NPO情報公開クリアリングハウスが、「加計学園文書に関する内閣府調査報告に関する声明」を出しました。
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加計学園文書に関する内閣府調査報告に関する声明
2017年6月16日
特定非営利活動法人 情報公開クリアリングハウス
理事長 三木 由希子
当法人は、市民の知る権利の擁護と確立を目指して活動する特定非営利活動法人です。
内閣府が加計学園文書に関連する調査を行いその結果を発表しました。報告書によると、調査は「内閣府側における当該メールの存在及び記載内容の審議等について、すでに確認済みのものも含めて」実施したとされています。これらについて、以下の点について疑義があり、さらに調査が必要であると考えます。
1 文科省作成文書全般について、文書が内閣府にあるのかが問題ではなくその内容の確認が重要
文科省で先般確認されたものは、文科省内で作成されたものであって、それを内閣府職員が見たか否か、内閣府内にあるか否かを調査すべきではないとは言いませんが、殊更内閣府内で確認しても意味があるとは思えません。重要なのは、内閣府と文科省の間での協議や連絡等について、特定の内容に限らず、そこに書かれている事柄について内閣府側ではどのような認識、前提、内容であったのかを確認することであり、文科省の文書に対応する記録を示すことです。
今回の調査では、「新獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項(文書①)」、「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答(文書⑤)」について、ヒアリング対象者が文書を見たことがないこと、「官邸の最高レベルが言っている」「これは総理のご意向」などと発言した者がいないことを確認したとしています。このような発言をした者がいないと断言できる程度に記憶が鮮明なのであれば、どのような内容を内閣府から文科省に伝達をしたのか、回答をしたのかについても具体的に明らかにし、なぜ内閣府が主張するような齟齬が生じているのかを検証すべきです。また、対応する記録の有無、記録がないのであれば事後的にでも作成をすべきです。
重要なのは、文科省側の文書に記載されている内容は、少なくとも文科省はそのように受け止めて手続や調整を行っていたということであり、そのことをもって行政がゆがめられたという認識を示す証言があるということです。内閣府との間の協議でなぜそうなったのかは、少なくとも内閣府側の記録や証言がない限り、検証対象は文科省文書を基に行われるのが妥当であり、言い換えるとそれ以外に方法がないということになります。
今回の調査報告書だけでは不十分で、文科省文書の有無や特定の記載内容についての確認だけでなく、獣医学部新設に関する協議経過について、内閣府側からの記録なり具体的な証言に基づき検証されるべきです。
2 正確性を欠くという指摘について
報告書は、「藤原内閣府審議官との打ち合わせ概要(獣医学部新設)(文書⑨)」、「今後のスケジュール(イメージ)(文書⑩)」について、「内閣府側の実際の出席者が記載と食い違っているなど正確性に係る疑問が指摘された」「事実関係に正確性を欠くのではないかという指摘があった」と言及しています。
しかし、例えば内閣府側の実際の出席者が食い違っている一方で、同じ文書⑨に関して、「具体的な日時は不明であるが、このような会合に出席していた時期があった」ともしています。日時が不明なのに出席者が食い違うなどどのように確認したのかが理解できません。また、文書⑩はスケジュールについて正確性を欠くのではないかとの指摘があるとしていますが、何がどのように正確性に欠いているのかなどの肝心な根拠が示されていません。
内閣府に仮に記録が残っていないとすると、ヒアリング対象者の「記憶」によって「印象」として正確性に欠いていると主張しているにすぎません。文科省の記録に対して正確性に欠くとするならば、その根拠を示すのは内閣府の責任です。それをせずに「正確性に欠く」とすることは、まさに「印象操作」で、記録を示した文科省の信頼性をおとしめることで、自らの正当性を主張する以上のものにはなり得ません。
内閣府は最低限の自らの責任において根拠やなぜ正確性を欠くとしたのかを明らかにすべきです。
3 関係者間では電話で頻繁にやりとしていたことと記録がないことは別問題
報告書のうち、「藤原内閣府審議官との打ち合わせ概要(獣医学部新設)(文書⑨)」では、打ち合わせについて内閣府側で作成した記録はないこと(しかし、日時不明でも出席者が異なることは指摘している)、「関係省庁や関係自治体等との打ち合わせが極めて多く多忙であること、関係者間ではメールでなく電話で頻繁にやり取りしていること等」が、記録が作成されていない要因であるのではないかとの受け止めがあったとされています。
報告書全体に言えることですが、もはや何がファクトであるのかを認識するのが難しい内容で、記録がないことの説明は「受け止め」という認識が示されているにすぎません。そして、記録がない前提として、「打ち合わせが極めて多く多忙」「電話で頻繁にやり取り」とありますので、多くの打ち合わせや電話でのやり取りを記録に残さずに、どこに対して何を依頼し、あるいは何を求め、指示し、質問を受け回答したのかを、どのように共有していて、引継ぎなどを行っていたのかなど、想像しがたいことが述べられています。すべてを口伝えで共有、引継ぎを行っていたとすれば、関係省庁に対して一貫した協議、要請がなされていたのかすら不明です。むしろ何等か備忘的にでも経緯が記録されている、あるいは関係機関とのやり取りの経緯が残されていると考えるの自然であり、当時の状況について個人メモであっても経緯の記録がないかを確認すべきです。
4 手書き修正案の経緯は時系列と場面を明確して説明されるべき
報告書では、「【内々に共有】獣医学部のWGについて(文書⑳)」は、本件の担当ではない職員が事実関係を確認しないままメールを発信したとしています。また、修正の経緯も時系列的に誤りがあることを指摘しています。
また、その修正案である「「先端ライフサイエンス研究や」から始める修正案(文科省修正案)(⑪関連資料)」については、藤原審議官が文科省からの修正案等について山本大臣に報告し、山本大臣から「広域的に」等の語を追加するよう指示を受けて修正を施したものであり、これを打合せの場で提示したものであるとしています。
これらから、まずは「広域的に」等の語を追加したのがいつであるのかについての文書を示すべきです。10月28日の時点では「広域的に」の入った原案を関係省庁に示したとは説明しておらず、最終文面調整はどの時点で行われたのか、11月1日に山本大臣が判断したのはいつであったのかなど、どの時点でどのような加除修正されたのかなどの整理をして示し、本来であればその際の関連文書を示すべきです。
5 問題は獣医学部新設に関する経過に問題がなかったか否か
この調査では、文科省文書の内閣府内での有無、内容については官邸や総理の指示、以降の有無について専ら調査し、かつ文科省文書について根拠なくヒアリングの結果正確性を欠くなどと内閣府に非がないことを印象付ける以上の内容がありません。問題は、獣医学部新設に関する経過に問題がなかったかであり、文書の存否はその検証過程の端緒にすぎず、記載されている内容が問題であります。
内閣府による今回の調査ではこの疑問に答えたことにはならず、限られた範囲の調査もヒアリング対象者の記憶に頼ったものが中心で、調査の妥当性の根拠が見出せません。一方で、官邸や総理の指示・意向がなかったことは断定的に述べているなど、記憶が鮮明であるとも言えるところもあり、また内部で個人メモとして何等か備忘録が残されている可能性もあります。例えば、東日本大震災に関する会議の議事録未作成が問題になった際、個人の手控え等も含めてあとから議事録を作成するなどの対応をした実績が過去にあります。同様のことは、今回の問題においても可能です。
また、報告書によって、内閣府自身は、経緯を明らかにするつもりがない、あるいはその能力がないことが示されたとも言え、内閣府ができないのであれば中立・第三者的な調査を実施すべきです。 以上