2021年2月14日日曜日

NHK審議委 議事録全開示を再び答申 かんぽ報道で

 政府は1月、NHKの森下俊三経営委員長(元NTT西日本社長)を委員に再任する案を国会に提示しました。野党は反対していますが与党が多数なので提案通りに決まると思われます。

 NHKの経営委ではこの2、3年見過ごせない出来事が相次いでいます。NHKがかんぽ生命保険の不正販売を取り上げた番組をめぐり、日本郵政が18年に苦情を申し立てた際、経営委はそれをそのまま受け入れて上田良一会長(当時)を厳重注意としました。
 それを主導したのが森下氏とされ、放送法が禁じる個別番組の編集への干渉が行われました。
 そして19年には国会が要求した当時の議事録の公開を、やはり森下氏は拒みました。
 NHKが設けた第三者機関が20年5月、問題の重要性に鑑み全面開示すべきだと答申しましたが、それでも応じず、公表済みの議事録の要約を切り貼りしたものをサイトに公開7月)し、事実上の答申破りを行いました。
 第三者機関は今月改めて同じ趣旨の答申を出しました。経営委がどう対応するのか注目されます。
 いずれにしても公共放送であるべきNHKの独立性と自律性を守るために経営委はあるべきですが、そうした本来の趣旨に反する在り方が継続され、その体制がさらに2年続こうとしているのは大変問題です。
 毎日新聞の3つの記事を紹介します。
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NHK審議委 議事録全開示、再び答申 かんぽ報道、会長注意巡り
                         毎日新聞 2021年2月13日
 かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組を巡り、日本郵政グループの抗議に同調したNHK経営委員会が2018年、当時の上田良一会長を厳重注意した問題で、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会は、当時の経営委議事録を全面開示すべきだとする答申をNHKに改めて出し、12日に公表した。
 審議委はNHKが設置する第三者機関。答申は4日付で、NHKの「情報公開ホームページ」に公表された。議事録を巡っては、毎日新聞の情報公開請求に対し、19年末にNHKが「一部開示」にとどめたことに、審議委が昨年5月、全面開示を答申した。しかし、経営委は昨年7月、開示と称しながら、公表済みの議事録の要約を切り貼りしただけで回答し、サイトに公開。事実上の答申破りを行った。
 今回、別の報道機関などの情報公開請求に基づき、審議委が出した答申では、議事録を要約して回答してきた経営委を、「対象となる機関自らが手を加えることは、対象文書の改ざんというそしりを受けかねない」と特に批判。「速やかに開示することがNHKおよび経営委の運営に必要」と全面開示を再び求めた。
 毎日新聞の取材では、かんぽ不正を追及した18年4月のNHK番組「クローズアップ現代+(プラス)」に関連し、経営委がガバナンス不足などを理由に会長を厳重注意した際、森下俊三委員長代行(現委員長)らが放送法違反の番組介入が疑われる批判をしたことが判明している今回の答申でも、こうした議事録の非公表部分も検討した上で、今後の経営委の審議を阻害する恐れは認められず、受信料で運営される公共放送として「会長に関わるガバナンスの問題について、より強く透明性が求められる」と強調した。
 森下氏は、今回の答申を受けて「(議事録の要約での回答は)広い意味での開示だった。改ざんという認識ではない」とした上で、経営委で今後対応を議論すると説明している。【NHK問題取材班】


NHK審議委 議事録全開示、再び答申 かんぽ報道、会長注意巡り 
        宍戸常寿・東京大大学院教授の話
                         毎日新聞 2021年2月13日
非開示の理由全否定 NHK情報公開・個人情報保護審議委の元委員の宍戸常寿・東京大大学院教授(憲法、情報法)の話
 答申は、経営委がこれまで挙げていた非開示の理由を全て否定しており、強い思いを感じる。公的機関の情報公開制度では、第三者機関の答申を尊重するのが当然で、情報公開の実施機関が自らを守るために答申を無視することは認められない。今回の答申を受けても速やかに議事録を開示しないなら、経営委には公的機関としての自覚が足りないと言わざるを得ないし、NHK全体のガバナンスにまで疑いが生じる。


NHK森下経営委員長、続投へ かんぽ報道で番組介入疑い 資質疑問視する声も
                          毎日新聞 2021年1月21日
 NHK経営委員会(定数12)は21日、2月末で委員の任期が切れる森下俊三委員長(75)を続投させる方向で検討に入った。政府・与党も森下氏の委員長続投を前提に調整しており、政府は21日の衆参両院の議院運営委員会理事会に、森下氏の再任など2月末で任期を迎える委員4人の人事案を提示した。
 森下氏は委員長代行時代の2018年、かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHK番組を巡り、「作り方に問題があった」などと批判。放送法が禁じる委員の番組介入の疑いが強い発言を行い、当時のNHK会長への厳重注意を主導した。野党などから委員長としての資質が疑問視されている。
 経営委はNHK執行部を監督する最高意思決定機関。森下氏は元NTT西日本社長で、今は関西情報センター会長を務めている。15年3月にNHK経営委員(任期3年)となり、2期目。委員長代行を経て、19年12月に委員長に就任した。森下氏の委員再任は、野党が反対しても、与党の賛成多数で承認される見通し。経営委員長は放送法の規定により、委員の互選で決まる。複数の経営委員は「森下氏以外に候補はいないし、本人も意欲がある」と明かした。
 かんぽ報道問題を巡っては、本紙が会長厳重注意に関する経営委議事録の情報公開を請求したことに対し、NHKの情報公開の審議委が昨年5月、全面開示を答申した。しかし、経営委は森下氏のリードにより、同年7月に実質的に不開示の内容で公表。NHKの情報公開制度を否定する事実上の答申破りを行った。
 森下氏は、国会での委員再任の承認後、経営委で委員長続投が決まれば、前田晃伸NHK会長が今月13日に表明した23年度の受信料値下げや改革などの進展を図る。放送政策に関わる複数の自民党国会議員は「NHKの改革の経過をよく分かっている森下さんの委員長続投の方向だ」と話した。【屋代尚則、松尾知典、松倉佑輔】