2021年2月16日火曜日

16- メディアが伝えない日本政治の真実(植草一秀氏)

 植草一秀氏が14日と15日、連続して日本政治を考察するうえで避けて通れないと銘打った「2010年問題」に言及する記事を出しました。

 2010年は、真の改革政権であった鳩山内閣が旧来の日米支配勢力の破壊工作により僅か8ヵ月で退陣させられ菅直人政権に変わった年で、9月には、中国漁船と海上保安庁巡視艦との衝突事件が引き起こされ、前原外相の下 漁船の船長を逮捕するという事件がありました
 当時中国漁船が巡視船の船腹に衝突するシーンが繰り返し放映されましたが、それを見ると漁船がまるで車が曲がるかの様に方向転換をして衝突しています。船があのように曲がれる筈がないので、巡視船が左側から漁船の進路を遮ったために衝突したものであり、巡視船上から撮影した動画自体がそのことを雄弁に証明していました。
 「2010年問題」は「なぜ日本が敢えてそんなことをしたのか」に関わるものです、
 実は有料記事で後半が非公開であるため「2010年問題」の詳細は記事中には記述されていません。
 お読みになると分かりますが、元々この記事は、鳩山友紀夫元首相が主宰する東アジア共同体研究所によるYouTube動画「UIチャンネル」で行われた植草一秀氏と鳩山元首相対談215日放送)の案内記事で、対談の中で明らかにされています。
 対談は既に終了していますが、動画は今も見られるので、関心をお持ちの方は文中のURLからアクセスしてください。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
メディアが伝えない日本政治の真実
                植草一秀の「知られざる真実」 2021年2月14日
日本政治を考察するときに避けて通れないのが2010年問題。
2009年8月30日の衆院総選挙を経て鳩山由紀夫内閣が樹立された。
日本の主権者が自らの意思で新しい政権を樹立した点で画期的な金字塔だった。
しかし、この新内閣はわずか8ヵ月足らずで崩壊した。菅直人内閣が樹立された。
民主党を基軸とする新政権は2012年12月の衆院総選挙で終焉した。

民主党政権は失敗だったとの印象操作が展開されてきた。
しかし、経緯を子細に検証すると、十分認識されていない重大な側面が浮かび上がる。
真の意味で改革政権と呼ぶことができるのは鳩山内閣だけである。真の改革政権であったために鳩山内閣は破壊工作の対象にされた。
2010年6月に発足した菅直人内閣は改革政権である鳩山内閣を破壊した、旧来の日本支配勢力による傀儡政権に過ぎなかった。菅直人内閣を引き継いだ野田佳彦内閣も同類。
野田佳彦氏は2012年12月に「自爆解散」を断行。政権を自公に奉還した。
日本を支配する勢力は二度と同じ過ちを繰り返さぬことを至上命題としている。
そのために、いまなお、真の改革政権であった鳩山内閣を攻撃し続けている。

敗戦後の日本を支配してきたのは誰か。答えは明白だ。米国である。
より正確に言えば、米国を支配する支配勢力だ。
米国を支配する支配勢力とは軍事資本、金融資本、多国籍企業。
ディープ・ステイト⇒闇の政府と表現してもよいだろう。
この支配者が日本の官僚機構、大資本、利権政治勢力、メディアの4者をエージェント(⇒代理人)として活用し、日本の実効支配を続けている。
この基本構造の維持こそ支配者の至上命題だ。
2007年9月の日本経済新聞主催セミナーで米国国務副長官のリチャード・アーミテージ氏が次のように述べた。
「米国にとって日本との関係が世界で最も重要なのは、日本が世界第2位の経済大国であるためなどではない。日本の人々が政府を通じて米軍基地の使用を認め、安全保障上の守備範囲を広げてくれるからだ。」
これが日本支配者の考えである。
戦後、米国は日本に対し、「米国が望むだけの軍隊を、望む場所に、望むだけの期間駐留させる」権利獲得を求めた。
これに抵抗する者は容赦なく攻撃の対象にしてきた。

鳩山首相は「常時駐留なき安保」、「在日米軍基地縮小論」を持論としてきた。
その事実が米国による鳩山内閣総攻撃の最大の背景になった。
米国は小沢一郎氏が2006年4月に民主党代表に就任した時点から小沢一郎氏に対する警戒姿勢を強めていた
小沢氏が民主党代表に就任すると同時に民主党が大躍進を始めた。
2007年参院選で民主党が参院第一党に躍進。
これに対して日本支配勢力は小沢氏失脚工作を二重三重に展開した
2009年に入ると刑事事件まで創出して攻撃を激化させたが、小沢体制の幹事長を務めた鳩山氏が代表に就任し、ついに政権刷新を実現してしまった。
そして、日本支配勢力は総力を結集して、この革新政権を破壊したのである。
そのカギを握るのが2010年問題だ。

鳩山友紀夫(首相辞任後に表記を変更)元首相が主宰する東アジア共同体研究所がYouTube動画「UIチャンネル」を配信している。
毎週月曜日午後8時から1時間強の対談番組を放送。
この時間帯を過ぎてもタイムシフト視聴が可能。
2月15日(月)放送の第380回UIチャンネルに出演させていただく。
 https://bit.ly/37cW7Bs ぜひご高覧賜りたい。


安保第5条米軍防衛義務に関する幻想
                植草一秀の「知られざる真実」 2021年2月15日
米国の最大の関心は「日本の人々が政府を通じて米軍基地の使用を認め、安全保障上の守備範囲を広げてくれること」
2007年9月の日本経済新聞主催セミナーで米国国務副長官のリチャード・アーミテージ氏が発言した。
米国は、「米国が望むだけの軍隊を、望む場所に、望むだけの期間駐留させる」権利維持を最重視している。
それは日本を守るためではない。米国の利益を守るためだ。
このことを押し通すためには条件の整備が必要だ。
第一に日本を取り巻く環境を不安定に見せること。
第二に日本の国民に米軍の存在が必要と思わせること。
第三に日本の政府が米政府に従順であること。
米国は日本を取り巻く環境を不安定にするために四つの工作を展開してきた。
ロシアとの間の領土問題、韓国との間の領土問題、中国との間の領土問題、北朝鮮との間の緊張関係。
これらの諸条件は、日本を米国に依存させるために必要なもの。
日本国民に地政学上のリスクを感じさせることが重要になる。
トランプ大統領は北朝鮮との交戦関係に終止符を打とうとした。しかし、その企図は挫折した。
米国の軍産複合体にとって北朝鮮との敵対は「金のなる木」に等しい。
軍産の代理人であるボルトン補佐官などが行動して米国と北朝鮮との和解は阻止された。

2010年問題に戻る。
沖縄における米軍の権益、プレゼンス(⇒存在感)を維持するためには、「中国の脅威」が必要だった。「脅威」がなければ日本の「共依存」を実現できない。
そのために活用されているのが「尖閣問題」である。
2010年9月に中国漁船と海上保安庁巡視艦との衝突事件があった。この事件は人為的に創出されたものと言える。
尖閣海域の漁船への対応については日中両国が2000年6月に日中漁業協定を発効させている。
漁業協定に基づき、北緯27度以南の水域(尖閣諸島が含まれる水域)は、新たな規制措置を導入しない、つまり、自国の漁船を取締り、相手国漁船の問題は外交ルートでの注意喚起を行うこととされてきた。
この運用が2010年6月以降に変更された。
菅直人内閣が発足した2010年6月8日、菅内閣は質問主意書に対して「解決すべき領有権の問題は存在しない」との答弁書を閣議決定した。

この答弁書に基づいて前原誠司国交相の下で海上保安庁が尖閣海域の警備基準を日中漁業協定基準から国内法基準に変更した。そのために尖閣海域漁船衝突事件が発生した
前原誠司氏は2010年2月に米国務次官補カート・キャンベルが来日した際に会談している。
前原氏は同年12月の沖縄県知事選で伊波洋一氏が当選する可能性を「リスク」であることとキャンベル氏に伝えた。
日本における米軍権益を維持するためには「中国の脅威」が必要である。この要請から漁船衝突事件が創作されたと考えることができる。
日本の国民が米軍プレゼンスは必要だと思わせるには、有事の際に米軍が展開するとの幻想を抱かせることが必要だ。
そのために用いられているのが、「米国は尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用地域であることを認めた」というフレーズの流布。
このフレーズは尖閣有事の際に米軍が展開することを保証するものでない。
ほぼ無意味に近い。
しかし、このフレーズが常に誇大宣伝される。常に誇大宣伝するのが読売新聞であることも見落とせない。
本日、2月15日月曜日午後8時から、鳩山友紀夫元首相が主宰する東アジア共同体研究所によるYouTube動画「UIチャンネル」第380回放送で鳩山元首相と対談をさせていただく。
 https://bit.ly/37cW7Bs ぜひご高覧賜りたい。