2021年2月23日火曜日

「N高政治部」 志位委員長の特別講義(2)

 志位委員長による「N高政治部」特別講義 紙上再現シリーズの2回目です
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「N高政治部」 志位委員長の特別講義(2)

自衛隊 日本の安全 どうする 平和の地域協力広げよう
                        しんぶん赤旗 2021年2月22日

 自衛隊は憲法違反という立場を取られていますが、災害などの時には自衛隊の助けは必要だと思います。今後、どのような位置づけで自衛隊は活動すべきだと思われますか。日本共産党は、自衛隊は憲法違反であり、「自衛隊がいなくても安心だ」と国民に思ってもらえるよう段階的解消を目標にしているとHP(ホームページ)で読みました。しかし、ただ単に「憲法違反だから」や「国際紛争には平和的解決をめざすべきだから」ということを言っているだけでは国民が安心することは不可能だと思います。実際に国民が安心と思えるために、何をすべきか具体策はあるのでしょうか。

国民多数の合意で、9条の理想にむけ一歩一歩、自衛隊の現実を変える
 志位 まず、自衛隊のそもそも的な位置づけについてのご質問についてお答えします。
 憲法9条には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と書いてあります。自衛隊はどうみてもこれは戦力ですね。ですからこれは、どうしても矛盾するわけです。
 この矛盾の解決方法は二つしかありません。一つは、自衛隊の現実にあわせて憲法9条を変えることです。もう一つは、憲法9条の理想にあわせて自衛隊の現実を変えることです。
 私たちは後者を選びたいと考えています。憲法9条は、恒久平和主義をとことん推し進めた世界でも先駆的な条項だと考えていますから。
 ただ、これは一挙にはできません。国民の多数の合意を得て、一歩一歩、憲法9条という理想に向けて現実を変えていく、このプロセスがかなり長く続くと考えています。
 その期間に、たとえば日本に対する主権侵害があった場合には、自衛隊を活用します。あるいは大きな災害があったときには、当然、自衛隊員のみなさんには頑張っていただきます。そういう期間には、私たちはこのように自衛隊を位置づけています。
 私たちは、自衛隊の憲法上の判断では、違憲という判断です。しかし、自衛隊員のみなさんが災害救援で頑張っている、汗を流していることには、私たちももちろん敬意をもって接しています。

米軍と自衛隊が海外で戦争する仕組み――安保法制をなくす
 志位 そのうえで、国民が安心と思えるために何をすべきかというご質問にお答えします。
 これについて私たちは、いまお話しした、9条の理想にむかう段階ごとに、いろいろな方策をとっていくという全体の方針を明らかにしているのですが、まず緊急にやるべきは二つだと考えています。
 一つは、米軍と自衛隊が一緒になって海外での戦争をすることを止めるということです。
 2014年から15年に安保法制ができました。これは、それまで「9条のもとでは集団的自衛権は行使できない」というのが政府の憲法解釈だったのですけれども、これを変えて「行使できる」ということにしてしまったのです。集団的自衛権とは、日本に対する攻撃がなくても、アメリカが海外で戦争をはじめたら、自衛隊が一緒に戦争するということです。
 そうなるとどうなるか。
 たとえば、これまで、米軍は、1960年代から70年代のベトナム戦争のさいに、日本の基地からベトナムに出撃しましたが、自衛隊はいきませんでした。
 それから、2000年代に入ってアフガニスタン戦争やイラク戦争のさいにも、米軍は、日本の基地から出撃したわけですけれども、自衛隊は一緒に戦争はしませんでした。
 自衛隊の活動は、アフガニスタン戦争のときには洋上での給油、イラク戦争のときには給水活動などにとどまったわけです。「集団的自衛権は行使できない」という憲法解釈があったから、それが抑制的な歯止めになっていたのです。
 その歯止めをなくしたらどうなるでしょう。
 アメリカが今後、ベトナム戦争やイラク戦争のような海外での戦争を始めたさいに、自衛隊が一緒になって戦争をすることになりますね。実は、ここにこそ、日本の平和の一番の現実の危険があると、私たちは考えています。
 ですから野党は、「安保法制はなくそう」、「集団的自衛権は行使できない」という元の解釈に戻そうと主張しています。

ASEANのような平和の地域協力の枠組みを、北東アジアに広げよう
 志位 もう一つは、どうやって日本の周辺の地域の平和をつくっていくのかという積極的な方策です。
 私たちは、あらゆる紛争問題を話し合いで解決する平和の地域協力の枠組みを、北東アジアにつくるということを提案しています。
 その大きなヒントになるのは、東南アジア――ASEAN(東南アジア諸国連合)です。
 私は、ASEANの国ぐにに何度も行きまして、すごいことが起こっていると目を開かされました。ASEANでは、東南アジア友好協力条約(TAC)といいますが、あらゆる紛争問題を平和的な話し合いで解決する、絶対に武力行使はしないという域内での平和のルールが決まっていて、それをしっかりと実践しているのです。
 ASEANに加入している国ぐには10カ国で、もちろん、この地域でもいろいろなもめごとは残されていますが、もめごとがあっても戦争にはなりません。この地域ではもう戦争は考えられません。
 私は、インドネシアのジャカルタにあるASEANの事務局を訪問し、お話を聞いて、たいへん驚いたのは、ASEANでは域内の国ぐにの会議を、なんと年間1000回もやっているというのです。年間1000回といったら、毎日3、4回もやっているということになりますね。年がら年中会議をやっている。それだけいろいろなレベルで会議をやっていますと、お互いの信頼ができます。だから、もめごとがおこっても戦争にはならない。これを本当にしっかりと実践しているのがASEANです。
 私たちは、ASEANでやっているような平和の地域協力の枠組みを、北東アジアにも広げようということを提案しているんです。
 私たちは、これを「北東アジア平和協力構想」といっています。北東アジアの範囲は、日本、韓国、北朝鮮、中国、ロシア、アメリカ、モンゴルなど7カ国くらいでしょうか。
 そのくらいの国ぐにで、東南アジアで結んでいるTACのような条約を結ぶ。北東アジア版のTACを結んで、あらゆる紛争問題を平和的な話し合いで解決していこうということです。
 もちろん、北東アジアには、北朝鮮の問題、中国の問題、米軍の駐留など、いろいろな難しい問題があります。しかし、だからこそ、あらゆる問題を話し合いで解決していくというASEAN流を北東アジアに広げていこうと提案をしているわけです。

中国とどう向き合うか――「国際法を守れ」という外交の力が大切
 三浦氏は、志位氏が語った「北東アジア平和協力構想」について、「たいへんチャレンジング(挑戦的)ですね」と感想をのべるとともに、中国の拡張主義や国内でのさまざまな人権弾圧にふれ、北東アジアの平和に「立ちはだかってくるのが中国の存在ではないか」と提起しました。中国に対してどう向き合うか―志位氏は次のように話をすすめました。
 志位 まず中国の現状についてですが、とくにこの10年来、非常に大きな変質が顕著になってきたと考えています。二つの問題が起こってきました。
 一つは、いま言われた、力ずくで現状を変えていこうという動きです。私たちは覇権主義と呼んでいますが、これが南シナ海、東シナ海、両方で顕著になっています。私たちは、絶対にこれに反対です。
 もう一つは、香港、ウイグルなどでの重大な人権侵害です。これが非常に深刻な事態になっています。これはもう内政問題とは言えません。重大な国際問題になっています。
 覇権主義と人権抑圧。こういう行動は「社会主義」とは無縁です。私たちは、こうした行動を認めませんし、こういう行動は「共産党」の名にも価しないということもはっきり言っています。この前の大会では、党の綱領もそういう方向で改定しました。
 中国に対してそういう厳しい批判をやっています。
 それでは、どうやって向き合っていくのかということですが、私は、いま一番大事なのは、まず中国に対して面と向かって「国際法を守りなさい」ということにあると強調したいのです。そうした発信を国際社会できちんとおこなうことです。
 私は、いまお話ししたような批判を、駐日中国大使に1時間半ほどかけて詳しく話し、本国に伝えることを求めました。
 中国共産党というのは、たいへんに大きな党ですが、正論を言われるのが嫌なんです。私たちの党の大会の決議案に、いまお話ししたような批判を書いたところ、中国大使がやってきて、私に「批判の部分を削ってくれませんか」というわけです。私は、「それはできません」と、中国の行動のどこが間違っているかを事実と道理に立って話したのですが、こうした正論がとても嫌なんです。
 ところが、正論で、中国にきちんとものをいう外交が、実は日本政府は弱いのです。正面きって、どこが問題なのか、国際法にてらして何が問題なのかを言わないといけない。
 たとえば、中国政府は、今度、海警法というのをつくりましたが、これは自分で「管轄海域」と決めたところでは武器の使用までできるとした国際法違反の法律です。私たちは、これは法律そのものが国際法違反だから撤回すべきだという声明をだしました。
 こういうふうに正面から、「中国は国際法を守れ」という外交の力で、国際社会が協力して、無法なことをやめさせていくということが一番大事なことです。
 さきほど、東南アジアの話をしましたが、東南アジアの場合も、南シナ海で中国が覇権主義の行動をやっています。それにどう対応するのかという難しい問題があるのです。しかし、「南シナ海行動宣言」というのをASEANと中国の間で結び、紛争を平和的に解決する、力ずくで現状を変えることはしないという約束を交わし、この「宣言」を守らせるとりくみをASEANはやっています。
 この問題をめぐっては、ASEANのなかにも、難しい団結上の問題もあるのですが、粘り強くまとまりをつくって地域の平和を守るとりくみを続けています。一方で、アメリカの介入に対しても、自主的対応の努力をしています。大国に思いのままに介入はさせないというASEAN流の自主独立の外交を、対アメリカでも、対中国でも、ちゃんとやっているんです。
 日本もそういう外交が大切ではないでしょうか。
 そういう外交の努力をやらないで、中国が軍事で構えてきたから日本も軍事で構えましょうということになってしまうと、これは果てしのない軍拡競争になり、一触即発で戦争になってしまう危険もあります。そういう方向に行くのではなくて、あくまでも外交で正論を唱え、粘り強く平和の秩序をつくっていく努力が一番大事だと考えています。(つづく)