2021年2月11日木曜日

長男の接待疑惑 首相が総務省に「キチンと説明を」と言えば済む話

 毎日新聞が「首相長男問題の質疑 官僚の答弁拒否も忖度か」とする社説を出しました。

 菅首相の長男が接待した総務省の幹部4人のうち2人は、東北新社の子会社が手がける衛星放送「スターチャンネル」の認定を同省が更新した昨年12月15日の直前にそれぞれ会食をしていました。
 官僚が所掌する業務の利害関係者から接待を受けるのは国家公務員倫理規程に違反します。辻元清美議員は、「通常なら許認可の更新時期に総務省幹部が接待されに行くわけがないのに、敢えて危険を冒して出掛けたのは首相の息子だったからはないか(要旨)」と見ています。しかも接待を受けた総務省官僚は、いずれも菅氏が総務相時代から内閣官房長官の時期を通じて引き立てたいわば「菅系の官僚たち」でした
 首相は例によって「長男は別人格」と繰り返して無関係を装っていますが、長男はかつて菅氏の議員秘書をしていたので、総務相時代に彼らと面識があったのではないかと見られています。
 官僚たちは、野党の追及に対して、国家公務員倫理審査会が調査中であることを理由に答弁を拒んでいます。しかし立民の今井雅人議員が10日、人事院の審査会事務局に対して確認すると、同事務局は「調査内容を対外的に発言することを禁止した規定はない。審査会から指導したこともない」と答えました。官僚たちが詳細を説明しない「口実」はこれで崩れました。
 もしも官僚たちが詳細を明らかして長男問題が尾を引けば菅首相のダメージとなり自分たちが左遷されることを恐れているからというのが真相でしょう。
 実際菅氏は官房長官時代に、そうした対応で官僚たちに恐怖心を与えながら官僚たちを統御してきたのでした。
 もしも本当に疚しいことがないのであれば、「菅首相が総務省に私のことは気にせず、きちんと説明をと指示するべきで、それが首相が掲げる当たり前の政治というもの」と、毎日新聞は述べています。果たしてそうできるでしょうか。
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社説 首相長男問題の質疑 官僚の答弁拒否も忖度か
                         毎日新聞 2021年2月10日
 放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男が、総務省幹部を接待したとされる問題の解明が進まない。
 野党の質問に対し、総務省の関係者が、同省や国家公務員倫理審査会が調査中であることを理由に答弁を拒んでいるからである。
 これでは、かえって「もっと何かを隠しているのではないか」と国民の疑念が深まるばかりだ。
 首相も「長男は別人格」と繰り返し、まるで人ごとのようだ。
 総務省の幹部4人が昨年、東北新社の幹部と無届けで会食し、手土産などを受け取っていたという不祥事である。
 放送事業を所管する総務省の職員が、同社のような利害関係者から接待を受けるのは国家公務員倫理規程に違反する可能性が高い。加えて会食には同社社員である菅首相の長男が同席していた。
 同社側には首相の長男という立場を利用して、事業の許認可などを有利に進める狙いがあったのではないかとの疑念がある。
 ところが会食に出ていたとされる総務省の幹部は当初、会食の事実を認めて一定の説明をしていたにもかかわらず、その後は一転して「調査中」の一点張りだ。
 警察、検察当局の捜査対象となっている関係者が、捜査への影響や、自身が訴追される恐れがあることなどを理由に、国会での答弁を拒む例はままある。
 だが倫理審査会は人事院の下に置かれた組織だ。国会答弁が審査会の調査の支障となるとは思えない。国会の場で国民に向けて説明することこそ公務員の責務だ。
 総務省幹部は、詳しく説明して長男問題が尾を引けば、菅首相のダメージとなり、その結果、自分は左遷されるかもしれないと恐れているのではないか
 官僚の人事を思い通りに動かすことで権力を掌握してきた首相だけに、そんな疑いを抱く。そうだとすれば忖度(そんたく)政治の弊害である。
 先の衆院予算委員会では総務省側の答弁が不十分だと野党が反発して退席し、1時間以上審議が止まった。時間の空費は残念だ。
 この状況を変えるには、首相が総務省に「私のことは気にせず、きちんと説明を」と指示することである。それが首相が掲げる「当たり前の政治」というものだ