2016年12月8日木曜日

日本の裁判所は権力機構の一翼

 政治・経済評論家の植草一秀氏は、小泉政権当時、気鋭の学者兼評論家として頻繁にTVに登場して、小泉政権の理論的支柱であった竹中平蔵氏と常に対峙して論破しました。それが突然痴漢事件を二度にわたってデッチアゲられて、大学教授の地位を追われ評論家としての活動も全く出来なくされました。彼が小泉政権にとって極めて「有害」であったためと思われます。
 そうした冤罪の経験を持つ植草一秀氏が、8日の政治弾圧冤罪糾弾集会への結集を呼び掛ける文章の中で、日本の裁判所と検察(+警察)を痛烈に批判しました。体験者ならではの迫力があります。
     (註.2本目の記事は、今年7月の参院選前のものであることにご注意ください)
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12/8午前930 東京高裁前 政治弾圧冤罪糾弾集会
植草一秀の「知られざる真実」 2016年12月 6日
日本の警察・検察・裁判所は、本来の責務を果たしていない。警察・検察・裁判所が一体となって、権力機構の一翼を担っている
日本の裁判所は、行政権力から独立して「法の支配」を貫徹するべく、行政権力に対するチェック機能を果たさずに、行政権力と一体化して、行政権力の僕(しもべ)として行動している
警察、検察は、公共の福祉の維持  基本的人権の保障 を全うしつつ、刑事法令を適正に適用実現するための存在であるが、その実態は、権力機構の一翼として、政治権力の都合に合わせて、刑事法令を不適正に適用し、冤罪を創出するとともに、存在する犯罪を無罪放免するという、歪んだ行動を示す。
 
警察、検察、裁判所制度の適正化は近代国家の根幹を成す。
1789年に制定されたフランス人権宣言は、人の譲りわたすことのできない神聖な自然的権利 を、厳粛な宣言において提示したものであり、すべての政治的結合は、自由、所有、安全、および圧制への抵抗という「自然的な諸権利」の保全にあるとした。
フランス人権宣言は、「圧制への抵抗」を自然権として保障するために、
第7条(適法手続きと身体の安全)
第8条(罪刑法定主義)
第9条(無罪の推定)
などを明記した。いまから、200年以上も前のことである。
しかし、日本においては、いまなお、これらの諸原則が守られていない
「適法手続き」は無視され、法律の拡大解釈によって、無実の人間が犯罪者に仕立て上げられる。
 
犯罪の取り調べが公明、正大でなければ、人の罪を問うことはできないはずだが、日本においては、「密室の取り調べ」によって、犯罪が捏造(ねつ造)=でっち上げられるケースが後を絶たない。とりわけ、こうした警察・検察・裁判所制度の不正が、政治的な目的で多用されている。
刑事訴訟法第336条は、被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。と定めているが、裁判所は、
 
民事訴訟法第247条
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を採用すべきか否かを判断する。
刑事訴訟法第318条
証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。
 
の条文を盾に、不正で不当な判決を示す。
裁判所と行政権力は一体化しており、裁判所は「法の番人」ではなく、「政治権力の番人」に成り下がってしまっているのである。
 
政治的目的による冤罪事案は後を絶たないが、2015年4月に実施された静岡市長選挙に際しての活動について、市民選挙運動を牽引してきた斎藤まさし氏を逮捕、起訴した公職選挙法違反事件もその事例のひとつである。
本年6月3日、静岡地方裁判所の佐藤正信裁判長は、斎藤まさし氏に対して、執行猶予付き懲役刑を言い渡した。完全なる冤罪事案であり、不当極まりない判決だった。
犯罪を証明するには、事前運動であることの証明、共謀があったことの証明が必要であるが、判決で述べられた判決理由は、このいずれについても、犯罪の証明がないということを明らかにするものであった。
 
したがって、刑事訴訟法第336条の規定に従い、斎藤氏は無罪とされなければならなかった。それをねじ曲げて、佐藤裁判長は有罪判決を示した。
斎藤氏は直ちに控訴した。
その控訴審の第1回控訴審公判が、12月8日(木)午前10時半から東京高等裁判所506法廷で開かれる。 https://ja-jp.facebook.com/nounjustinterference/  
これに先立ち、午前9時半から、東京高等裁判所正門前で正門前集会が開催される。
市民による政治活動に対する不当な弾圧事案そのものであり、主権者が立ち上がり、権力の暴走、権力による市民に対する弾圧に抵抗してゆかなければ、この国は、まさに暗黒の世界に転じることになる。
 
事件の概要については、
6月13日付ブログ記事 「政治弾圧冤罪ねつ造事案がまた一つ増えた」記事末尾に添付
メルマガ記事 「警察・検察・裁判所が腐敗しきっている日本」http://foomii.com/00050  
を参照されたい。
(以下は有料ブログのため非公開
 
 
政治弾圧冤罪ねつ造事案がまた一つ増えた
植草一秀の「知られざる真実」 2016年6月13日
昨日の東京有楽町マリオン前でのTPP批准阻止に向けての街頭アピールには、休日の中、多くの主権者に参集賜り、深く感謝の意を表したい。
TPPは「私たちのいのちとくらし」に直結する重大問題であり、参院選の最重要争点であるが、一般的にはその重要性が十分に認識されていない。
その理由としてTPPという名称が内容を伝えない、一種の記号である点を指摘できる。
 
TPPの内容を端的に示せば いのちよりお金の条約 国民より大資本の条約 日本よりアメリカの条約 と言うことができる。
TPPに参加してしまうと、日本のことを日本の主権者が決められなくなる。これがもっとも根源的で重大な問題だろう。
そして、日本の医療制度が破壊され、安心して食べられる食糧の生産と消費者の選択権が破壊され、
労働者の処遇悪化と身分不安定化、がもたらされる。
日本の主権者にとっては 百害あって一利なし の条約である。
 
日本の政治家、政治集団、政党は、二つに分類することができる。
第一のグループは、グローバルに行動する強欲巨大資本の利益を追求するグループ。
第二のグループは、日本の主権者の利益を追求するグループ。
実権を握っているのは前者だ。
それが自公政権であり、安倍政権である。
 
グローバルに行動する強欲巨大資本の利益を追求するグループが、いま、何よりも重視しているのがTPPである。TPPこそ、日本社会を、グローバル強欲巨大資本=多国籍企業が丸呑みにするための最終兵器なのだ。したがって、政治家、候補者、政党、政治集団の本質を掴むには、TPPへの賛否を問うのが何よりも分かりやすい。
参院選では、TPPへの賛否を確認して、候補者や政党が、どちらの側に立つ勢力であるのかを判定して投票先を決定するべきである。
日本のすべてを多国籍企業に献上してしまうのか。それとも、日本を多国籍企業の侵略から守るのか。
TPPへの賛否に、その基本が鮮明に表れるのだ。
 
7月10日の参院選投票日まで、残すところ27日である。参院選公示を前に、すでに各陣営が本格的な選挙戦に入っている。このなかで、極めて重大な政治弾圧裁判事案があった。
6月3日に静岡地方裁判所が市民選挙運動を牽引してきた斎藤まさし氏に対して不当判決を示した。
昨年4月12日に行われた静岡市長選挙に際しての公職選挙法違反で斎藤氏に対して有罪判決を示したのである。
静岡地方裁判所の佐藤正信裁判長は、執行猶予付き懲役刑を言い渡した。参院選を目前に控えて、各種政治活動に対して威圧的な効果を狙っての不当判決である。
判決公判終了後、斎藤氏ならびに弁護人による報告集会が多数の支援者が出席して開催された。
私も判決公判を傍聴し、報告集会、記者会見にも出席し、感想を述べさせていただいた。
典型的な国策裁判事案であり、参院選を前に斎藤氏を狙い撃ちした人物破壊工作、政治弾圧事案である。
犯罪を証明するには、事前運動であることの証明、共謀があったことの証明が必要であるが、判決で述べられた内容は、このいずれについても、犯罪の証明がないということを明らかにするものであった。
チラシ配布が有償で行われたことが「利害誘導」とされ、これが「悪質性」の根拠とされたが、「事前運動」であるとの証明がなければ、有償でのチラシ配布は合法である。
多くの政治関連団体が有償の作業を実施しており、「事前運動」の立証が不可欠であるが、その立証がないなかでの有罪判決は、刑事訴訟法第336条違反である。
 
斎藤氏が属していた陣営は、チラシ配布に際して、公職選挙法違反にならないように十分な対応を示しており、これを同法違反で摘発した当局の対応は恣意的かつ悪質と言わざるを得ない。
犯罪の立証がすでに確立している甘利明氏陣営に対しては不起訴処分とし、斎藤氏陣営に対しては不当な犯罪捏造を行っていることを、私たち主権者は断じて許してならない。
選挙が近づき、さらに当局の政治弾圧が強まることについて、主権者は抗議の声を大きく発していかねばならない。