米支配層が、大統領選でヒラリー勝利に向けて必死に世論誘導をしたにもかかわらず、トランプが当選したことに相当の危機感を持っているということです。
第三者からみれば、それは米国民が体制側のマスメディアによる世論誘導よりも自分たちの要求を重視したもの、あるいはグローバリズムへの忌避感の高まりが結果したものという風に見えるのですが、支配層にとっては「言論統制が綻びた」という風に見えるようで、許容できない思いに駆られているようです。
マッカーシズムは、1950年代にマッカーシー上院議員によって主導された米国での「反共運動=赤狩り」のことで、民主主義国家を標ぼうしているアメリカ史のいわば暗黒の部分です。
そのマッカーシズムの現代版:「リベラル狩り=言論統制」が進められようとしているということで、既にその武器となる法律が30日に下院で可決されたということです。
アメリカは第二次大戦後、標的としたそれぞれの国家に対して様々に理不尽な攻撃を仕掛けては破壊することを続けてきました。
史上最大の侵略国家にして謀略国家のアメリカが、反体制側の大統領が選出されたのを機に、今度は自国民にもその謀略を仕掛けようというわけです。
櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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トランプが次期大統領に選ばれたことに危機感を持った
支配層の一部がマッカーシズムを復活へ
櫻井ジャーナル 2016年12月3日
アメリカがマッカーシズムで覆われ始めている。有力メディアに対する信頼度が大きく低下、ヒラリー・クリントンを大統領にする目論見も外れてしまったことが大きな原因だ。本ブログでも指摘したように、情報をコントロールする仕組みが壊れ始めていることに支配層は危機感を持ち、言論統制を強化しはじめた。
選挙期間中、アメリカをはじめ西側の有力メディアは偽情報でドナルド・トランプやロシアを攻撃していたが、その嘘は別の情報ルートで露見している。そこでインターネットで情報を発信している人、あるいはロシアのメディアに登場した人びとがブラック・リストに載せられている。そうした活動の拠点のひとつがワシントン・ポスト紙から生まれた “PropOrNot” 。匿名性が高い。
言論統制の強化を後押しする記事をワシントン・ポスト紙が掲載したのは11月24日。政府や有力メディアが伝える「正しい報道」に反する「偽報道」を攻撃する手段になる法律が報道の2日前に下院へ提出され、30日に可決された。彼らはトランプを攻撃するだけでなく、巨大資本による支配システム、つまりファシズム化を実現するための体制を立て直そうとしている。
今、アメリカで有力メディアが「トランプ独裁」を進めているわけでないことは言うまでもない。トランプを当選させてしまった状況を言論統制で変えようとしている。その背後ではロシアや中国の制圧、そして世界のファシズム化がある。TPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)の復活も目論んでいるだろう。トランプ政権を取り込もうともしているはずだ。
勿論、トランプは少なからぬ問題を抱えているが、ヒラリー・クリントンやその周辺とは違い、ロシアや中国との戦争、巨大資本による国の支配に反対している。それを行動に移すかどうかという問題はあるが、マイケル・フリン元DIA局長を安全保障担当補佐官に選んだことから考えると、全面核戦争を避けたいと思っていると判断できる。
アメリカの支配層が使うタグや御札に操られてはならないのだが、「型からの脱出と型のなかでの成功の願望」(加藤周一著『日本文学史序説』ちくま学芸文庫、1999年)を望んでいる人びとはタグや御札に操られている、あるいは操られている振りをしている。