2021年2月28日日曜日

28- 「N高政治部」 志位委員長の特別講義(7)

 志位委員長による「N高政治部」特別講義 紙上再現シリーズの7回目です
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「N高政治部」 志位委員長の特別講義(7)
道州制・地方行革 コロナ危機ふまえ見直しを
しんぶん赤旗 2021年2月27日
 続いてDグループの生徒からの質問に志位委員長が答えました。

 生徒 共産党は道州制を「国の姿を壊す仕掛けづくり」だとして反対していますが、そこには道州制をはじめとする地方行政改革による影響力の乱れ(地方の議員定数削減など)を危惧しているなどの政治的理由などがあるのではないでしょうか。

「道州制」――自治体が遠くなり、福祉を良くする仕事ができなくなる
 志位 「道州制」とは何かというと、いまある47の都道府県をなくして、10程度の「道州」という「広域自治体」をつくるというものです。そして市町村を大合併させて300程度の「基礎自治体」に再編するというものです。
 そんなことやったらどうなるか。自治体がいよいよ住民から遠くなってしまいます。地方自治法にもあるように、自治体の一番の仕事は、「住民の福祉の増進」にあるのですが、「道州制」ではその仕事ができなくなってしまうことになると思います。

「平成の大合併」――地方の衰退、過疎化がすすむ
 志位 「地方行革」についてのご質問ですが、この動きはいま始まったことではなくて、1980年代からやられてきたことです。それによって何が起こったかということをよく見ていただきたいのです。四つほど大事な数字を紹介します。
 一つは、市町村の数です。これは「平成の大合併」で3200から1700に減らされました。ほぼ半分になってしまいました。その結果、中心自治体にいろいろな機能が集中し、周辺の旧自治体地域では衰退が進みました。その地域から町役場、村役場がなくなり、住民サービスと地域振興の拠点がなくなり、過疎化がいっそう進みました。
 たとえば、昨年、九州で豪雨災害があり、私も現地にうかがったのですが、合併によって、以前は災害対策本部が置かれていた役場がなくなり、災害時に住民の命を救うという点でも困難が生じていました。
 「平成の大合併」の押し付けによって、住民サービスが大幅に後退し、災害にも弱い体制になってしまったことは、否定できないと思うのです。地方議員数も「大合併」に伴って減少しましたが、住民の願いを議会にとどけ、行政をチェックするという点で、地方議員の減少は、地方自治の力を弱めるものとなりました。

保健所、国立・公立・公的病院の減少――コロナで間違いが明らかに
 志位 二つ目は、保健所の数です。保健所の数は、1992年には852カ所あったものが、2020年には469カ所へと、半分になってしまいました。ほとんどの政令指定都市には、保健所は一つしかありません。横浜市、川崎市、名古屋市、大阪市などの巨大都市に、一つしか保健所がありません。そのために、コロナの対応でも、保健所が疲弊してたいへんな状況になっています。コロナを体験して、保健所を減らしたのは大失敗だと、みんなが思っているのではないでしょうか。
 三つ目は、国立・公立・公的病院の数です。これが1822から1524に、300も減らされました。そのうえ政府は「地域医療構想」といって、440もの公立・公的病院の統廃合をやろうとしています。
 しかし、このコロナ危機のもとで、コロナ患者さんを一番受け入れているのは国立・公立・公的病院ではありませんか。もちろん民間病院もコロナ患者さんを受け入れて頑張っているところがたくさんありますが、国立・公立・公的病院が中心になって受け入れているのが現状です。そういう危機のさいに頼りになる医療機関をこんなに削ってきたことは、これも間違いだったということが、コロナを体験して、はっきりしたのではないでしょうか。

公務員の削減――国際的にも日本の公務員数は少ない
 志位 最後にもう一つ、都道府県と市町村の公務員の数です。320万人から270万人へと50万人も減りました。コロナのもとで公務員のみなさんは、ほんとうに大奮闘しています。ところがマンパワーが足らない。役所もたいへん、保健所もたいへんというのが現状です。余裕がない。疲弊しています。公務員をどんどん減らしていく、削減路線を続けていていいのかということが問われていると思います。
 国際的に見てみますと、人口比での日本の公務員数は、フランスやイギリスの半分です。アメリカやドイツの6割です。決して日本の公務員数は多いわけではなく、むしろ少ないのです。それをどんどん削っていくやり方がいいのか。これも真剣に考えなければなりません。

「地方行革」のツケがコロナ危機でまわってきた――切り替えが必要
 志位 この間、「地方行革」の名で、市町村を無理やり合併させ、保健所を減らし、国立・公立・公的病院を減らし、公務員を減らしてきた。そのツケが、コロナ危機でまわってきたのではないでしょうか。こういうやり方はもう切り替えることが必要だということが、コロナのもとではっきりしたのではないかと、私は思います。

これ以上の市町村合併の押し付けをやめ、住民福祉向上に力をそそぐ
 続けて、三浦氏と生徒から基礎自治体についての質問が出され、志位委員長が答えました。
 三浦 住民に対するきめ細かなサービスを行うためには、基礎自治体の規模はもっと小さくした方がいいのでしょうか。規模はそのままで効率化した方がいいのでしょうか。

 志位 自治体の規模を、前のような規模へと小さくするというのは、なかなか現状では難しい面があると思います。
 これ以上の市町村合併の押し付けはやめ、住民福祉、住民サービスをいかに良くしていくかに力をそそぐことが大切だと思います。
 若い方への支援も、自治体によっては、さまざまな形でやられています。たとえば、農業後継者などへの支援を独自にやっている自治体とか、地域おこしへの支援を行っている自治体など、地域の実情にそくした支援をやっている自治体がたくさんあります。地元に密着した自治体の機能を強めていくということが大事なのではないでしょうか。

何人規模の自治体がベストか――住民合意で自治体が自主的に
 生徒 基礎自治体で住民サービスを向上させるためには何万人規模の人口がベストだとお考えでしょうか。

 志位 何万人規模がベストと答えるのは、なかなか難しいですね。地方の実情に応じて、住民合意で自治体が自主的に決めていくことが何よりも大切だと思います。
 私たちは、もともと「平成の大合併」のときにも、合併に頭から反対したわけではないのです。住民の合意で自主的に合併を選ぶ自治体については、一律に反対という態度をとりませんでした。国が上から合併を押し付けることは良くないといって反対したのです。上からの合併の押し付けを拒否して、住民のなかでの議論をつくして、合併の道を選ばずに、しっかりと地域に根づいた自治体を残したところも多くあります。
 いま私たちが強く主張しているのは、「道州制」やこれ以上の市町村合併の押し付けは良くない、いまある自治体の機能をいかに強めていくのか、とくに住民サービスの機能をどうやって強めていくのかというところに心を砕くべきだということです。
 これは、全国町村会のみなさんが一致して求めていることでもあります。“これ以上の市町村合併の押し付け反対”、“道州制には断固反対”、これが全国町村会の声です。その声を大事にしていくべきだと考えます。(つづく)