2017年6月4日日曜日

元TBS山口氏のレイプ疑惑は国会でも追及へ

 「私はレイプされた」  5月29日、ジャーナリストの詩織さんが元TBSワシントン支局長の山口敬之氏を告発する記者会見を開きました。
 詩織さんは154月、就職の相談をした山口氏に都内のホテルでレイプされたとして警察に刑事告訴しました。警察の捜査によって、タクシーの運転手やホテルのベルボーイ、ホテルセキュリティーのカメラ映像、下着から採取したDNA片の鑑定結果などの証拠が揃い、山口氏への逮捕状が発行されたので、署員が同年6月、帰国する山口氏を逮捕しようと空港で張り込んでいたところに、警視庁の上層部(中村格部長)から中止命令が出されました。
 その後警視庁が調査した結果、最終的に東京地検は不起訴処分にしたもので、全体の経過から見て山口氏は安倍首相と極めて親しいため国家権力によって逮捕を免れたのではないかと疑われています。
 
 5月29日の記者会見には殆ど全てのメディアが集まり、そこで詩織さんは勇気をもって氏名のうち「名」を明らかにし、素顔さらし検察審査会に審査を申し立てたと公表したのですが、翌日報道したのは東京新聞と日刊ゲンダイだけで、大手紙をはじめ大マスコミはダンマリを決め込んだままでした
 記者クラブ制に頼っている日本のメディアは、法務省(や警察)の意向に反する記事を書くと同省が行うブリーフィングから締め出されるのでそれはしないと言われています。
 そんなことでは「正義の報道」などということは全くの絵空事で、法務省の筋書き通りに踊らされているだけということになります。
 
 野党もしばらくは沈黙していましたが、2日、性犯罪を厳罰化する刑法改正案が衆議院で審議入りしたのを機に、この問題が国会で取り上げられるようになりました。
 そうなるとメディアも沈黙している訳にはいきません。是非とも報道をして正義を実現して欲しいものです。
 
 日刊ゲンダイと文春オンライン(後者については関係部分のみ)の記事を紹介します。
 
       (関係記事)
6月1日 元TBS支局長の「レイプ事件」を闇に葬るメディア
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森友や加計に続く火種 元TBS記者レイプ疑惑は国会追及へ
日刊ゲンダイ 2017年6月3日
 森友学園や加計学園の疑惑と同じような展開になりそうだ。
 5月29日、ジャーナリストの詩織さん(28)が、安倍首相と昵懇の元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(51)に「私はレイプされた」と会見で訴えた “事件” 。詩織さんは素顔をさらし、検察審査会に審査を申し立てたと公表した。当時の警視庁刑事部長に事件を握り潰された可能性も指摘。ところが、多くの大マスコミはダンマリを決め込んだまま。不起訴になった事件のうえ、山口氏が〈私は法に触れることは一切していません〉とフェイスブックで反論していることもあり、及び腰なのは明らかだ。しかし、この流れは一気に変わるかもしれない。
 
 2日、性犯罪を厳罰化する刑法改正案が審議入りした衆院本会議で、野党が詩織さんの問題を大きく取り上げたのだ。民進党の井出庸生議員が「不起訴になったのは当時の警視庁刑事部長が特別な判断をしたからではないか」と松本国家公安委員長に詰め寄ると、松本委員長が「警察本部が所轄警察署に指導を行うのは通常のこと。捜査のいきさつについて検証はしない」と開き直るような答弁をし、議場からどよめきが起こる場面があった。
 
■大マスコミも無視できず
 民進党の柚木道義議員も、同日の衆院厚労委員会で詩織さん問題に触れ、「捜査機関が公平な捜査をしなければ性犯罪を厳罰化しても実効性が担保されないのではないか」と、盛山法務副大臣にただした。
 詩織さん問題が国会で追及されたことで、大マスコミもさすがに無視できなくなったようだ。山口氏が昨年まで勤務していたTBSもきのう、〈元TBS記者への逮捕状取り下げ、野党が検証求める〉とようやくまともに報じた。
 
 あらためて柚木議員が言う。
「加計学園をめぐる問題にも通じることですが、現実にあったことを、なかったことにしてしまう “隠蔽もみ消し内閣” の下では、性犯罪を厳罰化する改正案が成立したとしても法の実効性が担保されない恐れがあります。できれば詩織さんとも連携しつつ、今国会でこの問題を取り上げていきたい」
 2日には国会前でこのレイプ事件に抗議するデモがあった。大きなうねりが起きつつあるのは間違いない。
 
 
加計学園問題 「あったものを、なかったことにする」総理周辺の
“見過ごせない発言”
文春オンライン  2017年6月3日
(前 略)
詩織さん
「はっきり言えることは、私はその時、私の意思とは無関係に、そして私の意思に反して性行為を行われていたということです。」 
                  BuzzFeed JAPAN 5月29日
 
 テレビに多数出演する著名ジャーナリスト・山口敬之氏にレイプされたと主張する女性・詩織さんが東京・霞が関の司法クラブで記者会見を行い、山口氏が不起訴になったことを受け、検察審査会に不服申立てをしたと発表した。
 2015年3月、当時TBSワシントン支局長だった山口氏に就職相談をしたところ、食事に誘われた詩織さんだが、食事の途中で記憶を失い、痛みで目が覚めた際、レイプされていることに気付いたという。詩織さんは酒に強く、酔って意識を失うことはこれまでになかった。詩織さんは日刊スポーツの取材に対して「デートレイプドラッグを混入されたと思っている」と述べている(日刊スポーツ 5月31日)。行為後、詩織さんの服を返さなかった山口氏は「下着だけでもお土産で持って帰ってもいいかな」と話した(『週刊新潮』6月8日号)。
 
 詩織さんは4月9日に警視庁原宿署に相談。警察の捜査によって、タクシーの運転手やホテルのベルボーイ、ホテルセキュリティーのカメラ映像、下着から採取したDNA片の鑑定結果などの証拠が揃い、2015年6月には山口氏への逮捕状が発行された。しかし、直前で逮捕が見送られている。このとき、捜査員から詩織さんに「上からの指示で逮捕できなかった」と連絡があったという。
 
「法律や捜査機関は被害者を守ってくれない」
 山口氏は2015年8月26日に書類送検されたが、2016年7月22日に嫌疑不十分で不起訴になった。詩織さんは納得できないとして、検察審査会に不服申立てを行った。詩織さんは記者会見で「私の知り得ない立場からの力を感じる。法律や捜査機関は被害者を守ってくれない」と訴えている(スポーツニッポン 5月30日)。菅官房長官の秘書官を務めていた中村格氏(当時、警視庁刑事部長)が隠蔽を指示したのではないかという報道もあった(『週刊新潮』5月18日号)。
 山口氏が安倍首相と非常に親しい存在であるということはよく知られている。2012年に安倍氏が自民党総裁に返り咲いた際には、菅義偉氏が「山口君の電話がなければ、今日という日はなかった」と語り、内閣改造時には麻生太郎氏直筆の「人事案」を山口氏が安倍首相のもとに届けることもあった(現代ビジネス 2016年7月20日)。2016年5月にTBSを退社し、翌月にそれまでの取材をもとにした著書『総理』(幻冬舎)を出版した。
 山口氏に関する疑惑は、「あったものを、なかったことにする」という一つの典型的な出来事だと思わされる。山口氏がフェイスブックに記した詩織さんへの反論には、安倍昭恵首相夫人が「いいね!」をつけていた。なお、中村氏は現在、警察庁刑事局組織犯罪対策部長の要職についている。これは「共謀罪」摘発を統括する予定の役職だという。
 
「なんで白いシャツを着て弱々しく被害者らしく映らないといけないんでしょう」
 なお、詩織さんは実名と顔を出して記者会見に臨んだ理由を、「オープンにこの話をしていかないと、捜査も病院も周囲のサポート体制も、社会が変わらない」と話している(日刊スポーツ 5月31日)。記者会見の服装について、「ボタンを開けすぎ」という批判もあったが、想定済みだったという。
「本当に言いたいのは、スカートをはいていようが、何を着ようが、責められる対象にはなってはいけない。リクルートスーツを着てと言われたけど、なんで白いシャツを着て弱々しく被害者らしく映らないといけないんでしょう。普段着で批判されるって、おかしい。そこを変えたかった」
 
 日本でこれまで、性暴力被害者が実名を名乗り、顔を出して被害を語ったケースは非常に少ない。性暴力の被害者を取材し続けているライターの小川たまか氏は「これまで被害を胸の底に沈め、沈黙を余儀なくされてきた人たちの希望となることを願いたい」と記している(Yahoo!個人 5月30日)。なお、小川氏の記事のコメント欄には被害者女性を非難する罵詈雑言が並んでいる。(大山 くまお)