2016年12月22日木曜日

22- 言論統制そして他国政府転覆の国家アメリカ

 マッカーシズム(赤狩り)は半世紀以上も前にアメリカが経験した暗黒の歴史ですが、今またそれが復活しているということです。
 そう聞いても多くの人には単なる比喩的な表現と受け止められるかもしれませんが、思いがけずにトランプ氏が次期大統領に当選したことにショックを隠せない米の体制側は、いま必死でロシア非難のプロパガンダを強化し、国内の反政府的なウエブサイトなどの圧殺を図っています。
 
 ワシントンポストは11月24日に言論統制の強化を後押しする記事を掲げました。
 下院では11月30日に「正しい報道に反するニセ情報規制の法律」が成立しました。
 また並行して、正体不明のウェブサイト「PropOrNot」が立ち上がり、政府批判を行っているウェブサイト200件のリストを作成して、それらを “ロシアの手先” であるとしました。
 12月19日の米大統領の選挙人投票に向けては、ヒラリーの逆転勝利を目指して、体制側は「選挙期間中、ロシアがヒラリー陣営のホームページをハッキングして不正な結果を導いた。それはプーチンの承認のもとに行われた」というような、これがアメリカの中枢の行う言論なのかと思われるほど幼稚なプロパガンダを行いました。
 
 Paul Craig Roberts氏は当然200件のリストに載っている人ですが、選挙人投票の前日(12月18日)、アメリカの全メディアが体制側に与して虚偽の情報を発信している現況を告発する記事を発表しました。
 ちなみに選挙人投票の結果は、共和党=トランプ側で2票、民主党=ヒラリー側で5票の造反がありましたが、大勢に影響はなく彼らの目論見は失敗しました。
          (関係記事)
12月4日 米支配層がマッカーシズムを復活へ
 
 また櫻井ジャーナルは、トルコで露大使が射殺された事件に関連して、米国は対立国であるロシアに対する徹底したプロパガンダにとどまらずに、これまで他国の政権の転覆や要人の殺害などを行ってきた事実を明らかにしました。
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進行中のクーデターの著しい厚かましさ
(文中の引用文献のURL表示は省略します)
マスコミに載らない海外記事 2016年12月20日 
Paul Craig Roberts 2016年12月18日
ドナルド・トランプが選挙で勝利したのは、ロシアによる干渉の結果だという証拠の無い話を、匿名のCIA職員が、あらゆる売女マスコミにまいた。このばかげた主張は、プーチン本人が監督し、アメリカ大統領選挙の操作までしたという一層ばかげた主張にエスカレートした。
 
これらの驚くべき主張には、いかなる証拠も示されていない。売女マスコミは、アメリカにおける憲法の危機と、ロシアとの危機を予兆する証拠のない狂気じみた非難を報じている。我々は売女マスコミがウソをつくことを知っている。
売女マスコミは、イラクに入った兵器査察官の意見と逆に、サダム・フセインは大量破壊兵器を持っていると報じた。連中は、イエロー・ケーキとアルミ・パイプの偽証拠に関してウソをついた。連中は、サダム・フセインとアルカイダのつながりについてウソをついた。連中は、イランは何年も前に核兵器への関心を放棄したという、あらゆるアメリカ諜報機関全員一致の報告にもかかわらず、イランの核兵器についてウソをついた。売女マスコミは、アサドが、シリア国民に対して化学兵器を使用したというウソをついた。連中は、カダフィに関して、ウソをついた。連中は、ロシアのウクライナ侵略について、ウソをついた。連中は、ロシア/ ジョージア紛争の原因について、ウソをついた。連中は、ソチ・オリンピックについてウソをついた。今、売女マスコミは、ロシアの干渉が、アメリカ大統領選挙とBrexit投票の結果を決定したと主張している。
 
売女マスコミによるウソの結果、何百万人もの人々が殺害され、家を追われた。アメリカ・マスコミ関係者全員、この血を頭から浴びている。それで、アメリカ・マスコミには品位も良心も無いことは証明済みの事実として我々は知っている。
今や売女マスコミは、これまでの犯罪水準を超えた。マスコミは、次期大統領に対するクーデターを醸成し、アメリカを未曾有の危機に投げ込みつつある連中の一部なのだ。
 
明日、選挙人団が集まり、大統領への投票をする。いつもなら決まりきったこの手順を崩壊させるべく、良く組織された取り組みが進められている。売女マスコミによって全国に広まったCIAのウソに基づいて、62人の選挙人が投票前に、選挙へのロシアによる干渉に関する、CIAによるブリーフィングを要求した。正式なCIA報告書も主張を裏付ける証拠もないのだから、ブリーフィングは、証拠の無い主張になる可能性がある。
 
ストップ-トランプ運動に加わっているハーバード大学法学部のローレンス・レッシング教授は、前例を破って、それぞれの州の多数票と違う投票をした選挙人を、無料で弁護すると約束している。
憲法や、国内の安寧や、国際的安定性に対する重大で継続的な脅威を売り込む取り組みは、全国的なマスコミ広告キャンペーンで、トランプが“憲法や、国内の安寧や、国際的な安定性に対する、重大で継続的な脅威”になるのを阻止するために必要なのだと言われている。
 
もし明日の取り組みが失敗すれば、オバマ大統領は、CIAに、1月20日前に、ロシアによる選挙介入に関する報告書を作成するよう命じて、トランプ就任を阻止する第二弾を起動させるだろう。この報告書は、就任を遅らせたり、アメリカ国民や外国の人々に、非常に多くの疑念を伝えて、指導者としてのトランプの実効性を損なったりするのに利用されかねない。
そして、もちろん、トランプに対する絶えざる攻撃は、ニューヨーク・タイムズによって、プーチンの傀儡で、ロシアにとって役に立つ阿呆だと断言されている人物が大統領になることに激怒した “孤独な変人” 愛国者による暗殺という結果を招きかねない。これが、アメリカ国民が選んだ大統領に対する、素晴らしい実績を誇る新聞の評価なのだ。
 
Global Researchのミシェル・チョスドフスキー教授は、この闘争に、もう一つの側面を加えている。対立する支配派閥間の戦いだ。トランプと彼が指名した国務長官は、ロシアとの正常な関係で生まれる事業を望んでいる。軍/安保派の支配層は、ロシアを恐ろしい脅威として位置づけることから得られる膨大な予算と権力を望んでいる。たとえトランプが、彼の当選に対するCIAの異議申し立てに生き残れたとしても、閣僚に任命された連中も承認の戦いを生き残らねばならず、もし生き残れたとしても、戦争で儲ける支配者に役立つ政策から、平和で儲ける支配者に役立つ政策に切り替えるという彼らの取り組みに対する異議申し立てはずっと続くのだ。
 
言い換えれば、明日と、1月20日の結果がどうであれ、戦いは続く。
 
Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Order.が購入可能。
記事原文のurl:
 
 
トルコで露大使が射殺される前、米大統領、元CIA長官、
元CIA副長官はロシアに対する報復を口に
櫻井ジャーナル 2016.12.20 
 トルコ駐在のロシア大使、アンドレイ・カルロフが12月19日にアンカラで射殺された。美術展覧会でスピーチした後、非番の警察官に撃たれたと伝えられている。ロシア軍の支援を受けたシリア政府軍がアレッポを奪還したことに対する報復であるかのようなことを銃撃犯は口にしていたようだ。
 
 シリアでの戦闘はリビアと同様、外国勢力に送り込まれた武装集団によって2011年春に始められた。戦闘員の主体はサウジアラビアなどペルシャ湾岸産油国に雇われたサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団で、アメリカなどが戦闘員を訓練し、携帯型の防空システムMANPADや対戦車ミサイルTOWを含む武器や兵器を供給してきた。「反体制派」や「内戦」といった用語を使うことは間違い、あるいは嘘だ。
 こうした侵略作戦は昨年9月末にロシア軍がシリア政府の要請で空爆を始めてから崩れていく。途中、アメリカ政府は停戦を持ちかけて時間を稼ぎ、体勢を立て直そうとしたものの、思惑通りには進んでいない。そして要衝アレッポが政府軍に奪還された。
 
 アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を利用してシリアやリビアを軍事的に破壊しようとした勢力はアメリカ大統領選で民主党のヒラリー・クリントンを担いでいた。2009年1月から13年2月まで国務長官を務めたクリントンは中東/北アフリカにおける軍事侵略に深く関係、11年10月20日にリビアのムアンマル・アル・カダフィが惨殺された事実をCBSのインタビュー中に知らされた際、彼女は「来た、見た、死んだ」と口にして喜んでいる
 
 リビア攻撃では重要な事実、アメリカ/NATOがアル・カイダ系武装集団LIFGと連携していることが広く知られるようになる。LIFGの幹部がそうした事実を認めただけではなく、体制転覆後、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、その映像がYouTubeにアップロードされ、イギリスのデイリー・メイル紙も伝えたのだ。
 そのリビアから戦闘員と武器/兵器がシリアへ移動したことは早い段階から指摘され、マークを消したNATOの輸送機が武器をリビアからトルコの基地まで運んだとも伝えられていた。おそらく、クリントンはシリアのバシャール・アル・アサドも血祭りに上げようとしたのだろう。
 
 後に調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは戦闘員や武器/兵器を運ぶ拠点がベンガジにあるCIAの拠点で、アメリカ国務省はそうした活動を黙認していたことを明らかにした。ベンガジにあるアメリカ領事館もそうした活動の舞台だったが、2012年9月11日に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使も殺される。
 
 ハーシュによると、領事館が襲撃される前日、大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていた。ということは、スティーブンスの上司にあたるクリントン長官も承知していた可能性が高い。2012年11月にCIA長官を辞めたデイビッド・ペトレイアスはヒラリー・クリントンと緊密な関係にある人物で、このルートからもシリアでの工作を知らされていたはずだ。
 ペトレイアスは12月16日、ロシアに対する「報復」について語っている。ロシアが民主党の電子メールなどをハッキングしていないことは彼も承知しているはずであり、実際に「報復」するなら別の出来事に対するものだ。
 
 それはともかく、「彼らに対してわれわれができ、彼らがわかり、われわれが行ったことを彼らが98%理解するが、名誉のために応じなければならないほど明白ではないようなことはないだろうか?」とペトレイアスは口にしたという。同じ日にバラク・オバマ大統領は、ロシアに対する「懲罰と抑止」としてロシアへ明確のメッセージを送ることを誓ったともいう。
 要するに、自分たちが世界の支配者になるという野望の実現を妨害するロシアに対して報復したいということなのだろうが、それだけ彼らが追い詰められているとも言える。
 
 ヒラリー・クリントンを支援するため、2013年8月にCIA副長官を辞めた(12年11月から13年3月まで長官代理)マイク・モレルは今年8月8日、ロシア人はイラン人に代償を払わせるべきだと語った。司会者のチャーリー・ローズからロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われ、その通りだと答えている。わからないように殺すというのだ。
 
 ヒラリー・クリントンの周辺は公然とロシア人を殺すべきだと語っている。それがいかに深刻なことなのか、西側の政府や有力メディアは考えていないようだ。