2021年2月27日土曜日

山田・内閣広報官の続投は「あり得ない」/政治史の中でも悪質 「東北新社疑惑」

 総務省は、東北新社が国家公務員倫理法に基づく倫理規程で接待を禁じる利害関係者にあたると判断し、接待を受けた谷脇康彦・総務審議官ら9人に減給や戒告の懲戒処分を出しました。

 東北新社は26日、二宮清隆社長が引責辞任し後任には、中島信也副社長が就き、メディア事業部の統括部長を務めていた菅正剛氏は懲戒処分を受け人事部付としたと発表しました。
 山田真貴子・内閣報道官は総務省を退職しているため処分は受けず、自ら報酬の10分の2を3ヵ月間 自主返納することを申し出ました。菅首相は山田氏に広報官を続投させる意向です。

 元総務官僚だった立憲民主党の小西洋之参議院議員は、山田氏続投については「あり得ない」と次のように批判しています
「内閣広報官は、国民に対する政府の窓口です。その役職にある方が、国家公務員倫理法に違反する行為をしていた事実がある限り、職責を担うことはできません。内閣広報官にとどまろうとすること自体、国民の信用を失う行為ですAERA dot.
 接待発覚したとき山田氏は周囲に「辞めたい」と口にたそうですが、官邸側が引き留めたと言われています。菅首相が引きめたのは分かりますが、それ以外の人たちがそう考えたとはとても思えません。やはり菅首相への忖度からでしょう。
 菅氏は「国民から選ばれた議員の方が官僚よりも上位」だとして官僚を押さえつけたと言われます。なるほど一理はありそうですが、それも「高潔な議員であれば」という注釈が要るものです。山田氏の広報官残留を選挙民(国民)が支持するとは到底思われません。
 菅氏が自分の発言に忠実であるならば潔く山田氏を罷免するべきなのですが、多分そうはしないでしょう。日本学術会議の5人のメンバーの任命拒否問題で、野党からどんなに論理破綻を指摘されても取り消しませんでした。今度もその「没論理」を再現することでしょう。
 今回の騒ぎで、広報官の給与報酬月額117万5000円地域手当などを含めると給与は月額約140万円ほどになることが明らかになりました当然国民の血税で支払われるものです。月に1、2回程度の首相会見を仕切る以外にどんな仕事をしているのかは分かりませんが、目もくらむような高給なので、やはり選挙民が許すとは思われません。

 日刊ゲンダイの記事「 ~ 渦中の山田広報官に怨嗟の声」とブログ「くろねこの短語」の記事「飲み会を断らない女の『蛙の面に小便』答弁の厚顔無恥!!」を紹介します。
 併せて孫崎享氏の記事「政治史の中でも悪質 菅首相長男をめぐる『東北新社疑惑』」を紹介します。
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血税の官房機密費で返納か? 渦中の山田広報官に怨嗟の声
                          日刊ゲンダイ 2021/02/26
<いやはや、首相会見を仕切るだけで、そんなにもらえるのか><これじゃあ、どれほど批判の声が出たって辞めないわけだよ>
 ネット上では怨嗟の声が広がっている。放送関連会社「東北新社」に務める菅義偉首相の長男らによる総務省幹部接待問題で、同社から総務審議官時代の2019年11月に約7万4000円に上る高額な接待を受けていた山田真貴子・内閣広報官(60)。山田広報官は25日の衆院予算委に参考人として出席。「公務員の信用を損なったことを深く反省している。本当に申し訳なかった」と陳謝したものの、「今後、職務を続ける中で、できる限り自らを改善したい」と述べ、引き続き内閣広報官を務める意向を示した。
 90年代前半のテレビCM「反省だけなら、サルでもできる」のセリフではないが、反省して謝ったからオシマイではないだろう。内閣広報官とは文字通り、内閣の広報マンという重責を担う「顔」だ。今後、首相会見に登場する度、記者や国民からは疑惑の目で見られることになる。「本当に申し訳ない」と思うのであれば、きちんとけじめをつけるために広報官を辞するべきではないのか。
 国民が不信感を募らせているのは、山田広報官が何ら“お咎めなし”という理由だけではない。その破格というも言える高額な給料に対しても憤りの声が上がっている
 加藤勝信官房長官は25日の会見で、接待問題を受けて給与報酬月額の10分の6を自主返納することになった山田広報官の返納額が70万5000円に上ると明らかにした。つまり、広報官の給与報酬は月額で117万5000円。地域手当などを含めると給与は月額で約140万円ほどになるだろう。
 国税庁の調査によると、サラリーマン全体の平均月収は約35万円(推定)だが、このコロナ禍では残業代も減り、給与はさらに下がっているだろう。わが身を削る思いで必死に納めた税金が、疑惑の広報マンに対して自分たちの月収の約5倍も支払われ、さらに業者からも賄賂性の高い飲食代を負担してもらっていたのだから驚天動地だ。
<10分の6じゃなく全額返納しろ><俺たちの税金を何だと思っているんだ>
 ネット上で怒りの連鎖が広がっているのも無理はない。
 野党国会議員がため息交じりにこう言う。
「国民には自助を求めながら、家族や取り巻きには公助するのが菅首相。山田さんは菅首相のお気に入りのため、自主返納すると説明されているお金の原資も実は官房機密費ではないか、などとささやかれています」
 不祥事で返納するお金も税金でなんて冗談ではない。


飲み会を断らない女の「蛙の面に小便」答弁の厚顔無恥!!
                      くろねこの短語 2021年2月26日
 「木で鼻を括る」「糠に釘」「暖簾に腕押し」「馬耳東風」・・・いやいやそれより「蛙の面に小便」って言うのが最もふさわしい。何がって、昨日の衆議院予算委員会における飲み会を断らない女・山田真貴子君の答弁だ。
 言葉の端々から覗くのは、「全体の奉仕者」なんてことは考えたこともないだろう権力志向に陥った官僚のおぞましさなんだね。「反省」を口にはするけど、腹の中では「知ったことか」って居直っているのに違いない。
 たとえば、NHKに抗議の電話をかけたかって質問に「携帯の履歴を調べないとわからない」ときたもんだ。カス総理のロン毛の息子についても「(カス総理が総務大臣時代に)秘書官だったことはこの騒動で初めて知った」とさ。会食の際に「名刺交換はしていない」なんてことものたまってくれたようだが、ここまでくるとその面の皮の厚さに拍手したくなるほどだ。
 厚顔無恥って言葉があるけど、まさにこうした答弁をなんの屈託も感じずにできちゃうことを言うんだね。
山田広報官、高額接待を陳謝も「一般的な懇談」と説明 首相の意向受け辞任は否定

 何はともあ、百聞は一見に如かず。「蛙の面に小便」をとくと御覧じろ。

 衆院予算委動画  https://youtu.be/Lj43efUN8do (2:46:56)

 
日本外交と政治の正体
政治史の中でも悪質 菅首相長男をめぐる「東北新社疑惑」
                      孫崎享 日刊ゲンダイ 2021/02/26
 安倍政権下では、森友学園や加計学園の問題で、公的資産の不当廉売や、恣意的に基準を歪め、悪用された事例が相次いだ。当然、世論は怒ったが、一連の経過で安倍前首相側に資金が流れていたという話は聞かない。
 しかし現在、明らかになっている菅首相の長男をめぐる「東北新社疑惑」は、菅氏側が金銭的利益を得ている。その意味では日本の政治史の中でも悪質な事件だろう。
 つまり、総務省から東北新社が得た認可は、通常の基準では認可されない類いの性格を持っていたのである。別の報道によれば、<東北新社はグループの650億円の売り上げの内、衛星放送事業の売り上げは150億円、総務省の認定を受ける事業である>とある。だからこそ、社長自らが接待に出向き、対総務省工作を行ったのである。

 こうした事業認可が特段の配慮によって実施されることは、これまでもあろう。しかし、菅首相は東北新社から特別の金銭的利益を得ている。長男の正剛氏の入社後、東北新社の植村伴次郎氏らは6年間で、菅氏が代表を務める自民党神奈川県第2支部に計500万円の寄付をしていると報じられている。
 認可を与えたのは総務省である。しかし菅首相はここにも「クモの網」を張っている。昨年9月13日のフジテレビ系番組でも、政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」と強調していた。

 今回の問題で、総務省官僚の判断としては、①菅首相の意向を忖度して規制を曲げる ②閑職に異動し退職する――のいずれかだったろう。
 日本の官僚機構は今、こういう選択を突き付けられているのである。
 総務省の高級幹部が東北新社側から複数回に上る接待を受け、この席にはほぼ常に菅首相の長男がいた。
 この事件の本質については、毎日新聞社説がこう報じている。
<見過ごせないのは、昨年12月の会食時期だ。東北新社の別の子会社が手がける衛星放送の認定を、同省が更新する直前だった。また、長男が役員を務める子会社の「囲碁・将棋チャンネル」は約3年前にCS放送業務の認定を受けている。この時認定された12社16番組のうち、ハイビジョンでない放送はほかになかった。審査基準はハイビジョン化を進めるために改正されたばかりだった。しかし、ハイビジョンであるにもかかわらず認められなかった番組もあった>

孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。