朝日新聞は8日の社説:「党首討論 安倍さん、あんまりだ」で、
「質問にまともに答えない。聞かれた趣旨とずれた発言を長々と続ける。45分※という党首討論の時間が過ぎるのを待つかのような、安倍首相の姿勢にあきれる」、 ※民進党の場合、共産党などは7分程度「根強い反対・慎重論がある国民に、少しでも理解を広げたいと思うなら、首相はもっと誠実に蓮舫氏との議論にこたえるべきだった」、
「共産党の志位委員長が南スーダンの国連平和維持活動での『駆けつけ警護』について質問した時も同じだった」、
などと批判し、首相がこのような姿勢では討論をしても議論は深まりようがないとして、
「回数を増やす、全体で45分の時間を延長する、1回の発言時間を制限する、などの改善策を真剣に検討する必要がある」
という提案までしました。
また天木直人氏も8日のブログで、
「思ったとおりの不毛な党首討論だった。メディアはそれを知っていながら、さも意味ありげに党首討論を報じている。そうしないとニュースにならないからだ。メディアの政治報道もまた八百長である。
それにしても、つくづく思う。なぜこのような政治崩壊になってしまったのか。政治崩壊とは、聞く耳を持たず暴言を繰り返す安倍首相が、やりたい放題を続ける異常さの事である」、
と批判しました。
これは安倍氏の答弁能力以前の問題で彼の不誠実な「人間性」の問題です。朝日新聞が敢えて「安倍さん」呼ばわりしたのには、そんな意味合いがあるように思われます。
共産党の志位氏との討論でも勿論その姿勢は同じで、志位氏が国連の報告書の記述を示して、「自衛隊が南スーダン政府軍に対して武器を使用することになる」と問い詰めても、首相は、「南スーダンは誕生したばかりの最も若い国」などと関係のないことを延々と語るだけで、まともな答弁をしませんでした。
志位氏は討論の後で記者会見し、首相は最悪の答弁態度で南スーダン情勢についてもまともな認識を持っていない、と批判しました。
志位氏の党首討論と記者会見の記事を紹介します。
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南スーダン 政府軍がPKO攻撃
自衛隊の「駆け付け警護」 憲法違反の武力行使の危険
党首討論 志位委員長が追及 首相 答えられず
しんぶん赤旗 2016年12月8日
日本共産党の志位和夫委員長は7日の党首討論で、南スーダンPKO(国連平和維持活動)=UNMISS(国連南スーダン派遣団)に派遣されている自衛隊が安保法制=戦争法にもとづいて「駆け付け警護」を行えば、南スーダン政府軍との交戦になる危険があり、「憲法違反の武力行使につながる」と追及しました。安倍晋三首相は「政府軍と自衛隊が干戈(かんか)を交えることにはならない」というだけで、まともに答えられませんでした。
安倍政権は、戦争法にもとづき、UNMISSに派遣されている自衛隊に「駆け付け警護」などの新任務を付与し、任務遂行のための武器使用を認めました。
志位氏は、政府の憲法解釈では、自衛隊が海外で「国または国に準じる組織」に対して武器使用した場合、「憲法9条が禁止する武力の行使にあたる恐れがある」としていることを指摘しました。
この点について、志位氏は、7月に南スーダンの首都ジュバで発生した大規模戦闘では、政府軍の兵士80人~100人が国連職員やNGO職員の宿泊するホテルを襲撃し、殺人、暴行、略奪、レイプを行うなど、国連に対する政府軍の攻撃が繰り返されている事実を指摘。「こうした事態のもとで『駆け付け警護』を行えば、自衛隊が南スーダン政府軍に対して武器を使用することになる。憲法が禁じた海外での武力行使になる。そうした現実的な危険がある」とただしました。
これに対して首相はまともに答弁できず、「国(に)準(じる組織)が登場する状況ではない。(政府も反対派も)自衛隊のPKO部隊を受け入れ、期待していることを明確にしている」などと述べ、南スーダン政府の「受け入れ同意」が存在しているかのような答弁を行いました。
志位氏は「首相は全く答えていない」と批判しつつ、「南スーダンの現実をみるべきだ」と強調。直近の国連報告書でも、南スーダン政府と軍によってUNMISSへの敵対的行為が繰り返されている実態が克明に示されていると指摘しました。
11月15日の報告書では、南スーダン政府と軍による「持続的、組織的な地位協定への違反」(UNMISSへの敵対的行為)が続いており、「政府軍は、恒常的にUNMISSの任務遂行を妨害している」としています。
11月10日の国連事務総長報告は、8月から10月までの約2カ月間で南スーダン政府と軍による地位協定違反(UNMISSへの敵対行為)が46件あったことを明らかにしています。
志位氏はこれらの事実を示し、「南スーダンの現状は『受け入れ同意が安定的に維持されている』などとは到底いえないではないか」と追及。首相は「(南スーダン)政府も反対派も含めて、自衛隊を歓迎している」 「ジュバは比較的平穏だ」などと繰り返すだけでした。
志位氏は「(南スーダンの)キール大統領が『(自衛隊を)歓迎している』といっても、実際に46件の地位協定違反がやられている」、「2月の予算委員会の答弁でも首相は『ジュバが安定している』といったが、7月に大規模戦闘が起こった」と厳しく批判。「憲法違反の武力行使につながる新任務付与はただちに撤回し、自衛隊をすみやかに撤退させ、日本の支援は非軍事の人道支援、民生支援に切り替えるべきだ」と主張しました。
最悪の答弁態度―南スーダン情勢へのまともな認識なし
党首討論後に 志位委員長が会見
しんぶん赤旗 2016年12月8日
日本共産党の志位和夫委員長は7日、安倍晋三首相との党首討論後に国会内で記者会見し、「首相からは私の質問にまったく答えがなく、最悪の答弁態度だった。南スーダン問題の中心点を提起し、政府がこれに対するまともな答えを持っていないということが浮き彫りになった」と振り返りました。
志位氏は党首討論で、(1)南スーダン政府軍が国連に対する攻撃を繰り返しているもとで、自衛隊が「駆け付け警護」を実施したら、南スーダン政府軍に対して武器の使用をすることになり、憲法が禁止した武力の行使になるのではないか(2)国連PKO(平和維持活動)に対する南スーダン政府の「安定的な受け入れ同意」がなくなっているのではないか―の2点をただしました。
志位氏は、憲法が禁止した武力行使に当たるのではないかという問いに対し「首相はまったく答えられなかった」と批判しました。
また、南スーダン政府による受け入れ同意の問題について、直近の三つの国連報告書のどれもが、南スーダン政府と軍によってUNMISS(国連南スーダン派遣団)に対する組織的、継続的、恒常的な敵対的行為が行われていると指摘していることを強調。「『受け入れ同意の安定的な維持』が虚構だということです。しかし首相からは、これについても答えがなかった」と指摘しました。
その上で、「南スーダン政府と自衛隊が交戦することになりかねない事態が目前に迫っているのに、それに対する認識が首相に全くないということになれば、恐るべきことだ」と強調しました。
首相の答弁姿勢について、「立場が違っても相手にかみあわせて議論する姿勢がない」と指摘。「首相自身が答弁できないということが、だらだらとした答弁になったのだろう」と長々とした答弁を批判しました。