都議選では各党の党首が総出で応援演説をしています。
安倍首相もさすがに自宅に蟄居ばかりもしていられないというわけで、告示から4日目の26日夜、文京区のある小学校で開かれた自民党後援会の会合に出かけ、15分間、自民候補の応援演説をしました。応援演説は当日になって急遽決まったそうです。
そこでは何とアベノミクスの成果を強調したあとで、国会情勢に触れ「印象操作のような質問があると、つい私も強い口調で言い返す姿勢に問題があった」と反省のそぶりを見せたそうですが、会場の支援者からすかさず「印象操作じゃないでしょ!」と不満の声をブツけられたということです。
内向きの会合に出たとはいえ加計学園疑惑で政権に逆風が吹く中で、首相が街頭に立てない状況に変わりはありません。あと4日で投票日を迎える都議選がどんな結果になるのか注目されます。
日刊ゲンダイ、田中龍作ジャーナル、天木直人のブログの記事を紹介します。
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加計疑惑ヤジ恐れ“外出禁止”の安倍首相に党首の資格なし
日刊ゲンダイ 2017年6月28日
ムリして虚勢を張っている印象だった。26日夜、安倍首相が告示から4日目で初めて都議選の応援に入った。選んだ場所は自民党の支援者のみで埋め尽くされた小学校の体育館。首相批判のやじが飛ぶ“不測の事態”を避けるため、安倍首相は街頭に立つことを事実上禁じられている。もはや「党の顔」を名乗る資格はない。
「新しい議会か、古い議会か。そんな議論は間違っている。できる議会か、できない議会か。仕事ができるのが自民党だ」――。この日の演説で、安倍首相は小池都知事率いる「都民ファーストの会」のスローガンを批判してみせたが、威勢がいいのは言葉だけだ。
安倍首相が出向いた先は、支援者が温かく出迎えてくれる身内の集会。用意された150人分のパイプ椅子は満席で、100人近い立ち見も出る中、安倍首相は約15分間、一気にまくしたてた。時折、激しい身ぶりも交えて「元気」をアピール。ラストサンデーだった25日も家にこもり、政界で広まる「ドクターストップがかかっている」との体調悪化説の払拭に努めた。
応援を受けた文京区の中屋文孝候補の陣営も「集会の日程はだいぶ前に決まっていた。首相に応援を依頼していたが、当日になって急にセッティングされた」(選対関係者)と戸惑うほどの“押しかけ”ぶり。
加計学園疑惑で政権に逆風が吹く中、露出を控えると、今度は「安倍隠し」との批判が強まるだけ。ジレンマに陥る前に安倍首相は初応援に踏み切ったのだろうが、「不測の事態」を恐れて、街頭に立てない状況に変わりはない。ライバルの小池知事は27日も公務そっちのけで、都ファ候補の応援に5カ所で街頭演説に立つのとは大違いだ。
■支援者からも不満の声
安倍首相は演説で加計疑惑には直接触れず、この期に及んで「21世紀で最も高い水準の賃上げ」「正規雇用も増えた」とアベノミクスの成果を強調。ところが、先の国会について「印象操作のような質問があると、つい私も強い口調で言い返す姿勢に問題があった」と反省のそぶりを見せると、会場の支援者からも「印象操作じゃないでしょ!」と不満の声をブツけられたのだ。街頭に立つのが、ますます遠のいたに違いない。
「政党のトップが街頭に立つのは“客寄せパンダ”の役割を果たし、浮動票を掘り起こす効果を期待されてこそです。選挙期間中に支援者らの集会で熱弁を振るっても、意味がありません。ましてや、今回の都議選は自民の劣勢が伝えられているのに、党のトップが堂々と街頭に立てないとは、話にならない。この体たらくは加計疑惑の説明責任から逃げ回った自業自得。既に安倍首相は『党の顔』としての価値を失っているだけに、都議選で自民が惨敗すれば党内から責任を問う声が噴出しかねません」(政治評論家・山口朝雄氏)
党のトップとして事実上の「外出禁止令」を課されるとは、安倍首相は民進党の蓮舫代表以下だ。その蓮舫代表は26日も街頭に立ち、「国会では語らず、街頭で演説に立たない。逃げている姿勢は絶対に許してはいけない」と、安倍首相を厳しく批判していた。
【都議選】自らが吹かせた逆風のなか安倍首相初の応援演説は小学校の体育館
田中龍作ジャーナル 2017年6月26日
加計疑惑で国民の不評を買い、都議選の応援演説を“自粛”していた安倍首相が、きょう夕方、自民党候補の演説会に姿を現した・・・
といっても街頭ではない。得意の秋葉原ガンダムカフェ前ではないのだ。文京区駒込の小学校体育館という閉鎖空間である。
出席者も候補者の後援会員はじめコテコテの自民党支持者に限られていた。ブーイングなど飛びようもない環境だった。
それでも首相が今国会に触れて「(野党の)印象操作のようなものもあった・・・売り言葉に買い言葉・・・」と話した時、女性出席者がヤジらしきものを飛ばした。SPが一瞬、身構えた。
「アベノミクス」という言葉まで持ち出して、経済がさも好調であるかのように滔々(とうとう)と話した。自画自賛もここまで来ると、詐欺に等しい。
首相は「厳しい風が吹いている。あの8年前を思い出して頑張ろう」と叱咤激励した。
8年前の都議選は年金不祥事を受けて自民党が大敗した。首相は安倍晋三氏だった。
今回、自民党に激しい逆風が吹いているのは、首相自らの不祥事のせいだ。
自党の総裁が起こした逆風で落選の瀬戸際に立たされている都議候補たちには、あまり嬉しくない応援であることは確かだろう。
~終わり~
読売、産経からも見放されつつある安倍首相とこの国の非常事態
天木直人のブログ 2017年6月28日
きのう6月27日の読売新聞が、安倍首相は閉会中国会審議に応じて説明責任を果たせと社説に書いて、私を驚かせた。
そうしたら、きょう6月28日の読売新聞は、今度は、都議選で「安倍一強」に陰り、と書いて、さらに私を驚かせた。
産経新聞までも、きのう(6月28日号)の夕刊フジで、都議会劣勢を認めざるを得ない始末だ。
無理もない。
せっかく用意してやった神戸の「正論」の場で、安倍首相は「獣医学部を全国にどんどんつくる」と発言するへまをやらかしたからだ。
これが加計疑惑逃れの「ちゃぶ台返し」(6月28日朝日新聞社説)であることは明らかだ。
応援団の読売や産経からも見放されるようでは安倍首相は危うい。
しかし、だからと言って、安倍政権が終るかといえば決してそうではない。
野党がいますぐ安倍政権にとって代わることはあり得ないからだ。
これを要するに、都議会選の後も、安倍政権は支持率を落としながらだらだらと続くということだ。
これは最悪だ。
なぜなら、支持率を挽回するため安倍首相はますます悪あがきするからだ。
そして、悪あがきしても何一つよくならないからだ。
外交も内政も行き詰まったまま、安倍政権が続き、その間に国民生活はどんどん苦しくなっていく。
こうなれば、もはや既存の政党、政治家たちは、政局に明け暮れる贅沢は許されない。
私利、私欲を捨て、挙国一致体制でこの国と国民の為に働かなくてはいけない。
非常事態下の大政翼賛政治が必要になってくる、と私が言ってきたのは、まさにこのことだ。
こんな事態を招いた政治家たちは、すべからくその責任をとって、政治家の特権を返上し、給与を削減して働かなくてはいけない。
そういう世の中になってきたのである(了)