2016年12月16日金曜日

16- オスプレイ事故 「墜落」を「墜落」と呼ばない不思議

 13日夜沖縄で起きたオスプレイ墜落事故は、オスプレイ2機と大型ヘリ(CH53)それに空中給油機1機4機が海岸線から離れたところを飛行しながら、オスプレイ1機が空中給油を受けていた時にオスプレイの回転翼が給油ホースに当たって損傷したため、事故機は陸地に向かったものの海岸の浅瀬付近で墜落して大破したものです。
 もう1機のオスプレイは普天間基地に戻ることができましたが、着陸時に前輪が出なかったために胴体着陸となりました。
 
 オスプレイは兵隊や武器・弾薬等を敵地の奥深くに運搬する飛行機で、離着陸時にはヘリコプター同様に垂直に昇降し、離陸後は回転翼の軸を水平に設定してプロペラ機として敵のレーダー網をかいくぐるべく地表近くを高速で水平に飛ぶ設計になっています。
 そんな風に一つの飛行体にヘリコプターの機能と通常のプロペラ飛行機の機能を盛り込むという、基本構想にそもそも無理があったので非常に不安定で操縦の難しい飛行機になりました。
 実際にオスプレイは開発段階から事故が続き死傷者が多数出たために、「ウィドウ メイカー=寡婦製造機」と呼ばれました。実戦配備されてからも事故は多発したので、最も危険(不安定)な軍用機となっています。
 
(註.オスプレイは敵地侵攻用の飛行機なので自衛隊には不必要なものですが、何故か日本は現時点で何と17機も購入することになっています。しかも1機が200億円以上という法外な価格でです。因みに日本の中型旅客機MRJは1機50億円前後と言われているのでその4倍もする値段です。日本はその点でもアメリカの兵器商売の餌食にされています。)
 
 事故の翌日、沖縄県の安慶田光男副知事が在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官に抗議したところ、彼はあからさまに不快感を示し「住宅や県民に被害を与えなかったことは感謝されるべきだ」「抗議書の中にパイロットに対する気遣いがあってもいい」「政治問題化するのか」などと述べたということです。
 まことに信じられないような反応で、副知事は記者会見で「謝罪も全くなかった。抗議文を渡す時も顔色を変えてただ怒っていた。人間性を疑う」と述べました。まさに植民地に君臨する宗主国の役人、または時代劇に出てくる悪代官そのものです。
 ただニコルソンはその後の記者会見では一転して、「今回のことは誠に遺憾。申し訳ないという思いだ」と謝罪の意を示したというのですから、一体どういう性格で、どういう人間なのでしょうか。
 
 ところでこの事故の詳細はいつ明らかにされるのかですが、それについては2004年の沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故がそうであったように、日米地位協定の規定によって日本側が真相を把握することは事実上不可能だろうと言われています。
 この地位協定はアメリカが駐留するドイツ、イタリア、韓国などでも結んでいますが、それらの国は不断の努力によってその後大幅に改善させました。その中で日本だけは地位協定を只の1点でも前進させずにその努力もしていません。呆れるばかりの敗北主義です。
 
 もう一つこの事故では極めて異様なことが起こりました。
 それはこの明らかな墜落事故を琉球新報と沖縄タイムスを除く他のメディアは、全て「不時着」乃至はそれに類する言葉で報じているという点です。一部のTV放送局では14日の午前中までは「墜落」と報じたところもありましたが、その後はすべて「不時着」などに修正したということです。
 真実を伝えないのであればそれは報道ではありません。日本のメディアは一体どうなっているのでしょうか。
 
 この件についてLITERAが2本の記事を書いています。以下に紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
オスプレイ墜落事件の原因は安倍政権にある! 
安全神話を振りまき、日米地位協定を温存してきた責任を問う
LITERA 2016.12.14.
 13日夜、沖縄県名護市の海上で米軍輸送機・MV22オスプレイが墜落、主翼が真っ二つに折れるなど、大破した。これまで安全面でも懸念されてきたオスプレイだが、とうとう国内で初の重大事件を起こしたこととなる。
 他方、日本政府および防衛省は一貫して「墜落」との認識を否定し、繰り返し「不時着」「着水」などと表現している。
「オスプレイが不時着水する事案が起き、大変遺憾」(稲田朋美防衛相)
「パイロットの意思で着水したと報告を受けている」(菅義偉官房長官)
 
 沖縄メディアの一部を除く国内マスコミも、この政府側の「不時着」「着水」なる呼称にならっているが、しかし、大破した機体を見る限り、これは誰がどう見ても不時着に失敗して「墜落」したと呼ぶほうがふさわしい。実際、毎日新聞によれば〈防衛省は、墜落だとの指摘を否定できる材料を持っていないことは認めている。そもそも省内に「墜落」の明確な定義もない〉。パイロットの意思とは無関係に機体が制御不能になったとの疑念は捨てきれない。「不時着」「着水」との日本政府の言い換えは、墜落事件を矮小化しようとするものでしかないだろう。
 さらに、今日14日夕方になって、在沖米軍が名護市沿岸で大破したのとは別のオスプレイ1機が13日夜、宜野湾市普天間基地で胴体着陸をしていたことを明らかにした。これで少なくとも24時間中にオスプレイ2機がトラブルを起こしていたことが明確になったが、公表の遅さを考えると、米側と日本政府は事実を隠蔽しようとしていた可能性もある。
 
 名護市沿岸の墜落現場周辺には集落もあった。言うまでもなく、仮にオスプレイがコントロールを失い、住宅地などの人口が集中する地区に墜落していたならば、多数の死傷者が出ていたことは必至。日本政府は「安全性に問題はない」と繰り返し喧伝してきたが、それが完全に嘘だったことが証明されたかたちだ。
 
 安倍首相は14日、「重大な事故を起こしたことは大変遺憾だ。原因の徹底的な究明を強く要請している。飛行の安全確保が大前提だ」と述べ、米側に再発防止を求めたが、一番の防止策はオスプレイの配備・運用の恒久的停止であることは言をまたない。そもそも、原因究明を求めるとはいえども、その真実が公になるかどうかすら、極めて疑わしい。
 というのも、日米地位協定の規定によって、墜落した米軍機の正確な情報を日本側が把握することは事実上、不可能だからだ。
 
 地位協定は日米安保条約に基づき駐留する米軍の権利等を定めたもので、日本側は米軍の「財産」に関して許可なしに捜査や差し押さえが認められない。たとえば、2004年の沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故では、民間敷地内にもかかわらず、墜落現場は米軍によりただちに封鎖。米軍は機体の破片を「財産」と主張し、日本の警察や消防も立ち入ることができなかった
 それだけではない。裁判権もまた制限されている。地位協定によれば、米軍による事件や事故が公務中に発生した場合、米側が優先的に自国の法に基づく裁判をしてもよいことになっており、日本の国内法で被疑者を裁判にかけることができるのは、米側が裁判権を放棄したときだけだ。つまり、もしオスプレイが市街地に墜落し、多数の死者を出す甚大な被害をもたらしたとしても、日本側はただちに捜査を開始し、被疑者等を起訴し、裁判にかけることすらできないということである。
 
 加えて言えば、米軍機は日本の航空法の適用外である。米軍が勝手に飛行訓練のルートを設定し、どの空域で低空飛行を行おうとも、日本政府は事実上容認しているのが現状だ。本来、飛行訓練のルートは地位協定の第2条により両国政府の同意が必要なのだが、実際には基地間移動という名目で日本の全空域を好き勝手に飛び回ることができる
 したがって、今回のオスプレイ墜落事件も、現実には、日本側が正確な情報を把握することは極めて困難であり、そればかりか、地位協定の抜本的改定なしには再発防止は不可能。今後さらなる悲劇がいつ起こるかもわからないのだ。
 
 ところが、日本政府は、国の主権すら放棄する地位協定の見直しに及び腰だ。事実、地位協定は岸信介内閣が新安保条約を締結した1960年から、これまで一度たりともも改定されていない。米軍人による女児暴行などの重大事件が発生し、大きな社会問題になったとき、米側の顔色を伺いつつ「運用改善」や補足協定でお茶を濁してきただけである。
 これは、世界的にみて極めて異例といえる。たとえば、アメリカとの地位協定に類するものはドイツやイタリアにも存在し、米軍も駐留している。しかし、ドイツは1993年の大幅改定により、国内法を適用することで米軍機の飛行を制限、自治体による基地内の立ち入り調査も認めさせた。また、イタリアではすべての米軍基地はイタリア軍司令官の管理下に置かれ、米軍は飛行計画などの行動を事前に通告せねばならない。さらに、米軍の行動で公衆の生命や健康に危険が及ぶとみなすことができる場合、イタリアの司令官が米軍の行動をただちに中止させる権限をもっている(琉球新報社・地位協定取材班『検証「地位協定」日米不平等の源流』高文研)。
 
 14日、翁長雄志・沖縄県知事は記者団に対し「(オスプレイ墜落は)本当にとんでもない出来事ですよ。法治国家ではないですね」と述べるとともに、国へ強く抗議したが、まさに地位協定により本来あるべき国や自治体の権限が極めて制限されている以上、「法治国家ではない」としか言いようがあるまい。
 
 繰り返すが、これは沖縄だけの問題ではないのだ。オスプレイは佐賀空港や東京・横田基地など本土にも順次配備される方針で、前述のとおり、その飛行ルートは事実上制限されていない。いわば、日本全土がオスプレイ墜落の“射程圏内”となっているのだ。
 今回の墜落事件で、オスプレイが日本全土を危険にさらすことがあらためて証明された。安倍首相にもし、自国民の生命と生活を守る気持ちが少しでもあるのならば、オスプレイの恒久的運用・配備停止はもちろん、日米地位協定の抜本改定方針を宣言するべきだ。(編集部)
 
 
「オスプレイ墜落」報道で在京キー局が
沖縄のテレビ局にも「墜落」を「不時着」に言い換えるよう圧力!
LITERA 2016.12.15.
 沖縄県名護市海上に米軍輸送機・MV22オスプレイが墜落した事件は、あらためて安倍政権がいかに沖縄県民の命を危険に晒しているかを露呈させた。主翼が真っ二つに割れて大破した機体を見るにつけ、「あれがもし集落に墜落していたら……」と思うと背筋が凍る。だいたい、事故現場から300メートルの場所には民家があったのだ。
 
 しかし、こんな重大事故が起こったというのに、政府の発表はどうにか矮小化させようと必死。稲田朋美防衛相は「オスプレイが不時着水する事案が起き、大変遺憾」と言い、菅義偉官房長官は「パイロットの意思で着水したと報告を受けている」などと宣った。
 だが、もっと呆れたのは、報道のほうだ。
 地元紙である琉球新報、沖縄タイムスの両紙は「墜落」と表現したが、他方、全国紙の見出しはすべて「不時着」。読売新聞にいたってはタイトルに「着水」と打った。
 一方、テレビはNHKおよび在京民放が、やはりほぼすべての番組で「不時着」と表現。他番組に比べれば沖縄問題に関心を払っている『報道ステーション』(テレビ朝日)も歯切れ悪く「重大事故」として扱う体たらくで、唯一TBSが、夜の『NEWS23』ではっきりと「墜落」と伝え、夕方の『Nスタ』でも「不時着と説明されているが実態は墜落ではないか」と疑義を呈したくらいだ。
 
 昨日も本サイトは追及したが、大破した機体を見るかぎり、あれは誰がどう見ても「墜落」したと呼ぶほうがふさわしい。事実、米軍の準機関紙である「星条旗新聞」や、米・FOXニュース、英・BBC、ロイターなどの海外メディアは「Crash」(墜落)と報じている
 米軍や政府の “大本営発表” に右倣えで「不時着」という表現に留める。そんな報道のあり方で、国民の知る権利に応えていると本土のメディア人は言うつもりなのだろうか
 しかも、本土メディアはそうして政権の意向を忖度するだけではなかったらしい。ある沖縄のメディア関係者は、本サイトにこんな驚くべき話を明かしてくれた。
「じつは、沖縄の放送局・琉球朝日放送は当初から『墜落』との表現をすると決定していた。でも、キー局であるテレビ朝日からの圧力で『不時着』との表現をせざるを得なくなったらしい」
 どのような言葉で事件を報じ、伝えるか。そこには当然、報道側の覚悟が求められる。そんななかで地元である琉球朝日放送(QAB)は「墜落」という言葉を選んだのに、それをテレビ朝日が潰してしまったというのだ。これは事件を過小評価する“沖縄への冒涜”としか言いようがない。
 
 QABの元アナウンサーであり、ディレクターとして東村・高江のヘリパッド建設工事に抵抗する住民の姿を追った『標的の村』や、映画『戦場ぬ止み』の監督で知られる三上智恵氏も、以前、こんなふうに 東京メディアの無関心 に言及していた。
 それは、ヘリパッド建設に反対するために座り込み抗議を行った高江の住民たちを防衛省沖縄防衛局が「通行妨害」で訴えたスラップ(いやがらせ)訴訟で、2014年に最高裁が住民の上告を棄却したときのことだ。三上氏が「何よりも打ちのめされた」のは、「棄却された日に中央のマスコミはどこもニュースにしなかったということ」だったという。
「人権侵害だとか三権分立に違反している、スラップ裁判だなんて騒いでいるのはQABだけで、テレビ朝日も関心を示さない」(『日本の今を問う 沖縄・歴史・憲法』七つ森書館)
 
 “中央メディア” の沖縄に対する無関心──。これはテレビだけではない。現に “リベラル寄り” のはずの朝日新聞も毎日新聞も同じだ。両紙とも米軍と政府、識者のコメントを織り交ぜて “不時着したのか墜落したのか、いまは判断できない” という記事を書いているが、それはたんなる逃げだ。「墜落ではないのか」と問い、徹底した事故原因の究明を求めること。それがメディアの役割ではないのか。
 
 オスプレイはこれまで繰り返し安全面で危険性が訴えられてきた。そして、ついに国内でこれほどの重大事故を起こした。そんな状況にあっても大本営発表のまま、東京のメディアは伝えつづける。これはもう死んでいるも同然だ。 (水井多賀子)