2021年2月20日土曜日

新聞テレビが総務省接待疑惑を叩けない理由(田中龍作ジャーナル)

 首相の長男による総務省幹部接待疑惑は、写真あり、録音あり、官僚の証言もありで報道のネタに事欠きませんが、テレビのワイドショーなどでは殆ど取り上げません。

 田中龍作ジャーナルがその間の事情を明らかにしました。
 地上波の利用料は、競争入札になれば総額2千億~3千億は下らないのですが、既得権益的にテレビ局はその100分の1を少し上回るほどの金額で利用しています。それが可能なのは務省が地上波の新規参入を阻んでくれているためで、テレビ局にとっては有難い存在で頭が上がらないのだそうです。
 日本では新聞社テレビ局所有するクロスオーナーシップが認められているので、その恩恵に預かっている新聞社も同じ立場です
 日本のメディアが政権に従属的である背景にはそうした構造的な問題がありそうです。
 その点 東京新聞は他の大手紙とは一線を画しています。同紙の記事「忖度、虚偽答弁、再び?…菅首相長男接待問題に重なる“モリカケ”“桜”」を、併せて紹介します。
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新聞テレビが総務省接待疑惑を叩けない理由
                    田中龍作ジャーナル 2021年2月19日
 スガ首相の長男による総務省幹部接待疑惑はほぼ完全に詰んだ。長男正剛氏が許認可をめぐって役人に働きかける音声まで出てきたからだ。
 公務員倫理規定違反なんてものじゃない。検察がまともであれば、贈収賄で捜査に乗り出せる
 にもかかわらずテレビ局の報道はあまりに大人しい。日頃、有名人のスキャンダルであれば、ピー音を入れたりして賑やかに報じるのだが。
 テレビ局が総務省を叩けない最大の理由は、結果として、電波の使用料を超格安にしてくれているからだ。
 総務省は地上波の新規参入を阻んでくれている。有難い保護者なのである。当然、見返りはあるが。
 新規参入を許せば電波はオークションとなる。大蔵(現・財務)官僚出身の高橋洋一氏は、オークションとなれば、電波使用料は2千億~3千億は下らない、と見る。
 テレビ局は100分の1に近い数十分の1の値段で電波を使用しているのだ。総務省による規制のおかげで暴利が貪れるのである。
    【写真説明】総務省。 国交省を上回る巨大利権官庁との評判もある。=19日、
          霞ヶ関 撮影:田中龍作=

テレビ局の暴利をさらに貪る新聞社
 新聞はとりあえず接待疑惑のアウトラインをおさえているが、「国会答弁ベース」「文春報道ベース」に留まっている。独自取材で報道するのが恐いのだろう。
 新聞社もテレビ局同様、総務省による規制に守られているからだ。
 新聞社によるテレビ局の所有はクロスオーナーシップと呼ばれる。
 欧米の場合クロスオーナーシップは法律で禁じられている。情報の独占になるからだ。先進国でクロスオーナーシップが認められているのは日本だけだ。
 テレビ局が貪る暴利をさらに貪るのが新聞社である。
 日本最大の記者クラブが総務省にあり、記者さんたちは、電波がオークションにかけられないよう、クロスオーナーシップが禁じられないよう、懸命に見張っているのである。
 新聞テレビが、スガ首相の長男による総務省幹部接待疑惑を追及できるわけがないのだ。それを最もよく知っているのは、元総務大臣と総務官僚だ。
 「オークション掛けましょうか?」の一言で、新聞社、テレビ局の幹部は震えあがるだろう。
                  ~終わり~


忖度、虚偽答弁、再び?…菅首相長男接待問題に重なる「モリカケ」「桜」
                          東京新聞 2021年2月19日
 放送事業会社「東北新社」に勤務する菅義偉首相の長男と会食した総務省の秋本芳徳情報流通行政局長が18日、当日のやりとりとされる音声の一部を自分の声だと認めたことで、野党は「同社の事業が話題に上ったことはない」としてきた答弁は虚偽だとの見方を強めた。官僚や周囲が首相らに忖度した言動を重ね、事実と異なる国会答弁につながったとすれば、構図は安倍政権での「森友・加計学園」「桜を見る会」の問題と重なる。 (上野実輝彦、村上一樹)

◆「音声は自分、発言は記憶にない」
 「誰が考えても認められない」。18日の衆院予算委員会の理事会で、総務省側から報告を受けた立憲民主党の辻元清美氏は記者団に怒りの声を上げた。
 週刊文春電子版が昨年12月10日の会食時のものとして公開した音声には、首相長男や秋本氏らが「BS」「谷脇(康彦・総務審議官)」などと語る声が録音されていた。真偽確認を求めた野党に対する秋本氏の回答は「一部は自分の音声だが、業務に関する同席者の発言は記憶にない」と不自然なものだった。

◆総務省に強い影響力持つ菅氏
 会食問題では、これまでにも多くの疑問が浮上してきた。首相長男は昨年12月、秋本氏を含む総務省幹部3人と集中的に会食。この時期は東北新社の子会社が、総務省から衛星放送の事業認定の更新を受ける直前にあたり、野党は「放送行政がゆがめられたのではないか」と追及している。
 総務省の幹部が特定の事業者と会食を繰り返すのも異例だ。首相自身は「事実関係を全く承知していない」と繰り返すが、立民の森山浩行衆院議員は「幹部が来てくれるのは(誘ったのが)首相の長男だからではないか」と指摘する。
 背景には、首相と総務省の関係がある。首相は2006~07年に総務相を務め、12年からは官房長官として影響力を保持してきた。自著では「改革を実行するためには更迭も辞さない」などと、強力な人事権で官僚を従わせてきた手法をアピール。総務行政に詳しい与党議員は「息子から誘いがあれば、首相が頭に浮かぶのは当たり前だ」と語る。

◆強弁で押し切った前政権…今回は?
 森友学園問題では、政府が学園に国有地を格安で売却。首相だった安倍晋三氏の妻と学園が近い関係にあったことが理由と指摘された。だが、安倍氏は国会で「問題に関係していたら首相を辞める」と強弁。財務省は安倍氏を守るため、決裁文書を改ざんし、幹部は国会で事実と異なる答弁を140回近く行った。
 加計学園問題では、官僚らの忖度により、理事長が安倍氏の旧友だった学園の獣医学部新設が異例の速さで進んだのではないかと問題視された。桜を見る会の夕食会を巡っては、安倍氏が自ら会費の補塡ほてんなどを否定し続け、野党が「虚偽」と批判する首相答弁は100回以上に上った。
 今回は官僚らが菅首相の顔色をうかがい、事実と異なる答弁を重ねている可能性がある。自民党幹部は「公開された音声がすべて本物なら、大変なことになるかもしれない」と懸念した。