日刊ゲンダイの電子版に「南スーダンに派遣された自衛隊員に三重苦がのしかかっている」という短い記事が載りました。
一つは、南スーダンは多民族国家であり、最大民族が政府軍の主体となって、10余りの少数民族を迫害しているという構図になっていることで、単なる不満・不穏分子による暴動などとは異なっている点です。そういう中で、常に政府軍側について非政府軍側に敵対していればそれでよいのか、という問題があります。何が正義であるのかの確信が持てないままに命の危険に晒されることほど救いの無いものはありません。
もう一つは7月の軍事衝突以降政府軍と反政府軍の戦闘が全土に拡大した結果、収穫期の農作業ができなかったために人口の3割=360万人が深刻な食糧不足に陥っているということです。それへの対応はPKO部隊の任務ではないのでしょうが、飢餓は平和の対極にあるものです。PKO部隊は平和を維持するためのものですが、初めから平和などは存在しないところでどうして平和が維持できるというのでしょうか。
そしてPKO部隊が所持している武器の問題です。治安や警察の活動が行えるためには、相手に対して圧倒的に優勢な武力を所持している必要があります。ところが南スーダンの場合はそれが逆になっていて、相手の方が優勢な武器を装備しているので、本来の救援活動が極めて困難です。しかし、もしも住民からSOSが来ても救援せずに放置すれば、外形的には任務の放棄と見做されます。ケニアの部隊はそれを不服として撤退してしまいました。
救援するかそれとも諦めるかの判断は現地のリーダーに任されていますが、万一PKO部隊に死傷者が出れば多分後付けの理由でリーダーの判断ミスにされることでしょう。
言うまでもなく本来責任を負うべきは、部隊をそういう窮地に追い込んだ稲田防衛相と安倍首相です。嘘・偽りを並べ立てて部隊を現地に送り込んだ彼らは、いま一体どう思っているのでしょうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
食料危機、住民感情…運用開始「駆け付け警護」に三重苦
日刊ゲンダイ 2016年12月14日
陸上自衛隊の南スーダンPKO派遣部隊の「駆け付け警護」の運用が開始されたが、現地の治安状況は国連が「前例のない危険レベル」と警告するほど悪化している。
多民族国家の南スーダンでは、最大民族ディンカ人が主体の政府軍が少数民族を迫害。これに対抗して10余りの少数民族が反政府組織をつくり、戦闘員は計10万人以上に上る。
食料危機も治安悪化に拍車をかけている。7月に首都ジュバで政府軍と反政府軍が大規模な戦闘を行って以降、全土に戦闘が拡大。収穫期に農作業ができなかったため、人口の約3割にあたる約360万人が深刻な食料不足に陥っている。
現地住民の各国のPKO部隊への反感も膨れ上がっている。反政府軍は各PKO部隊を上回る威力の武器を装備しているため、助けを求める住民を置き去りにして逃げるPKO部隊が続出。PKO部隊が支援する政府軍兵士による集団レイプ事件も頻発している。
こんな三重苦の危険な情勢で、小火器しか持たない自衛隊に、「駆け付け警護」などできるのか。