日本における子供の相対的貧困率は約16%で先進国中ワースト4位です。「子供の相対的貧困率」はそのまま日本の政治の貧困を示す指標です。3年ごとに発表される日本の子供の相対的貧困率の最新データは2012年の16・3%ですが、貧困率はこの9年間まったく改善されずむしろ悪化しています。日本では税の再分配が行われた後も貧困率が全く改善されずに、悪化するケースすらあります※1。子どもの貧困率は、家族構成の関係で数値は変わりますがそのまま大人の貧困率でもあります。政治の貧困率と言われる所以です。
また日本財団は、貧困家庭の子どもを支援しないで格差を放置すると、現在15歳の子どもの「一学年だけでも」、社会が被る経済的損失は約2兆9千億円に達するとの推計を公表しています※2。
田中龍作ジャーナルが、「子どもの貧困は50年後の時限爆弾」とする医師たちの発言を紹介しました。
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医師「子どもの貧困は50年後の時限爆弾」
田中龍作ジャーナル 2016年12月4日
「医療従事者だけでは解決できない」。子どもの貧困がもたらす社会の疲弊に、医師たちが悲鳴をあげている。
「子どもの頃に貧困状態にあると、大人になって虚血性心疾患や脳卒中、肺がんになりやすい。子どもの貧困は成人期の不健康を生む」。
きょう、都内で開かれたシンポジウムで五十嵐隆医師(国立成育医療研究センター理事長・小児科)は、こう指摘した。
子どもの貧困は、老年期になっても健康に大きな影響を及ぼすことが分かってきた。
老人医療、予防医学の専門医である近藤克則医師(千葉大学予防医学センター)は以下のような例を挙げた。
母親が貧困だと、出生時低体重の子どもが生まれる。大人になってから糖尿病になりやすい。理由は母親の胎内でインシュリン感受性が変わるからだ。
栄養価の低い食事しか摂っていない子どもは身長が低くなる。年を取ってからは認知症、うつ病になりやすい。
貧困家庭の子どもの面倒を見ている知人は「貧困家庭の子どもは食事を抜くよりも、まずは食事の質を落とす」と話す。
健康格差が拡大すると今の子どもたちが老年期になった頃、医療費、介護費、生活保護費が飛躍的に増大する。「子どもの貧困は50年後(に炸裂する)時限爆弾だ」と近藤医師は警告する。
50年後、この国の医療財政は間違いなくパンクする。財政ばかりでない。社会そのものが立ち行かなくなるだろう。
子どもの貧困対策は待ったなしの政策課題である。オリンピックだのリニアだのと言っている場合ではないのだ。
臨床医からも悲鳴が上がっている。長野県飯田市の病院では、受付に学用品やお米などを置き、困った人が持ち帰れるようにしているのだという。
小児科の和田浩医師が貧困家庭の窮状を語った。
小児喘息の親子は、定期的に通院を勧めても来ない。窓口負担があると薬代が払えないからだ。子どもの医療費が後で返ってくるといっても、今支払う金が手元にないのだ。
「お金がなくて病院にかかれなかった経験があるか?と聞くと、『ある』と答える親がいっぱいいる」。
かりに窓口負担が無料化されても、受診できない貧困層はいる。親がダブルワーク、トリプルワークをしており、子どもにかける時間がないからだ。
子どもの医療費を窓口負担ゼロにすると、厚生省から県にペナルティが課せられる、という。時間外受診が増えるという理由だ。全くの屁理屈である。
和田医師は「貧困層だけを狙い撃ちにする施策だ」という。富裕層は窓口で支払える。例えば長野県飯田市では500円までは自己負担だ。だが、それでも厳しい。
「500円出して(病院に)かかれない子がいっぱい居るんです」。和田医師は拳を握りしめて語った。
~終わり~