「政府から、お知らせします。弾道ミサイルが、日本に落下する可能性がある場合 ─」という政府のCM(コマーシャル)が23日からテレビで放送され、7月6日までの2週間、在京民放5局で放送されるということです。
その内容は、「屋外スピーカーなどから国民保護サイレンと緊急情報が流れたら」「屋外では頑丈な建物や地下に避難を」「近くに建物がなければ、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」というもので、とても安全が守れるようなものではありません。そんなものを4億円近い税金を投入して流すのは、ひたすら「北朝鮮ミサイル危機」を煽るためです。
かつて森友学園問題で国民の憤激が高まったときにも、各地方自治体を通じて「北朝鮮のミサイルが飛来したら・・・」(趣旨)なる「対策ビラ」が配布されました。
今度は加計学園疑惑で政府不信がさらに高まってしまったので、北朝鮮ミサイル対策「コマーシャル」にバージョンアップさせたということです。加計問題に向いている国民の疑惑を外にそらそうというわけです。
作家の平野啓一郎氏はツイッターで〈政権の支持率対策のためにここまでやる異様さ。本気なら、原発にミサイルが落ちた時、どうすべきかのCMも作るべき〉と述べました。
また、脳科学者の茂木健一郎氏は読売新聞の報道に加える形で〈虚構新聞みたいだ。そんなことよりも、ミサイルが飛んでこないような外交努力をすることこそが政府の責務だと思う〉とツイートしています。
そもそも日本では北朝鮮のミサイルが着弾する前に報じられた例はまだないのではないでしょうか。
若狭湾の原発銀座をはじめ日本の海岸に多数立地されている原発には、それぞれ広島型原爆の数万発分の放射性セシウムが保有されています。もしも本当に政府が危険を感じているというのであればただちに全原発を停止し、原子炉と核燃料プール内の核燃料を撤去・移動させてしかるべく防護しなくてはなりません。
茂木氏が指摘するようにミサイルが飛んでこないような外交努力をすることこそが政府の責務で、歴代の政権はそう努力してきました。
しかし安倍政権になってからはそれと正反対の対応を続けてきた結果、朝鮮労働党機関紙・労働新聞(電子版)は5月2日付の論評で、朝鮮半島で核戦争が起きた場合、「米軍の兵たん、発進、出撃基地になっている日本が真っ先に放射能雲で覆われる」と警告するという事態に至っています。
安倍政権は子供じみたCMゲームにふけるのではなく、いまこそ憲法が謳っているいる平和外交に徹するべきです。
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安倍政権が疑惑隠しで北ミサイル危機扇動のCM放送!
茂木健一郎や平野啓一郎らも一斉批判
Litera 2017年6月24日
「政府から、お知らせします。弾道ミサイルが、日本に落下する可能性がある場合──」
どうかしているとしか思えないCMが23日からテレビで放送され始めた、政府による「北朝鮮ミサイル危機」を煽るCMのことだ。報道によれば、このCMは7月6日までの2週間、在京民放5局で垂れ流される。東京都議会選挙の選挙期間と丸かぶりだが、さらに、23日から25日にかけて全国70の新聞、26日から7月9日にかけてはインターネットの大手検索サイト(Yahoo!と思われる)にも広告を出す予定だという。
しかし、その内容はツッコミどころ満載だ。CMは、冒頭の文言のテロップが映し出された後、「屋外スピーカーなどから国民保護サイレンと緊急情報が流れます」「屋外では頑丈な建物や地下に避難を」「近くに建物がなければ、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」というアナウンスがイラスト付きで流れるというものだ。
一体何を言っているのか。実際にミサイルが飛んできたら、そんなもので、安全が守れるはずはないのは小学生でもわかるだろう。ようは、国民への避難方法啓発のふりをしているが、ひたすらミサイル危機を煽っているだけなのだ。
この安倍政権のなりふり構わない“危機感演出作戦”には方々から疑義の声があがっている。
たとえば、作家の平野啓一郎はツイッターで〈政権の支持率対策のためにここまでやる異様さ。本気なら、原発にミサイルが落ちた時、どうすべきかのCMも作るべき〉と述べた。また、脳科学者の茂木健一郎は読売新聞の報道に加える形で〈虚構新聞みたいだ。そんなことよりも、ミサイルが飛んでこないような外交努力をすることこそが政府の責務だと思う〉とツイートしている。
実際、このCMは明らかに、安倍政権に浮上した疑惑から国民の目をそらし、政権や自民党の支持率アップを狙ったものだ。
このCMは1〜2カ月前に企画され、突貫工事で作成されたと言われているが、その時期、安倍政権はほかにも、北朝鮮によるミサイル発射実験に乗じ、散々“米朝戦争勃発”を煽り立てていた。4月21日には内閣官房の「国民保護ポータルサイト」で「弾道ミサイル落下時の行動について」と題したPDFを公開、同月24日には首相官邸のメールマガジンで「身を守るためにとるべき行動」を確認するよう発信するなどしている。
また安倍首相自身も国会で「北朝鮮はサリンを弾頭につけて着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」と言い触らすなど、率先して「北朝鮮危機」の演出に励んでいた。
ところが、一方で、安倍首相は北朝鮮で故・金日成主席生誕105年記念日の軍事パレードが行われた同日に恒例の「桜を見る会」を開催。その後も友人たちと会食したり、昭恵夫人を伴って外遊に出かけたりしていた。
つまり、安倍政権はミサイル危機などないにもかかわらず、追及を受けていた森友学園問題から目をそらすために、この危機をひたすら扇動していただけだったのだ。今回のテレビCMもまったく同じで、その時期に企画したものを都議選にぶつけてきたということだろう。
まさに、卑劣としか言いようのない情報操作だが、さらに問題なのは、今回のCMと広告にあたって、政府が実に4億近い税金を投入したということだ。
これは、新聞やテレビに金をばらまくことで、メディアが黙らせる効果がある。実際、このCMや広告については、マスコミから批判の声が出てこないばかりか、まるでCMのPRのような報道までが流れている。
最近は、テレビでも安倍政権への批判や不正追及が行われるようになったが、もちろん、この“CMを使った買収”によって、また“忖度”が働くようになってしまう可能性もある。
かのヒトラーは「大多数の人間は小さな嘘よりも大きな嘘にたやすくだまされる」と語ったとも言われている。そうならないためにも、わたしたちは安倍政権の卑劣なプロパガンダとメディア戦略を徹底糾弾していく必要がある。