日経平均株価が30年ぶりに3万円の大台を突破しました。これは実態経済の回復によるものではなく、日銀は昨年だけでETFを7・1兆円も買い入れ、それに呼応し外国投資家がこの3ヶ月に3兆円近くも株を買い越した結果です。
このように日銀が株式市場に直接介入して株価をつり上げている(⇒アベノミクス)例は欧米にはありません。
株価が上がったのは上場大企業だけで、日本企業の99%以上を占める中小企業の多くは存廃の瀬戸際で、コロナ関連倒産は累計1027件に上っています。
この1年間で非正規労働者は75万人も減りました。職を失ったということです。
実際昨年1~12月の年間実質成長率はマイナス4・8%で、リーマン・ショック後の09年以来、11年ぶりの落ち込みです。個人消費に至ってはマイナス5・9%で、統計上比較可能な95年以来最大の落ち込みです(消費税率アップ→10%も大いに影響しています)。
その一方で、日本のビリオネア(保有資産10億ドル=約1060億円以上の大金持ち)の資産は昨年3月から11ヵ月の間に、12兆円から24兆円に倍増しています。
安倍前政権が「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざし、大企業の利益を最優先させる経済政策を続けた結果がこれで、コロナ危機で非正規労働者が困窮に陥り、中小企業が立ち行かなくなる社会になりました。
しんぶん赤旗は、大企業中心の政策は日本経済をパンデミックに弱い構造にしてしまったとして、このゆがみを正し、暮らしと営業を大切にする社会に転換することが必要であるとする主張を掲げました。
併せて「マイナス4・8%成長でも3万円台 実体経済と乖離した株高」との経済記事を紹介します。
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主張 コロナ禍での株高 格差広げる経済のゆがみ正せ
しんぶん赤旗 2021年2月18日
日経平均株価がバブル期以来30年半ぶりに3万円の大台を突破しました。コロナ危機で消費や生産活動が落ち込む中、株価だけが上がっています。経済の実態からかけ離れた株高です。大株主が資産をさらに増やす一方、多くの非正規労働者が職を失い、中小企業の経営は危機的状態が続きます。格差の構造をつくり上げたのは安倍晋三前政権のアベノミクスから続く、暮らし置き去りの政治です。
実体経済とかけ離れ上昇
株価の上昇は実体経済の回復によるものではありません。海外からの投資と日銀の公的マネーが押し上げ要因となっています。
日本の株式市場は、安倍前政権が海外からの投資を呼び込んだこともあって売買の約7割を外国投資家が占めています。この3カ月あまり外国勢が買った日本株は売った株との差し引きで3兆円近くに上ります。コロナ危機対策として世界各国が行った金融緩和で供給されたマネーが日本市場に流れ込んでいます。
日銀は、株式で構成される株価指数連動型上場投資信託(ETF)を昨年だけで7・1兆円も買い入れて株式市場に資金を投入しました。中央銀行が直接介入して株価をつり上げている国は欧米にはありません。日本だけの異常な政策です。
株高の恩恵を受けたのは一握りの大株主です。米誌『フォーブス』によると、日本のビリオネア(保有資産10億ドル以上の大富豪)の資産は昨年3月から倍増しています。
国民の暮らしは深刻です。2020年10~12月期実質国内総生産(GDP)の実額(年率換算)のうち個人消費は289兆円と、東日本大震災以来の低水準です。かつてGDPの6割を占めていた個人消費の比率は5割台に下がっています。
株価が上がったのは上場大企業です。日本企業の99%以上を占める中小企業の多くは存廃の瀬戸際です。民間信用調査会社の帝国データバンクによると、コロナ関連倒産は16日までの集計で累計1027件です。負債100億円以上の大型倒産は4件だけで、圧倒的に中小企業の倒産です。
雇用分野では20年の有効求人倍率が45年ぶりに大きく低下し、20年平均の非正規労働者は前年比で75万人も減りました。
政府は家計と中小企業に直接届く支援を最優先で実行すべきですが、国民の願いに背を向けてきました。菅政権は「感染対策と経済の両立」と言いつつ「Go To」事業に固執して感染を再拡大させ、経済活動に制約を課す結果を招きました。
大企業中心から転換を
安倍前政権は「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざし、大企業の利益を最優先させる経済政策を続けました。株価つり上げはアベノミクスの一環です。在任中2度の消費税増税は消費を冷え込ませました。雇用では正社員を非正規雇用に置き換える動きを加速させました。それがもたらしたのは、コロナ危機で非正規労働者が困窮に陥り、中小企業が立ち行かなくなる社会でした。菅政権はアベノミクスを継承しています。
大企業中心の政策は日本経済をパンデミックに弱い構造にしてしまいました。このゆがみを正し、暮らしと営業を大切にする社会に転換することが必要です。
マイナス4・8%成長でも3万円台 実体経済と乖離した株高
しんぶん赤旗 2021年2月17日
2月15日に内閣府が発表した国内総生産(GDP)速報値によれば、昨年10~12月期の実質成長率は年率換算で12・7%となりましたが、これはコロナ禍で4~6月が大きく落ち込んだ反動が続いているにすぎず、今年1~3月期は再びマイナスとなると予測されています。
11年ぶりの落ち込みに
昨年1~12月を通した年間の実質成長率はマイナス4・8%で、リーマン・ショック後の09年(マイナス5・7%)以来、11年ぶりの大きな落ち込みとなりました。個人消費にいたってはマイナス5・9%で、統計上比較可能な95年以来、最大の落ち込みです。
ところが、くしくも同じ2月15日に、東京株式市場では日経平均株価の終値が3万84円となりました。終値としては、90年8月2日(3万245円)以来30年ぶりの3万円台回復です。実体経済がコロナで低迷する中で、株価ばかりが急上昇するという、異常な状況が起きています。
金融緩和と日銀マネー
この実体経済と乖離(かいり)した株高の原因は、大きくいって二つあります。
一つは、世界各国の中央銀行がコロナ対策として大規模な金融緩和を実施したことです。昨年1年間に、アメリカ、日本、ヨーロッパ(ユーロ圏)の中央銀行が市場に供給したマネーの総額は740兆円を超えました。コロナ禍での企業の資金繰りなどのために金融緩和が必要なことは確かですが、格差拡大によって富が偏在しているもとでは、供給されたマネーの相当部分が大企業や富裕層の余剰資金となり、株式市場などに流れ込みます。これが、株価を引き上げたのです。
もう一つは、日銀マネーの株式市場への直接投入です。昨年1年間だけで、日銀は上場株式投資信託(ETF)を7・1兆円も購入し、これによって株価を引き上げたのです。このような中央銀行による株価への直接介入をしている国は欧米にはなく、日本だけの異常な政策です。
こうした株高によって恩恵を受けたのは、ごく一握りの大株主です。米誌フォーブスが毎日集計している世界のビリオネア(10億ドル以上の資産を保有する大富豪)の一覧表によれば、日本のビリオネア(現時点では42人)の資産が、コロナ禍で多くの国民が苦しんできた最近11カ月の間に、12兆円から24兆円に倍増しています。
ビリオネアの一人、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏の場合、家族4人で保有する株式の時価が、11カ月で2・8兆円も増えています。同社の最近1年間の世界全体の連結売上額が約2兆円、連結当期純利益は1000億円程度ですから、柳井氏の資産増加額が企業実態とかけ離れたものとなっていることは明らかです。
(垣内亮 日本共産党政策委員会)