろう。しかしその「努力」を長男があっという間に吹き飛ばす勢い。
「菅首相長男 高級官僚を違法接待」(『週刊文春』2月11日号)。ここから続報が相次いでいる。先日は接待時の音声まで公開されてしまった。
 菅長男は「囲碁将棋チャンネル」の取締役も兼ねているのに文春に詰将棋をやられているのだ。これもスターらしいチャーミングさである。

無職のバンドマンから大臣秘書官へ
 では菅首相が長男に何をしてきたかおさらいする。
総務大臣就任時(06年)、バンドマンで無職の長男を大臣秘書官として抜擢し、多数の総務官僚との接点を持たせた後、総務省の許認可先への就職を許した。》(『週刊文春』2月25日号)
 何がすごいって、この短い文章には菅首相の看板フレーズを長男がすべて殺しにかかっていることがわかる。
 菅首相がよく主張するのは、
「税金を投入するに値するのか」
「自助」
「既得権益を打破」
 である。ところが専門性の無い長男をいきなり大臣秘書官にしていた。これは「税金を投入するに値するのか」。
 日本学術会議にはあれだけ税金投入に厳しかったのに長男には職を与え、税金を投入。公私混同にしかみえない。これは「自助」ではない。国民に言っていることと違う。

長男がいるのは「既得権益」側
 そして菅首相の最大の売り「既得権益を打破」というフレーズ。ところが文春で報じられた総務省幹部と菅長男らの会話を聞くと菅長男は既得権益側であることがわかる。
 菅長男が衛星放送界への新規参入に熱心な自民党議員に関して話を向けると、総務省の秋本氏は「どっかで一敗地にまみれないと、勘違いのままいっちゃいますよねえ」と応じていた。
 一敗地にまみれるとは「再び立ち上がれないほどに、徹底的に打ち負かされる」(精選版 日本国語大辞典)という意味だ。
 つまり規制緩和を進める国会議員を苦々しく思う側に菅長男も入っていることが窺える。父親が掲げる規制改革と矛盾する。
 菅首相は今後「既得権益を打破、長男以外は!」と叫ばないといけない。ややこしい。

これこそ本当の「パパ活」では?
 ここであらためて菅長男(東北新社)の接待歴をみてみる。
 2016年の菅長男との会食以降、総務省は2018年に東北新社の子会社のCS放送業務を認定している。
 接待をするたびに電波行政が進む。「進め!電波少年」という番組があったが菅長男は進め電波中年なのである。放送業界のスターでもあった。
 なんで長男の思い通りになってしまうのか。父親が元総務大臣であり、現首相であり、意に沿わない官僚は飛ばしてきたという実績を官僚たちが長男の後ろに見ているのであろう。息子がパパを活用する。これこそ本当の「パパ活」ではないか。
 大事な見どころをもう1つ。何か問題が噴出したら、そのあとどんな振る舞いをするかで政権の本質や器量が見えてくる。
《総務省は19日、秋本芳徳情報流通行政局長と湯本博信官房審議官を20日付で官房付に異動させると発表した。事実上の更迭。》(共同通信)
 しかし武田総務相はこの人事について《重要法案の審議をお願いしなければならない中で、適材適所の配置として行うものだとも説明した。》(産経新聞)
 菅首相が官房長官を務めた安倍政権では公文書を廃棄したり、議事録が無いと言ってみたりおよそ「公」とは思えない振る舞いが続いたが、今回は人間すらも簡単にポイ捨てする扱い。それを適材適所と平然と言う怖さ。政権の性格をあらためて菅長男が可視化してくれた。スターだ。
 さて、これまで「長男」のことを書いてきたが重要なことを思い出した。昨年の月刊『文藝春秋』2020年12月号にこんな記事があった。
「破産した弟がなぜJR企業の役員に? 菅首相と慶應卒弟のJR“既得権益”」
実弟の菅秀介(ひですけ)氏(69)は、51歳で自己破産した直後にJR東日本の子会社に幹部として入社しているが、異例の入社を遂げた背景には菅首相と同社の蜜月関係があったことが、ノンフィクション作家・森功氏の取材で分かった。》(文春オンライン)
 長男だけでなく弟にも甘かった? ここでもズブズブ、既得権益?

森前会長後継選考で透明性を確保するよう申し入れた菅首相
 菅首相は東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の後継選考について透明性を確保するように組織委員会側に申し入れたと15日の国会で明かした。
 実は森喜朗後任騒動って菅首相に「透明性を確保するように」と言わせてしまうドッキリだったのかもしれない。ハッとしても遅い。ご自分も透明性やプロセスについて説明しなくてはいけない。なぜ身内には甘いのか
 菅長男の登場は衝撃的だ。私はスターについて「目が離せない人」としたが定義を加える。「それまでの常識をひっくり返す人」。
 そういえば菅長男が勤める東北新社の子会社には「スター・チャンネル」があったっけ。
 スター菅長男を接待してあれこれ聞いてみたくなった。(プチ鹿島)