2016年12月19日月曜日

テレビをはしごして首脳会談を語る安倍首相(天木直人氏)+

 プーチンを迎えての北方領土交渉について、安倍首相は交渉が終わった日の夜のTV番組にはしご自画自賛の説明をしてりました。しかし肝心の領土問題で成果がゼロであったことについて、首相に問い質したキャスターはいなかったようです。官邸に抑え込まれているTVメディアには無理なことだったのでしょうか。
 元外交官の天木直人氏はブログに、北方領土問題は戦後最大の積み残された外交課題なのだから、野党は閉会中国会審議を求めてそこで詳細を問い質すべきだと書きました。
+ LITERAの記事も併せて紹介します。
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テレビをはしごして首脳会談を語る安倍首相とそれを許す政治
天木直人 2016年12月19日
 今度の北方領土交渉について、安倍首相は交渉が終わった直後からテレビをはしごして自ら自画自賛して回った。
 それをメディアが競って放映した。
 これほど国会を軽視し、国民を馬鹿にしたものはない。
 
 北方領土問題は戦後最大の積み残された外交課題だ。
 その交渉が終わったのだから、真っ先に国会で報告し、各党の質問に答えて、国民に説明すべきだ。
 そして国会議事録にその発言を残すべきだ。
 ところが、野党に閉会中国会審議を求める動きがまったくない。
 それをいい事に、安倍首相はテレビをはしごして、外交に素人のキャスターを相手に好き勝手なことを話している。
 こんなことが許されていいのか。
 
 あきれ果てていたら、きょう12月19日の日経が小さく報じていた。
 民進党の野田佳彦幹事長が茨城県土浦市で記者団に語ったと。
 「外交交渉としては完敗だったのではないか」と。
 「(来年の通常国会で)本当に外交成果があったのか説明を求めて行きたい」と。
 何をとぼけたことを言っているのだろう。
 通常国会が始まるのは来年の1月末だ。
 そんなころには安倍・プーチン会談などとっくに過去のものとなっている。
 そのころには、優先して質問することは他に山ほど出てきているに違いない。
 
 いますぐ国会の緊急開催を要求して国会で質す。
 そういう意気込みなくして、どうして安倍政権を倒せるというのか。

 
安倍首相が生出演『報ステ』『NEWS23』の異常な弱腰! 
厳しい質問をせず、野党や元島民の批判VTRをカット
リテラ 2016年12月17日
 結局、北方領土問題は微動だにせず、総額で3000億円規模となる経済協力の合意など、安倍首相がプーチン大統領にいいように利用されただけに終わった日露首脳会談。
 だが、ほとんどの国内マスコミは安倍政権の情報操作に丸乗りし、「プレス向け声明」を「日露が共同声明」などと報じるなど、完全に安倍政権の援護にまわった。
 
 なかでもひどかったのは、テレビ局だ。ハードルを下げようとする官邸の思惑に全面協力したワイドショーの姿勢については、昨日も批判したが、もっと愕然としたのは、昨夜、安倍首相が生出演したNHK『ニュースウオッチ9』、テレ朝『報道ステーション』、そしてTBS『NEWS23』という3つの報道番組だ。
 安倍首相に問題点を追及することもできず、たんに安倍首相の言い訳を垂れ流し、完全に官邸に屈服した姿をさらけだしてしまったのだ。
 
 まずは21時の『ニュースウオッチ9』。冒頭、河野憲治キャスターが「自己採点は何点ぐらいですか」と質問。安倍首相から「本格的な議論をスタートさせることはできました」「(点数をつけるのは)難しいですね」などとはぐらかされ続けたのだが、対する河野キャスターはまったく追及せず、にっこり顏で「むずかしいですか、なるほど」と相槌を打つだけという緊張感皆無で始まった。
 その後も“首相に最も近い記者”と言われる岩田明子記者が「(北方4島問題の)ゴールは見えてきたなという実感はあるか」と、安倍首相とツーカーで「成果」を強調。
さらに、VTRで紹介した元島民らの声も、評価するような部分を意図的に取り上げて“賛否拮抗”であるかのごとく演出。しかも、スタジオではこうした元島民の声にはほとんど触れなかった。
 だが“安倍様のNHK”のこと、ある意味これも“通常運転”ではある。たびたびリベラルな特集を組む『報ステ』と『23』だけは、プーチンが関与するシリア問題に切り込み、安倍首相の矛盾した態度を追及してくれるかもしれないと、ほのかに期待していたのだが、しかし結局、両方とも、首相を接待しているのかと思えるほどヌルい内容に終始した。
 
 たとえば22時の『報ステ』では、富川悠太アナウンサーが「プーチン大統領と一緒に温泉に入ったのか」などと、ワイドショーみたいなどうでもいい切り口。
 本題の北方領土問題にしても、「4島一括か、2島先行か、はたまた2島だけでいいのか」と具体的プランを聞いてみるのはいいが、安倍首相はまったく明らかにしようとせず、逆に「具体的にすこしでも前進するために、どう交渉していくかを考えなければならない」「新しいアプローチ」などと、抽象的な言い訳を宣伝させてしまうだけ。
 また後藤謙次氏が、安倍首相が現在議長を務めるG7がロシアへの経済制裁を強めているが、その最中で日露だけが接近していいのかという旨の質問をするも、「ウクライナの(クリミア併合)問題に関しては、G7の一員として責任ある協調した行動をとっていく」という建前を垂れ流させただけで、そこで日本政府にとって最大の矛盾点であるシリア情勢に対し、番組側から切り込む気配をつゆほども見せなかった。
 
 そして最後に23時台の『23』。TBSは会見直後の同日夕方『Nスタ』で元島民の男性を中継しており、「端的に言ってがっかり」「成果はゼロ」「自由訪問は前からやっていることで別に目新しくない」という旨の批判的なコメントを報じていた。
 そのため、北方領土問題が事実上まったく動かなかったことに対し、強く追及していくものと思われた。
 そして期待どおり、『23』でも安倍首相の生出演中、『Nスタ』と同じ元島民の男性がVTRに登場したのだが、しかしここで不可解なことが起こった。
 というのも、『23』のVTRで男性は、「(安倍首相が島民の手紙をプーチンに渡したことは)非常に大事なことで、私ども島民としての核になる発言だった。それに対してプーチンさんは島民の思いとか安倍首相が投げたボールに対してなんの返答もなかった。会話にならない会見だった」と、プーチン批判のみを述べ、逆に、安倍首相を批判する言葉をまったく発さなかったからだ。
『23』側がインタビューをどのように編集したのかは定かではないが、この不自然さを見る限り、少なくとも安倍首相の生出演に気を使ったのは疑いないだろう。
 
 これまで安倍政権の政策の問題点をしっかりと点検してきた『報ステ』と『23』が、この体たらく……。しかも、この二つの番組は、他にも異常としか言えない自主規制をしていた。
 それは、『報ステ』も『23』も、今回の日露首脳会談に対する野党側の反応を、一秒たりとも報じなかったことだ。
 実は、安倍首相が昨晩最初に生出演した『NW9』では、キャスターらとの質疑こそ“お友達ムード”であったものの、一応、VTRで自民党の二階俊博幹事長の他、公明党、民進党、共産党、日本維新の会の代表らのコメントを紹介していた。
 その際、安倍首相は民進党・蓮舫代表の「日本の大規模な経済援助への進展はあったが領土問題は置き去りにされているかの印象は否めない」「引き分けどころかプーチン大統領に一本とられた形で終わったのだとすれば、国民のひとりとして非常に残念」というコメントに対し、VTRが終わるやいなや猛然と反論。
 キャスターの進行に食い気味で「蓮舫氏は間違ってます。経済援助ではありません」「勘違いされておられる」とまくしたてた。国会質疑で痛いところを突かれたときのあの調子で、だ。
 普通のジャーナリズムの感覚なら、その後に安倍首相が生出演した『報ステ』や『23』では、蓮舫代表ら野党のコメントを使い、安倍首相が唯一感情を見せたこの話題を掘り下げるのが当然だろう。
 
 ところが、両番組とも、流したのは二階幹事長のコメントだけで、蓮舫氏を含む野党側の見解を報じるVTRはゼロ。富川アナも星氏も、安倍首相に対し野党が批判する「事実上の経済援助か否か」問題を直接ぶつけることはなかった。
 これは明らかに不可解だ。NHK出演後、蓮舫氏のコメントに激怒した官邸が「蓮舫の話は間違っているから放送するな」と恫喝したのか。あるいはたんにテレ朝とTBSが忖度したのか。それは現段階ではわからないが、いずれにせよ、安倍首相が総裁を務める自民党の見解のみを伝えるのは、これこそ放送法が定める不偏不党の理念に反するだろう。こんなことが許されていいのか。
 
 たしかに、本サイトがなんども指摘しているように、『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)や『ひるおび!』(TBS)などのワイドショーは完全に安倍応援団と化している。
 今回の日露首脳会談をめぐっても、ハードルを下げたうえで、ほとんどない成果を膨らまそうと必死になっていた。
『ミヤネ屋』にいたっては、前日大谷山荘で安倍首相が『ミヤネ屋』をじっと視聴している写真が昭恵夫人のインスタグラムにアップされたことに大はしゃぎ。司会の宮根誠司が「見てるよ、と。いい加減無責任なことをしゃべるなよ、と」「安倍さんからのメッセージ」とコメントする始末だった。
 
 しかし、夜のニュース番組は、各局の報道局が精力を尽くす“顔”だ。これまでテレ朝では『ワイド!スクランブル』がナアナアでも『報ステ』が、TBSでは『ひるおび!』がいかに政権の応援団だらけになろうが『23』が、しっかりと“権力の監視”というメディアの矜持を見せてきたはずだ。
 だが、繰り返すが、今回の日露首脳会談後の安倍首相生出演では、『報ステ』も『23』も、安倍首相を慌てさせたり、あるいは激昂させるような厳しい追及をまったく見せなかった。
 それどころか、番組の構成からして、あきらかに安倍首相の顔色を伺うような、言い換えれば官邸の“逆鱗”に触れないよう細心の注意を払うような放送を行ったのだ。
 今から1年前の古舘伊知郎の『報ステ』、あるいは岸井成格・膳場貴子体制の『23』であったならば、こんなことが起きただろうか。
ようするに、彼らが番組を去ってから、たった1年も経たたないうちに、夜のニュース番組が完全に骨抜きにされ、見事に陥落されてしまった。そのことが、今回の首相生出演ではっきりと露呈したのである。
 
 このままでは、それこそ政権が戦争をしようが何をしようが、テレビはまったく反対しないどころか、むしろ、逆にありもしない「成果」を喧伝するようになる。そんな戦中のようなメディア状況の再現を目前にして、わたしたちになす術はないのだろうか。(編集部)