2017年6月9日金曜日

国際組織犯罪防止条約と共謀罪 政府は真逆の説明をしている

 安倍政権は国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結するためには「共謀罪」法が不可欠と説明していますが、それは全くのデタラメです。
 
 東京新聞は「共謀罪と条約 政府の説明は崩れた」とする社説を掲げ、その中で国連の「立法ガイド」を執筆した刑事司法学者ニコス・パッサス氏が、「条約はテロ防止を目的としたものではない」「新たな法律などの導入を正当化するために条約を利用してはならない」「条約はプライバシーの侵害につながるような捜査手法の導入を求めていない」TOC条約組織的犯罪集団による金銭的な利益を目的とした国際犯罪が対象で、テロは対象から除外されている」、「同様にイデオロギーに由来する犯罪は除外されている」と述べていることを明らかにしています。
 
 この国連の「立法ガイド」執筆者の発言は、政府が行っている共謀罪法を成立させる必要性についての説明を真っ向から否定するものです。
 安倍政権は、この執筆者の意向を踏みにじったうえに一般に知られていないことをいいことに国民に真逆の説明をしているわけです。
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「共謀罪」と条約 政府の説明は崩れた
東京新聞 2017年6月8日
 「共謀罪」をめぐり、国連の国際組織犯罪防止条約の立法ガイド執筆者が本紙に「条約はテロ防止が目的でない」と明言した。政府の説明が根底から崩れる。数の力で法案を通してはならぬ。
 今回、日本が締結を目指しているのは国際組織犯罪防止条約(TOC条約)である。政府は締結のためには「共謀罪」法案が不可欠だとしているのに対し、野党は現行法のままでも締結が可能だとしている。この溝は埋まらない。
 また、従来、「共謀罪」と法案名を付けてきたのに、今回は「テロ等準備罪」と名称を変えている。安倍晋三首相が東京五輪・パラリンピック開催を控え、テロ対策が必要だと訴えているためだ。
 だが、この説明はTOC条約の精神とは全く相いれない。
 このTOC条約を締結するため各国が立法作業をするための国連の「立法ガイド」を執筆した刑事司法学者ニコス・パッサス氏は「条約はテロ防止を目的としたものではない」と述べている。三日にロンドン中心部で起きたテロなどを指し、「英国は長年TOC条約のメンバーだが、条約を締結するだけでは、テロの防止にはならない」とも言う。さらに「新たな法律などの導入を正当化するために条約を利用してはならない」と警鐘を鳴らしている。
 同氏はTOC条約について「組織的犯罪集団による金銭的な利益を目的とした国際犯罪が対象で、テロは対象から除外されている」と指摘している。「非民主的な国では、政府への抗議活動を犯罪とみなす場合がある。だからイデオロギーに由来する犯罪は除外された」と、起草過程からその理由を説明している。
 
 要するに政府のいう「テロ対策」という説明は、「立法ガイド」執筆者から見れば、全くその理念を理解していないに等しい。「共謀罪」という新法をつくらなくても、条約締結の条件を満たしていれば現行法でも、既存法の改正でも対応できる道はあるのだ。
 何より「条約はプライバシーの侵害につながるような捜査手法の導入を求めていない」と述べたことは重い。国連のケナタッチ特別報告者も日本の「共謀罪」について「プライバシーを制約する恐れがある」と指摘している。
 実行前の犯罪を摘発するには広く監視するしか方法がない。これはプライバシー侵害を捜査機関が引き起こし得る極めて深刻な問題だ。到底看過できない。